「頭がぐちゃぐちゃになる」という息子さんの言葉が、とても大事な手がかりなのではないかと思いました。
家では落ち着いて過ごせて、静かで匂いや音をコントロールできる環境なら勉強もできる。
だとしたら、「学校に行く気がない」のではなく、「学校という環境の中で受ける刺激が多すぎて、そこで過ごすこと自体が難しくなっている」という可能性を考えてみてもいいのではないでしょうか。
そして、診断名がまだついていないからといって、困りごとへの配慮を求めてはいけないわけではありません。
合理的配慮は、診断名だけを基準に一律に決めるものではなく、その子が学校生活や学習の中でどのような困難を抱えていて、どのような調整が必要なのかを個別に考えていくものです。
ですから、学校には「自閉症スペクトラムの診断があるので配慮してください」と伝えるよりも、
「教室のざわざわした音があると頭がぐちゃぐちゃになってしまう」
「体育館の反響音が強いと活動に参加することが難しい」
「給食の匂いや食感が強い負担になっている」
「イヤーマフを使うことで、教室にいられる時間が増える」
というように、「困っていること」と「どんな配慮があると参加できるのか」を具体的に伝えるほうが、学校とも話し合いやすいと思います。
また、「他の子との公平性」という言葉についても、少し考え方を変えていいと思います。
全員に同じものを与えることが、必ずしも公平とは限りません。
例えば、眼鏡をかけている子に「他の子は眼鏡を使っていないから外しなさい」とは言いませんよね。
必要な子が必要な道具を使うことで、ようやく同じように授業に参加できるのであれば、それは「特別扱い」というより、参加するために必要な調整と考えることができます。
イヤーマフも、給食の量を減らすことも、「楽をさせるため」ではなく、「学校で過ごすための環境調整」と捉えていいと思います。
そして、今後学校と相談するときには、「何をしてほしいか」だけではなく、「その配慮によって何ができるようになるか」まで伝えてみてください。
例えば、
「イヤーマフを使えば教室で過ごせる」
「体育館では音の少ない場所に移動できれば参加できる」
「給食は量を減らせば食べられる」
「水泳は見学や別の活動なら参加できる」
という形です。
「苦手なものを全部なくしてください」ではなく、「この調整があれば、この活動には参加できます」と伝えるほうが、学校側も具体的に検討しやすくなります。
そして、「環境が整えば戻れる子だと思う」というお母さんの見立てについて。
私は、十分可能性のある見立てだと思います。
ただ、「環境を整えれば必ずすぐ戻れる」とまでは決めなくてもいいと思います。
すでに学校に行けない状態が続いているので、本人の中に「学校は怖い・疲れる場所」という感覚が残っている可能性もあります。
だから、環境を整えたから明日から毎日登校、ではなく、
「まず学校の敷地に行けた」
「静かな場所で過ごせた」
「好きな授業だけ参加できた」
「先生と少し話せた」
というように、安心できる範囲から少しずつ戻していくことも考えていいと思います。
そして、今後もし学校との話し合いが「診断がついてから」「専門医の意見書が出てから」というところで止まってしまうのであれば、教育委員会や特別支援教育に関する相談窓口などに相談して、学校と一緒に支援方法を検討してもらう方法もあります。
何より、「学校に合わせるために本人が頑張る」のではなく、「本人が学べるように学校の環境を調整する」という視点を持ってほしいと思います。
息子さんが家で勉強できていることは、とても大きな情報です。
「学ぶ力がない」のではなく、「今の環境では力を発揮できない」。
もしそうなのであれば、まずは「どうすればこの子が力を発揮できる環境になるのか」を一緒に探していく。
それが、学校に戻るための最初の一歩になるのではないでしょうか。