部活を辞めたのだから、学校には行けるようになるはず。
でも、私は今回のお話を読んで、「部活を辞めたことで楽になったはずなのに、なぜ学校まで行けなくなったのか」と考えるよりも、息子さんにとってサッカーを辞めたことが、どれほど大きな出来事だったのかを考えてみたいと思いました。
小学生から10年間続けてきたサッカー。
中学まではエースだった。
そして、高校では強豪校に入り、思うように活躍できなかった。
「レベルが違いすぎた」という言葉の中には、悔しさや挫折感だけではなく、「自分は何だったんだろう」という感覚まで含まれているのかもしれません。
さらに、部活を辞めたことで、それまで一緒にいた仲間と毎日顔を合わせることになった。
「気まずい」というのも、決して些細な理由ではないと思います。
本人にとっては、学校に行くたびに「サッカーを辞めた自分」を意識させられる場所になってしまっているのかもしれません。
だから、「部活を辞めた=苦しさがなくなった」とは限らないのだと思います。
むしろ、苦しさの原因だったものから離れたことで、一時的にほっとしたあとに、「自分にはもう何もない」という喪失感が出てくることもあるのではないでしょうか。
特に、10年間サッカーだけを続けてきた子なら、本人の中で「自分=サッカー選手」「サッカーができる自分」という部分が、とても大きかったのだと思います。
そこを失った直後に、
「じゃあ次は何をする?」
と聞かれても、すぐには出てこなくて当然です。
ですから、今すぐ「次に打ち込めるものを見つけなさい」と言わなくてもいいと思います。
まずは、「サッカーを辞めてから、何が一番つらい?」と聞いてみてもいいのかもしれません。
「部員と顔を合わせるのが気まずい?」
「サッカーを辞めたこと自体がつらい?」
「高校に入って思っていた自分と違ったことがつらい?」
「もう何もしたくない感じ?」
本人が話したくなければ、無理に聞き出さなくても構いません。
ただ、「お父さん(お母さん)は、部活を辞めたから学校に行けなくなったことを責めているわけじゃないよ。10年間やってきたものを辞めたんだから、今はしんどくても当然だと思ってる」と伝えておくのもいいと思います。
そして、スマホばかり見ていることについても、すぐに取り上げることより、「今はそこに逃げ込むことで何とか時間を過ごしているのかもしれない」と、一度捉えてみてもいいのではないでしょうか。
もちろん、昼夜逆転や食事、睡眠など生活そのものが崩れているのであれば、そこは少しずつ整えていく必要があります。
でも、「スマホをやめて何かしなさい」「次の目標を見つけなさい」と言われても、今の本人には余計に苦しくなる可能性があります。
例えば、買い物についてきてもらう。
一緒にご飯を食べる。
少し散歩する。
サッカーとは関係のない話をする。
そんな小さな活動を一緒に積み重ねながら、本人が少しずつ「サッカー以外の自分」に触れられるようにしていく。
次の目標は、親が見つけてあげるものではなく、本人が元気を取り戻していく中で、あとから見つかってくるものでもあります。
そして、学校についても、「いつ戻るの?」と急かすより、まず「今の学校の何が一番つらいのか」を整理してみてほしいと思います。
部員と顔を合わせることが一番の問題なら、担任に相談して、教室や登校時間、過ごす場所などを工夫できるかもしれません。
学校そのものが苦しくなっているのであれば、別室登校や短時間登校など、いきなり元通りに戻す以外の方法もあります。
「サッカーを辞めたんだから学校には行けるはず」と考えず、
「サッカーを辞めたことで、息子の中で何がなくなったんだろう」
というところから見てあげる。
それが分かると、今必要な支援も少し見えてくるのではないでしょうか。
10年間続けたものを手放した直後なのですから、すぐに次の何かを見つけられなくても不思議ではありません。
今は、次のものを探す時期というより、「何もない自分でも大丈夫」と思える時間なのかもしれません。
そして、その時間を過ごす中で、いつか本人が「ちょっとやってみようかな」と思えるものが出てきたときには、その小さな芽を一緒に喜んであげればいいのです。
親が今できるのは、息子さんの次の10年を決めることではなく、次の一歩を踏み出せるところまで、そばで待ってあげることなのだと思います。