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不登校の子の暴言・暴力への対応は?原因と対処を公認心理師が解説

公開

お話を伺った専門家:はやし ゆか先生(公認心理師)

取材・構成:不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 不登校の理由を自分で説明できる子は多くない。「なぜ行けないの?」と何度も聞かれ、言葉にならない思いがたまって、甘えられる家族に暴言・暴力として向きやすい(公認心理師・はやし ゆか先生)。
  • 暴言を言われたら、言葉にすぐ反応せず「今はそういう気持ちなんだね」と一度受け止めて流す。「うるさい」「死ね」は、その子が外で投げかけられてきた言葉かもしれない、という視点で見る。
  • 暴力のときは、まず距離をとって安全を確保。止まらなければ「痛いからやめて」と伝える。落ち着いた後は「敵ではなく味方」として、暴力以外の方法を一緒に考えたいと言葉で伝える。
  • 大きな声で「やめなさい」と叱るのは逆効果になりやすい。命に関わるときは警察や児童相談所(189)へ。身近な第三者が入るだけで落ち着くこともある。
  • 親が相談先とつながって落ち着いて対応できるようになると、子どもが変わることもある。親自身が離れる時間をつくり、自分のケアも大切に。

「うるさい」「死ね」

学校を休むようになってから、子どもが家で荒れるようになった。きつい言葉を投げつけられたり、ときには叩かれたり、物に当たったり。

わが子にそんなことをされると、親は傷つくし、怖いし、どうしていいかわからなくなります。

今回は、児童相談所などで約20年、子どもと家族の相談に携わってきた公認心理師のはやし ゆか先生に、不登校の子の暴言・暴力に、親はどう対応すればいいのかを伺いました。

Zoomで対談する不登校ミーツのかほと公認心理師のはやし ゆか先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:はやし ゆか先生

不登校の子が、家で暴言や暴力をふるうのはなぜ?

はやし先生は、理由のひとつに「言葉にできない思いがたまっていること」を挙げます。

かほ
かほ:

不登校の子が家で荒れて、暴言を言ったり、手が出てしまったりするというご相談は、実は少なくないと聞きます。そもそも、どうして家で荒れてしまうのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

暴言や暴力にはいろいろな理由があると思いますが、そもそも、不登校の理由を自分で理解して説明できる子は、あまりいないと思います。

それでも大人は理由を知りたがるので、親御さんや学校の先生が「なぜ学校に行けないの?」と尋ねてしまう。大人でもそうですが、自分の頭で整理できないことを何度も聞かれると、イライラがたまっていきますよね。そんなときに、なかなか言葉にできない思いが、暴言や暴力につながっていくのかなと思います。

特に暴言や暴力は、甘えられる相手に向くことが多いので、そういう意味でも家族に向きやすいのだと感じます。

かほ
かほ:

「どうして学校に行きたくないの?」と理由を尋ねることが、引き金になることも多いんですね。

はやし先生
はやし先生:

そういうパターンも多いと思います。もちろん生活の中ではいろいろな出来事があるので、そのときどきで原因は変わります。

ただ根っこには、子どもたちもいつも「自分はなんで学校に行けないんだろう」「行きたいのに行けない」という不満をためている状態だということを、大人の側も理解しておくことが必要かなと思います。

暴言を言われたとき、その場ではどう対応すればいい?

はやし先生の答えは、「言葉にすぐ反応せず、一度受け止めて流す」です。

かほ
かほ:

子どもから「うるさい」など、ひどい言葉を投げつけられたとき、親御さんはその場でどう対応したらいいでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

親御さんは、その場でとても傷つかれると思いますし、「なんでそんなこと言うの」と反応したくなると思います。

ただ、その言葉にすぐ反応するのではなく、「今はそういう気持ちなんだね」と一旦受け止めて、その言葉を流すといいと思います。言葉をそのまま受け取って反応してしまうと、どんどん暴言がエスカレートすることも考えられます。

そのうえで、なぜそういう言葉を言ってしまったのか、背景を考えるようにできるといいですね。

受け止めるといっても、冷たく聞こえては逆効果です。はやし先生は、言葉の奥にある気持ちに目を向けてほしいと話します。

はやし先生
はやし先生:

子どもが「冷たいな」と感じる形ではなく、「今はそういう気持ちなんだね、それはわかったよ」と一度受け止めてあげるのが大事かなと思います。

そこに、愛情や「ちゃんとあなたのことは見ているからね」というメッセージが伝われば、言葉のトーンにも表れると思います。子どもが暴言を吐いた場合でも落ち着いて、「そうかそうか、今はそういう気持ちなんだね。じゃあちょっと離れるね」などと声をかけるといいと思います。

話すはやし ゆか先生
「今はそういう気持ちなんだね」と一度受け止める

「死ね」「うるさい」と言われたら、どう受け止めればいい?

背景を考えるといっても、親にとっては難しいところです。はやし先生は、ひとつの視点を教えてくれました。

はやし先生
はやし先生:

「うるさい」とか「死ね」という言葉は、もしかしたら、お子さんがこれまで学校などほかの場所で、投げかけられてきた言葉かもしれません。

その言葉を聞いて、すごくがっかりしたり、びっくりしたりすることもあると思います。でも、親御さん自身に向けた言葉というより、「もしかしたら過去にこういう言葉を投げかけられたのかもしれない」という視点で見ると、子どもの立場に立って、少し優しく考えられるひとつの方法になるかなと思います。

かほ
かほ:

「この子がかけられてきた言葉かもしれない」という発想は、新しい視点ですね。

暴言がおさまった後、子どもにはどう声をかける?

その場では受け止めて流す。では、落ち着いた後はどうすればいいのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

落ち着いたときに、「さっき〇〇って言ってたけど、そう言ってしまう原因は何かあるのかな」「これまでにそうやって言われたことがあった?」と、子どもの目線に立って気持ちを聞いてみるのが大事かなと思います。

子どもの気持ちがわかると、親御さんも「憎くて言われた」というより、子どもが自分の心のイライラを、八つ当たりのように、当たるところがなくて親に向けてしまったのかもしれない、と思えるかもしれません。言葉の背景がわかると、親御さん自身も落ち着いて対応できますし、その言葉を重く受け止めて傷つくことも、少なくなるのかなと思います。

ただ、子どもによっては、気持ちをいちいち深掘りされるのを嫌がることもあります。はやし先生は「聞くタイミングと場面がとても重要」と話します。

はやし先生
はやし先生:

直後に聞いたり、まだイライラしている途中で無理に聞こうとしたりすると、よけいに心を閉ざしてしまうことがあると思います。

親子で一緒においしいものを食べに行ったり、家の中で一緒に料理を作ったりして、雰囲気がいいなと感じたときに、「そういえばこの前こういうこと言ってたけど、何か理由あった?」と、それとなく聞いてみるのもひとつかなと思います。

タイミングはやし先生の話のポイント
暴言を言われたその場すぐ反応しない。「今はそういう気持ちなんだね」と受け止めて流す。「ちょっと離れるね」も可
直後・まだイライラしているとき無理に理由を聞かない(心を閉ざしやすい)
しっかりクールダウンした後一緒に食事や料理をするなど、雰囲気のいいときに、それとなく聞く

暴力をふるわれたら、どうすればいい?

叩かれる、蹴られるなど、手が出てしまったとき。はやし先生がまず挙げたのは「距離をとって、安全を確保すること」です。

かほ
かほ:

子どもが親御さんを叩いたり蹴ったり、手を出してしまったとき、その場でどう対応すればいいでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

暴言のときと同じように、エスカレートしないように距離をとることは必要かなと思います。けがをするような場合は、もちろんその場から離れることも必要です。

暴力が止まらない場合には、「それは今すごく痛いから、やめて」と伝えることも必要かなと思います。

暴力がおさまった後は、なかったことにするのか、きちんと向き合って話すのか、迷う親御さんも多いはずです。

はやし先生
はやし先生:

それまでの親子の関係にもよると思いますが、少しでも話ができる関係なら、話をしたほうがいいと思っています。

「何かイライラすることがあったのかな」「今度同じような気持ちになったときに、暴力以外でそのイライラを収める方法はないか、一緒に考えたいと思っているよ」と。子どもの敵というより、子どものイライラを上手に対処できるように協力したい「味方」であることを伝えるのが重要かなと思います。

難しいとは思いますが、「暴力をしたから怖い」ではなく、「なぜ暴力に出てしまうのかを理解したいと思っている」ということを、きちんと言葉で伝えてあげることが必要かなと思います。

親に暴力が向くとき、とくに母親にだけ向くケースについては、子どもの暴力が母親にだけ向くのはなぜ?で詳しく伺っています。

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ゴールド

はやし ゆか先生

公認心理師

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子どもが荒れているとき、親がやりがちなNG対応は?

よかれと思ってやっていることが、逆効果になっている場合もあります。

はやし先生
はやし先生:

興奮していたり、なかなか落ち着かなかったりするときに、火に油を注ぐではないですが、同じような声のトーンで反応してしまうのは避けたほうがいいのかなと思います。

たとえば、「やめなさい!」と大きな声で叱ると、よけいにエスカレートすることが考えられます。基本的な対応としては、どんなことが起きても落ち着いたペースで、「それは痛いよ」「それはやめようね」と伝えるのがひとつかなと思います。

物に当たる、壁に穴を開けるといった場合の対応や、片付けをどうするかは、子どもが物に当たる・壁に穴を開けたら?で伺っています。

警察や外部に相談したほうがいいのは、どんなとき?

暴力がエスカレートして、家族が身の危険を感じることもあります。はやし先生は、命に関わるときは、ためらわず外部の助けをと話します。

はやし先生
はやし先生:

離れたほうがよければ、その場から離れる。一時的に親御さん自身も家から離れて、子どもがクールダウンするのを待つのもひとつかもしれません。

ただ、状況によっては、たとえば刃物が出るような、命に関わる場合には、警察や外部機関の助けを求めるのもひとつの方法だと思います。

警察や公的機関に連絡するのは、ハードルが高いと感じる方も多いはずです。はやし先生は、もっと身近な「第三者」の力も挙げてくれました。

はやし先生
はやし先生:

たとえば親戚の中で、おじいちゃんおばあちゃんが助けてくれそうであれば、そういう方に頼るのもひとつだと思いますし、遠方で誰もいない場合は、家庭の状況を理解してくれている友人に来てもらうのもひとつかなと思います。

第三者が入ることで、すごく興奮している子どもが落ち着くことは、よくあることなんです。家族以外に頼れる人がいるなら、まずその方に相談するのもひとつです。

ただ、そういう方がいつもいるとは限らないので、どうしても命に関わる場合は、警察や、児童相談所の専門ダイヤル「189」に相談するのもひとつかなと思います。

状況はやし先生が挙げた対応
危ないと感じるその場や家から一時的に離れ、子どものクールダウンを待つ
家族だけでは収まらない事情を知る親戚・友人など、身近な第三者に来てもらう
刃物が出るなど、命に関わる警察、児童相談所の専門ダイヤル(189)など外部に助けを求める

子どもではなく、親だけが相談しても変わる?

子どもの暴言や暴力に悩むと、「子どもをカウンセリングに連れて行かなければ」と考えがちです。はやし先生は、親だけが相談することにも大きな意味があると話します。

かほ
かほ:

子どもが暴力や暴言を吐いてしまうと、子どもをカウンセリングに連れて行こう、という発想になりがちです。親御さんだけが相談して対応方法を考えることでも、解決につながることはあるのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

はい。親御さんの対応で、子どもがすごく変わることもあります。

親御さんの精神状態は子どもに影響します。たとえば親御さんの恐怖や不安感が強いと、それが子どもにも伝わってしまう。ですから、親御さん自身がカウンセリングや相談機関とつながって、あらかじめ「こういうときはこう対応しよう」と考えておくことで、落ち着いて対応でき、子どもも落ち着いて問題が収まっていく、ということもあるのかなと思います。

家族だけではなかなか関係が変わらない、という面もある一方で、はやし先生は「親の対応が変わると、子どもはすぐに気づく」とも話します。

はやし先生
はやし先生:

これまで怒ってやめさせようとしていた親御さんが、落ち着いて「それはやめよう」「お母さん、ちょっと今離れるね」と対応すると、子どもは今までと違う親の対応をすぐに感じ取ります。「お母さん、お父さん、今までと違う」と、ふと我に返ることもあるのかなと思います。

不登校の子の親御さんへ、はやし先生からのメッセージ

最後に、いま子どもの暴言や暴力に悩み、どうしたらいいかわからなくなっている親御さんへ、はやし先生にメッセージをいただきました。

はやし先生
はやし先生:

暴言や暴力は、人を恐怖の支配下に置くので、親御さんの思考をストップさせてしまうほど、怖いと感じられることも多いと思います。

ずっと子どもと一緒にいて、「なんとかしなくちゃ」と思っている責任感の強い親御さんも、たくさんいらっしゃると思います。でも、ご自分の時間を少しつくって、ずっと家にいるのではなく、少し別々の時間もとって、ご自分のケアも大切にしていただきたいなと思います。

笑顔で話すはやし ゆか先生
「ご自分のケアも大切にしていただきたい」

子どもの暴言や暴力は、親ひとりで抱えるにはあまりに重いものです。言葉や行動の奥には、本人にも説明できない「行きたいのに行けない」気持ちがあるのかもしれません。まずは距離をとって、自分と家族の安全を守ること。そして、親自身が相談できる場所とつながって、少しずつ落ち着いた対応を増やしていきましょう。

よくある質問

Q. 不登校の子に「死ね」「うるさい」と言われたら、どう返せばいい?
A. はやし先生は、言葉にすぐ反応せず「今はそういう気持ちなんだね」と一度受け止めて流すことを勧めています。言葉をそのまま受け取って言い返すと、暴言がエスカレートしやすいそうです。落ち着いて「じゃあちょっと離れるね」と声をかけ、その場を離れるのもひとつの方法です。
Q. 子どもの暴力で、警察に相談したほうがいいのはどんなとき?
A. はやし先生は、刃物が出るなど命に関わるときは、警察や児童相談所の専門ダイヤル(189)など外部の助けを求めてよいと話しています。そこまでではない場合は、親がその場や家から一時的に離れて子どものクールダウンを待つことや、事情を知る親戚・友人など身近な第三者に来てもらうことも挙げています。
Q. 子どもが暴れているとき、やってはいけない対応は?
A. 子どもと同じような大きな声やトーンで反応することです。はやし先生によると、「やめなさい」と大声で叱ると、かえってエスカレートしやすいそうです。どんなことが起きても落ち着いたペースで、「それは痛いよ」「それはやめようね」と伝えるのが基本です。

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