「勉強はやらなきゃとは思ってる」と本人が言っている。
私は、そこをとても大事にしてあげてほしいと思いました。
「やらなきゃいけない」と思っているのに動けないということは、勉強する意思がまったくないわけではありません。
むしろ、遅れてしまったことや、分からないことが増えてしまったことへの不安が大きくなって、「どこから手をつければいいのか分からない」という状態になっている可能性もあります。
ですから、学習の遅れについては、「今すぐ全部取り戻す」必要はないと思います。
不登校になっている間に学習が止まること自体は珍しいことではありません。
もちろん、早めに少しずつ学習に触れられれば、それに越したことはありません。
でも、「今すぐ勉強を始めないと取り返しがつかない」と焦ってしまうと、本人にとって勉強がますます苦しいものになってしまうことがあります。
今は「遅れを取り戻すこと」より、「また勉強してみてもいいと思える状態」を作ることを優先していいのではないでしょうか。
そして、学年をさかのぼることについても、「小5からやり直そう」と言わなくても大丈夫です。
実際、学習は積み上げなので、分数や割合など小学校の内容につまずきがあると、中学校の数学で苦しくなることがあります。
でも、それは「小5のドリルを最初から全部やり直さなければいけない」という意味ではありません。
例えば、
「中1の問題をちょっと見てみない?」
「分からないところがあったら、そこだけ前のところに戻ってみよう」
というやり方があります。
本人には「小5に戻る」のではなく、
「今分からないところを見つけて、そこだけ補修する」
という感覚で伝えてみてください。
これはプライドを守るうえでも、かなり違うと思います。
例えば分数でつまずいていたとしても、
「小5だから分からないんだね」
ではなく、
「ここが分かれば、今やっているところも分かるようになりそうだね。一回ここだけ確認してみよう」
という言い方なら、本人も受け入れやすいかもしれません。
また、今までオンライン教材を3つ試して、どれも1週間続かなかったということも、「本人は勉強が続かない子」と決めつける材料にはしなくていいと思います。
不登校の状態にある子にとって、毎日決まった時間に教材を開いて勉強すること自体が、かなり高いハードルになっていることがあります。
最初から「毎日30分」などと決めなくてもいいです。
例えば、
「今日は数学1問だけ」
「漢字を3個だけ」
「英単語を5個だけ」
でもいいんです。
そして、できたら終わり。
「もっとやりなさい」ではなく、「今日はここまでできたね」で終わらせる。
勉強を再開する最初の時期は、量よりも「自分で始められた」「分からなくても怒られなかった」「やったら終われた」という経験のほうが大切なことがあります。
それから、今すぐ勉強できなくても、親ができることはあります。
例えば、本人の目につくところに教材を置いておく。
「いつでも使っていいよ」とだけ伝える。
分からない問題があったら一緒に調べる。
必要なら学校に、現在どの程度の学習内容なら取り組めそうなのか相談してみる。
「勉強しなさい」と追い続けるのではなく、「やりたくなったときに始められる環境」を作っておくことです。
そして、学習の遅れは、本人が動き出してからでも十分取り戻していけます。
もちろん、学年が上がれば上がるほど取り組む量は増えていきます。
でも、学習は学校に毎日通っている子だけが積み上げられるものではありません。
中学生の今からでも、高校生になってからでも、必要なところに戻って学び直すことはできます。
むしろ、本人の心が疲れている時期に「遅れを取り戻さなければ」と詰め込んで、勉強そのものが嫌いになってしまうほうが避けたいことだと思います。
そして、私は息子さんには「勉強しなさい」より、
「勉強しなきゃって思ってるんだね。じゃあ、いつかやってみようと思ったときに困らないように、一緒にやり方を考えておこうか」
くらいの声かけでもいいのではないかと思います。
本人が動き出したときに、どこから始めればいいのか分からない。
それが一番つらいことだと思うからです。
「小5まで戻る」のではなく、「今の自分が分かるところから始めて、必要なところだけ戻る」。
そして、今は「遅れを取り戻す」ことより、「学ぶことをもう一度、自分の手に取り戻す」こと。
その順番でいいのではないでしょうか。