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不登校ミーツ

不登校は甘やかし? 休ませると我慢する力がなくなるのか、公認心理師に聞きました

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 物事に立ち向かう力は、毎日規則正しく同じことをするだけで育つものではない。いろんな対処の「レパートリー」が増えていく、というイメージを持ってほしい(公認心理師・髙橋紀子先生)。
  • 髙橋先生はカウンセリングで「お母さんが子どものとき、行きたくなかったことはありますか?」と聞く。親自身も、我慢だけでなくサポートやSOSでしのいできたことが多い。
  • 一度も行きたくないと思ったことがない親御さんにとっては、今が新しい体験。専門家に相談しようと思えたこと自体が、わからないことに出会ったときの「頑張る力」。
  • 大人も仕事に行きたくない日には休暇という「カード」を切る。「行きたくない」は、そんなに致命的なことではない。

「休ませてばかりいたら、甘やかしになるんじゃないか」

家でのんびり過ごすことに慣れてしまったら、嫌なことを我慢する力がなくなって、社会でやっていけなくなるのでは──学校を休ませると決めたあとも、そんな不安が消えない親御さんは少なくありません。

休ませることは、本当に「我慢する力」を奪うのでしょうか。

今回は、公認心理師の髙橋紀子先生に、「不登校は甘やかしでは?」という不安との向き合い方を伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の髙橋紀子先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:髙橋紀子先生

学校を休ませると、我慢する力がなくなるって本当?

髙橋先生の答えは、「物事に立ち向かう力は、毎日規則正しく同じことをするだけで育つものではない」というものでした。

かほ
かほ:

これもよくあるご相談なのですが、とりあえず休ませたほうがよさそう、となったときに、休んでのんびり過ごすことに慣れてしまうと、嫌なことも我慢する力が失われて、社会に適応する力がなくなっていくんじゃないか、と不安をおっしゃる親御さんもいます。どう思われますか?

髙橋先生
髙橋先生:

物事に立ち向かっていく力って、必ずしも、毎日規則正しく同じことをするだけではないんです。私たちは実際、ほかにもいろんなことをしている。

ですから、そういうレパートリーが増える、というイメージを持っていただけるといいなと思っています。

かほ
かほ:

確かに、実際の生活は、毎日きれいには進まないですものね。社会生活の「頑張る力」も、いろんな対処の仕方の上に成り立っている。

この考え方につながるのが、髙橋先生がカウンセリングで親御さんに投げかけている、ある質問です。

親自身は、子どものころ「行きたくない」とき、どうしていた?

髙橋先生
髙橋先生:

カウンセリングでこの話になったとき、私が親御さんにお聞きするのは、「お母さんが子どものとき、行きたくなかったことはありますか?」ということです。

自分も行きたくないことがあって、そういうときはこういう支えでしのいできた、という話が出てくることがあります。

そのときは、「ただやみくもに我慢するだけじゃなくて、いろんなサポートや、SOSの求め方を、お母さん自身がしてこられたんですね」とお伝えします。そうすると、「うちの子の場合はどうだろう」と考えるきっかけになったりするんです。

「我慢する力」と聞くと、一人で耐え抜く力をイメージしがちです。でも、親自身の経験を振り返ってみると、誰かに支えてもらったり、休んだり、助けを求めたりしながら乗り越えてきたことも多いのではないでしょうか。

話す髙橋紀子先生
「行きたくなかったことはありますか?」と親御さんに聞く髙橋先生

一度も「行きたくない」と思ったことがない親は、どう考えればいい?

一方で、「学校に行きたくないと思ったことは一度もない」という親御さんもいます。子どもの反応がまったく理解できない、というときです。

髙橋先生
髙橋先生:

そういうときは、まず「すっごく新しい体験をされているんですね」とお伝えします。

心理師と会っている、という段階で、今まで体験したことのないことについて、専門家に相談してみようと思えている。それは素晴らしいことなんですね。

そういう思いがけない出来事に出会ったときに、今、親御さんがとっている行動そのものが、一つの「頑張る力」というか、わけのわからないことに出会ったときの対処行動の一つですよね、とお伝えしています。

「学校に行きたくない」は、そんなに致命的なこと?

「行きたくない」と言われると、「このまま引きこもりになってしまうのでは」と不安になる親御さんも多いものです。髙橋先生は、その不安を受け止めたうえで、大人の働き方にたとえて話してくれました。

髙橋先生
髙橋先生:

私も保護者の方とお会いする中で、「学校に行きたくない」と言われると、このまま引きこもりになってしまうんじゃないか、すごく悪化するんじゃないかと不安になるんだ、と教えられました。確かに、そういう不安もあると思います。

一般化はできないんですけど、社会人でも、仕事に行きたくないことってありますよね。大人の場合は、そういうときに休暇を使ったり、切れるカードが複数ある。実は社会人も、毎日絶対に行かないといけないわけではないんです。

そう考えると、「行きたくない」ということは、そんなに致命的なことでもないんじゃないか、という感覚に、私はなっています。

かほ
かほ:

「行きたくない」と言われて、学校に適応できない子に育ててしまった、と自分を責めてしまう親御さんも多いと思います。

そうした親御さんに向けて、髙橋先生は「『行きたくない』と言えたのは、それが言える親子関係だったということ」とも話しています(詳しくは「学校に行きたくない」と言われたら休ませる?で伺っています)。

話す公認心理師の髙橋紀子先生
大人も、休暇という「カード」を切りながら働いている

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ゴールド

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甘えや仮病かも、と思ったら、背中を押してはいけない?

休ませることを勧める一方で、髙橋先生は「背中を押すのが有効なこともたくさんある」とも話します。甘えでは、と感じたときも、押し方を工夫すればいいのです。

かほ
かほ:

仮病を疑ってしまったり、甘えているんじゃないかと思ってしまったりして、背中を押したほうがいいのでは、と悩む親御さんもいます。背中を押したほうがいいケースは、そもそもあるのでしょうか。

髙橋先生
髙橋先生:

もちろんです。背中を押してもらってきっかけを作る、大人の側がきっかけを作ることが有効なことも、たくさんあります。

ただし、髙橋先生が挙げたのは「学校には行かなきゃいけないんだよ」と押す方法ではありませんでした。給食や仲の良い友達、部活など、本人が学校の中で楽しみにしていることをきっかけにする押し方です。

「休ませる」か「行かせる」かの二択で考えると、休ませることは甘やかしに見えてしまいます。でも実際には、休ませながら様子を見て、本人が前向きになれるところがあれば、そこだけピンポイントで背中を押す、という関わり方もあるのです。

不登校の子の親御さんへ、髙橋先生からのメッセージ

最後に、「甘やかしでは」「この先どうなるのか」と不安を抱える親御さんへ、髙橋先生のメッセージです。

髙橋先生
髙橋先生:

まず、不登校は失敗じゃない、つまずきじゃない、ということがあります。

困ったことがあったときに、学校に行かないという対処行動を取れたのは、その子の力だと思います。大きくはお祝いできないとしても、「自分の意思を行動にすることができる子なんだな」と、私としては喜んでほしい、というのが勝手な思いとしてあります。

少しずれているかもしれませんけど、一度も学校に行きたくないと思わなかった人のほうが、私は心配です。

嫌だな、大変だな、きついな、というのをキャッチして、じゃあどうしていったらいいんだろうと考える。それは、とっても人間らしいことなんじゃないかなという気がします。

笑顔で話す髙橋紀子先生
「行きたくない」と感じるのは、人間らしいこと

髙橋先生の話を聞いていると、休ませることを「甘やかし」と決めつけなくていいのだと感じます。困ったときに「休む」という手段を選べたこと、それを親に伝えられたことも、お子さんがこれから生きていくための大事な力のひとつです。

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