娘さんが「大学に行きたい」「心理学を学びたい」と言ったこと。
私は、まずそこを大切にしてほしいと思いました。
この1年半、学校に行けなかった娘さんが、自分のこれからについて「こうしたい」と言えた。
それだけでも、とても大きな一歩だと思います。
そして、「大学に行きたい」と言われたら、親としては一気に
「卒業できるの?」
「受験勉強はどうするの?」
「今から間に合うの?」
「どんな大学なら行けるの?」
と考えてしまいますよね。
でも、いったん全部を同時に考えなくて大丈夫です。
私は、次の順番で整理していくのがいいと思います。
① まず高校を卒業できる状態にする
今、一番最初に確認したいのはここです。
単位を落としている科目について、
・何単位不足しているのか
・レポートで補える科目はどれか
・補講や追試で対応できるものはあるか
・卒業に必要な条件は何か
・卒業が難しい場合、いつまでに何をすればいいのか
を、担任や教務の先生に具体的に確認してください。
「卒業が危うい」という言葉だけでは、何をすればいいのか分かりません。
まずは、
「卒業するために、娘がこれからやるべきことを一覧にしてください」
と学校にお願いしていいと思います。
大学受験のことを考えるのは、その次で大丈夫です。
もし高校卒業が難しい場合でも、高卒認定試験など別のルートはあります。実際、高卒認定によって大学入学資格を得る道がありますし、大学入学共通テストについても、高卒認定合格を出願資格として利用できることが案内されています。
つまり、
「今の高校を卒業できなかったら、大学への道が全部なくなる」わけではありません。
ここは娘さんにも伝えてあげてほしいところです。
② 次に、「どんな入試なら娘さんに合いそうか」を考える
学校推薦型選抜や総合型選抜では、調査書などの提出が必要になる大学があります。
ただ、「不登校だから大学に行けない」という単純な話ではありません。
大学ごと、入試方式ごとに、出願条件や提出書類、評価方法が違います。
ですから、
「不登校だから推薦は全部無理」
と決めつける必要もなければ、
「一般入試なら出席は絶対関係ない」
と一括りにするのも避けたほうがいいです。
志望校が見えてきたら、必ずその大学の最新の募集要項で確認する。
これが一番確実です。
そして、今の娘さんの状態を考えると、最初から「塾に通って一般入試に向けて猛勉強」という形だけを考えなくていいと思います。
自宅学習、オンライン授業、通信教育、個別指導、家庭教師など、本人ができる方法はいろいろあります。
「人の多い場所に行けない」という現在の状態に合わせて、勉強方法を考えていいんです。
③ 「心理学を学びたい」をもう少し具体的にする
ここは、娘さんと一緒に少しずつ掘っていってほしいところです。
「心理学を勉強して、将来何をしたい?」
と聞いても、今すぐ答えられなくても大丈夫です。
例えば、
「人の心について研究したい」
「カウンセラーになりたい」
「自分と同じような子を助けたい」
「学校の先生になりたい」
「心理学そのものに興味がある」
では、進路が少しずつ変わってきます。
特に、もし娘さんが「心理職になりたい」「公認心理師になりたい」という気持ちを持っているのであれば、大学選びは少し慎重にしたほうがいいです。
公認心理師を目指す場合、大学で所定の科目を修めたうえで、大学院等で必要な科目・実習を修めるなど、定められた受験資格のルートがあります。大学で必要となる科目には、心理学概論、臨床心理学概論、心理学研究法、心理学統計法、心理学実験、心理的アセスメント、心理学的支援法などが含まれます。
そのため、
「心理学部ならどこでも、公認心理師への道につながる」わけではありません。
もし将来的に公認心理師を考えるなら、厚生労働省が公開している「公認心理師となるために必要な科目を開講する大学等」の一覧を使って大学を探すと安心です。2026年8月27日にも大学等一覧が更新されています。
ただし、娘さんが今は「心理学を学びたい」という段階なら、最初から資格まで決めなくてもいいと思います。
私はお母様に、
「娘さんの大学進学を、今の時点で完成した進路計画にしなくていい」
と伝えたいです。
今必要なのは、
「大学に行くために、今日から毎日勉強する」
ではなく、
「大学に行きたいと思った。そのために、今できることを一つずつ探す」
ことです。
例えば今週は学校に、
「卒業するために必要なことを全部教えてください」
と確認する。
来週は、
「心理学を学べる大学を3校くらい一緒に見てみよう」
でもいい。
大学のホームページを眺めて、
「この授業面白そう」
「この大学なら行ってみたい」
と話すだけでもいい。
それだけでも、娘さんの「大学に行きたい」は少しずつ具体的な目標になっていきます。
そして、勉強についても、いきなり受験勉強を始めなくていいと思います。
まずは、
「大学に行きたいなら、今どのくらい勉強できそう?」
と聞いてみる。
10分なら10分。
英語だけなら英語だけ。
心理学の本を読むことから始めてもいい。
「勉強を始めること」より先に、
「自分は大学に行けるかもしれない」
と思えることのほうが、今の娘さんには大切かもしれません。
それから、1年半まともに勉強していないことを考えると、一般選抜でいきなり受験勉強を始めるのは確かに大変だと思います。
でも、だからといって「もう無理」と決める必要もありません。
大学にはさまざまな入試方式がありますし、入試科目や難易度も大学によって大きく違います。
まずは娘さんがどんな大学に行きたいのかを知る。
その大学に行くには何が必要なのかを調べる。
そこから逆算して、今できる勉強量を考える。
この順番でいいと思います。
そして、お母様が一番心配されている、
「この気持ちを潰したくない」
というところ。
私も、今はそこを守ってあげてほしいと思います。
「大学に行きたい」と言った娘さんに、
「でも今の成績じゃ無理」
「1年半勉強してないよ」
「卒業できるかも分からないよ」
と現実を全部並べる必要はありません。
現実的な確認は親がしておけばいい。
娘さんにはまず、
「いいね。心理学、面白そうだね」
「じゃあ、一緒に調べてみようか」
「そのために今何が必要なのか、一個ずつ見ていこう」
でいいと思います。
夢を応援することと、現実を見ることは両立できます。
むしろ親が現実的な部分を引き受けるからこそ、娘さんは「大学に行きたい」という気持ちを持ったまま、一歩ずつ進めるのではないでしょうか。
今は「大学に合格できるか」を考える段階ではなく、「大学に行きたいという気持ちを、どうやって現実の進路につなげるか」を考える段階。
私は、まずここからで十分だと思います。