これはもちろん、不登校の相談として持ち込んでいいと思います。
娘さんが学校に行けなくなった背景に、「女子として扱われること」や「スカートを履くことへの強い苦痛」があるのであれば、それは学校生活に直接関わる問題だからです。
そして、まず一番大切にしてほしいのは、
「本人が今感じていることを、親がすぐに結論づけなくていい」
ということだと思います。
娘さんは、
「自分は女性として生きていくことに違和感がある」
と話してくれた。
これは、とても大きなことだったのではないでしょうか。
本人にとって、親に話すまでにも相当悩んだ可能性があります。
ですから、まずは、
「話してくれてありがとう」
「そう感じているんだね」
でいいと思います。
「本当にそうなの?」
「一時的なものじゃない?」
「男の子になりたいってこと?」
「そのうち変わるんじゃない?」
と、親が答えを急がなくても大丈夫です。
もちろん、親御さんが混乱するのも当然です。
今まで「個性」だと思っていたものに、本人から別の意味を教えてもらったわけですから。
分からなくてもいいんです。
分からないからこそ、
「お父さんもまだ分からないことがいっぱいあるから教えてほしい」
と言っていいと思います。
そして、お母さんの「気のせいじゃない?」という言葉について。
責めたいわけではありません。
親としては、「そんなに苦しまなくてもいいよ」という気持ちから出てしまうこともあると思います。
ただ、本人からすると、
「自分がずっと感じてきた違和感を否定された」
と受け取ってしまったのかもしれません。
もし今、お母さんとの間に距離ができているのであれば、
「この前は気のせいなんて言ってしまってごめんね。あなたがどう感じているのか、ちゃんと知りたいと思っている」
と、結論を求めずに謝ってみてもいいと思います。
すぐに口をきいてくれなくても、それは仕方ありません。
謝ったらすぐ仲直りできる、というものでもありませんから。
でも、「否定しないで聞く準備がある」ということは伝えておいていいと思います。
そして学校への相談について。
ここは、まず本人に聞いてみてほしいです。
「学校には相談したほうがいいと思うんだけど、どう思う?」
「相談するなら、どこまで伝えていい?」
「制服のことだけ伝えるのはどう?」
というように。
本人が「誰にも言わないで」と言っているのであれば、まずはその気持ちを尊重する。
一方で、学校に行けないほど制服が苦痛なのであれば、本人の同意を得ながら学校に相談することで、何らかの調整ができる可能性があります。
例えば、制服の選択肢、更衣の場所、呼ばれ方など、学校生活の中で本人が具体的に困っていることについて相談する方法があります。
ここでも、
「娘は○○という性自認です」
と最初から学校全体に詳しい事情を伝える必要はありません。
まず、
「現在、スカートを履くことに強い苦痛があり、それが登校にも影響しています。本人と相談しながら、制服について配慮できることはありますか」
というように、困っていることを中心に相談することもできます。
もちろん、本人がどこまで伝えることを望んでいるかは最優先です。
また、性別についての違和感があるからといって、今すぐ親が「この子は○○なんだ」と決める必要もありません。
本人が自分自身をどう捉えているのか。
どう呼ばれたいのか。
どんな服装なら楽なのか。
学校ではどう過ごしたいのか。
どこまで周囲に知ってほしいのか。
こうしたことは、一つずつ本人に聞いていけばいい。
「あなたは何者なの?」という問いではなく、
「どうしたら今より少し楽に過ごせる?」
という問いから始めると、本人も話しやすいかもしれません。
言ってはいけない言葉についても、「絶対にこの言葉を言ったらダメ」というより、本人の感じていることを否定したり、急いで結論を出そうとしたりする言葉は避けたほうがいいと思います。
例えば、
「気のせい」
「そんなの一時的」
「普通は女の子なんだから」
「男の子みたいな格好をするからそう思うんじゃない?」
「高校生だからそんなことを考えるんだよ」
「そのうち戻るよ」
などです。
反対に、
「そう感じているんだね」
「話してくれてありがとう」
「分からないことは一緒に調べよう」
「どうしたら学校が少し楽になる?」
「どこまでなら人に話してもいい?」
という言葉なら、本人の気持ちを尊重しながら具体的な支援につなげやすいと思います。
そして、性別についての違和感を抱えている子が必ず不登校になるわけではありません。
ただ、本人にとって大きな苦痛になっていて、それが学校生活への参加を難しくしているのであれば、そこへの支援は必要です。
必要であれば、学校の相談窓口だけでなく、自治体の相談窓口や、ジェンダーに関する相談に対応している医療・支援機関などに、まずは保護者だけで相談してみてもいいと思います。
「本人が安心して生活できる方法を一緒に考えるため」
の相談です。
そして、今のお父さんに一番伝えたいのは、
「知識がないから、何と言えばいいか分からない」
それでいいと思います。
親だから正しい答えを出さなければいけないわけではありません。
むしろ、
「お父さんはまだ分からない。でも、苦しいと言っていることは理解できる。一緒に考えたい」
と言ってくれるほうが、娘さんには伝わるのではないでしょうか。
今すぐ性別についての答えを出さなくてもいい。
今すぐ学校に戻らなくてもいい。
まずは、娘さんが「この話をしても否定されない」と思える家庭を作る。
そのうえで、
「学校に行くには何が必要なのか」
「学校以外でどう過ごすのか」
「本人は周囲にどこまで伝えてほしいのか」
を一つずつ考えていけばいいと思います。
不登校の原因を一つに決める必要もありません。
「学校に行けない子」ではなく、
「学校に行くことが苦しくなるほど、今の環境との間にズレを感じている子」
として見てあげる。
そして、そのズレを少しずつ小さくしていく。
それが、今できる最初の一歩なのではないでしょうか。
私も子どもがいます。高校生、中学生といますが、校内に性別とは違う制服を着ている生徒さんを見かけます。うちの子はどう思っているのかなと思い聞いてみたことがあります。私自身がこのような仕事をしている関係もあり、うちの子たちはまったく違和感がないようで「今は多様性の時代だよ」という考え方を持っています。私自身も福祉職なのに〇〇というようなレッテルを貼られることがとても嫌で組織から抜けました。
これから先、「自分らしく生きれる世界」が広がることを切に願っています。