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不登校ミーツ

学校では良い子なのに家で荒れるのはなぜ? 発達特性のある子の過剰適応と家での対応を公認心理師が解説

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 学校では良い子なのに家で荒れるのは、学校で100%を超えて頑張り続けた反動で、家に帰ると一気に崩れてしまう状態(過剰適応)であることが多い。発達特性のある子に限らず起きるが、特性のある子は学校で求められる負荷が大きくなりやすい(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 「学校で問題なく過ごしている」ことと「本人が余裕で過ごせている」ことは別の問題。失敗しないように、遅いと言われないようにと、本人も気づかないうちに気を使い続けていることがある。
  • 家で荒れるのは、家が安心できる場所だからこそ出ているケースが多い。ただし、親がサンドバッグになって全部受け止めるという意味ではない。
  • 荒れているときは「ムシャクシャしてるんだね」と気持ちを言葉にしつつ、「物を投げるのは危ないからやめて」という線引きははっきり伝える。
  • 学校に伝えるときは「本人がつらいみたいです」だけでなく、家で何がどれくらい起きているかを記録して具体的に伝える。

「学校では、しっかりした良い子ですよ」

担任の先生からはそう言われるのに、家に帰ってくると物に当たる、大声を出す、何時間も泣き続ける。あるいは、帰ってくるなり床に倒れ込んで、話しかけても反応しない。

「学校ではちゃんとできているのに、どうして家ではこうなるの?」と、戸惑っている親御さんは少なくありません。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんに起きやすい「学校では良い子なのに、家で荒れる・ぐったりする」状態(過剰適応)について、何が起きているのか、家でどう対応すればいいのかを伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

学校では良い子なのに、家で荒れるのはなぜ?

山岸先生によると、これは学校で非常に頑張っている子によく起きる状態です。学校で100%を超える力を出し続けた反動で、家に帰ると一気にエネルギーが落ちてしまう。いわゆる「過剰適応」と呼ばれる状態です。

かほ
かほ:

学校ではすごくいい子なのに、家ではすごく荒れてしまう。学校で頑張っている分、家ではぐったりしている。そういうケースもあると思うんですが、これは一体何が起きているんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

これは発達特性のあるお子さんだけでなく、どんな子にも当てはまることだと思いますが、学校で非常に頑張っている子によく起きる状態だと思います。

学校という場所は、朝早く起きるところから始まって、集団の中で先生の話を聞く、友達の話を聞きながら自分の意見を言う、ルールを守る、苦手なことも頑張る……。お子さんにとって「きついな」と感じることを、とてもたくさん求められる場です。

もちろん、それによって成長する場面もたくさんあるので、学校のやり方を否定するわけではありません。でも、そこで本人が100%を超えて「完璧に頑張らなければ」と、火事場の馬鹿力で常に走っている状態だと、家に帰ってきてから、120%でずっとやってきた反動で、ぐーんと下がってしまう。そういうことなのかなと思います。

記事「理由がわからない不登校は発達障害が原因?」でも触れたとおり、発達特性のあるお子さんは、光や音の刺激や集団生活の負担で、もともと学校が家よりも疲れやすいことがよくあります。そのうえで「周りに合わせなきゃ」と頑張り続けると、家に帰るころにはエネルギーが残っていない、ということが起きやすくなります。

「学校で問題なく過ごせている」なら大丈夫なのでは?

山岸先生は、「学校で問題なく過ごしていることと、本人が余裕を持って過ごせていることは、全然違う問題」だと言います。

かほ
かほ:

「学校ではいい子で、問題なく過ごしていると言われるのに、帰宅すると荒れてしまいます。私のほうも、ちょっと心が疲れてきました」。こういう親御さんには、どんな言葉をかけますか?

山岸先生
山岸先生:

本当に、親御さんは疲れますよね。学校から帰ってきて、全てをぶつけられるというのは、本当に大変な状況だろうなと思います。

まずお伝えしたいのは、学校で問題なく過ごしているということと、それが本人にとって余裕で過ごせているかということは、全然違う問題だということです。

特に家で荒れてしまうお子さんは、学校では、本人が無自覚だったとしても、すごくすごく気を使って頑張っているケースがとても多いと感じています。

山岸先生が挙げてくれた、「学校で問題なく見える子」が実は抱えているかもしれない負荷の例です。

山岸先生
山岸先生:

本当にいろんなことで、いろんな負荷がかかって、そのエネルギーを全部学校で使い果たして、家に帰ってきたらもう空っぽ。それで爆発しやすくなったり、ぐったりしてしまいやすくなる、というのはよくあることかなと思います。

話す山岸佳織先生
「問題なく過ごしていることと、余裕で過ごせていることは別」と山岸先生

山岸先生は、別の場面でも「学校では問題なく過ごせている、むしろしっかり者の良い子と言われる子が、学校でエネルギーを使い果たして、家では疲れ切って何もできなくなる」ことを、発達特性のある子に見られる特徴のひとつとして挙げていました。「良い子」と言われていることは、必ずしも安心材料ではない、ということです。

家で荒れるのは、子育てがうまくいっていないから?

そうではありません。山岸先生は「家で荒れるのは、家が安心できる場所だからこそ出ているケースがとても多い」と話します。

山岸先生
山岸先生:

家での出方は、本当にさまざまです。一言で「荒れる」と言っても、物に当たる、物を投げつける、大きな声を出す、3時間でも4時間でも泣き続ける。夜中の12時を過ぎても「お母さん、今日学校でこういうことがあってね」と話し続けて、それを吐き出しきらないと眠れない、という子もいます。

帰ってきてから無表情で無言になる、泣く、怒る、家族に八つ当たりする。親御さんからしたら困るし、しんどいし、つらい状況でもあるんですけど、それは家庭が安心できる場所だから出ている、というケースがとても多い。まずそれは、知っておいていただきたいことのひとつです。

家での出方の例
荒れる物に当たる・物を投げる・大きな声を出す・家族に八つ当たりする
泣く3時間、4時間と泣き続ける
止まらない夜中まで学校の出来事を話し続け、吐き出しきらないと眠れない
動けない帰宅後、無表情・無言になる/床に寝転んだまま反応しない
かほ
かほ:

親からすると「どうしてうちでだけ」と思ってしまいますが、逆に言えば、家では素の自分を出せているということなんですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。ただ、これは「だから親御さんが全部受け止めてください」という意味では、全然ないんです。そこは誤解のないように、何度でもお伝えしたいところです。

親が受け止めきれないときのことは、記事の後半と「不登校の親が疲れた・限界のとき」で詳しく紹介しています。

家で荒れているとき、親はどう対応すればいい?

山岸先生のアドバイスは、「気持ちは言葉にして受け止めつつ、やってはいけないことの線引きははっきり伝える」こと。暴力や暴言を、親が我慢して受け止める必要はありません。

山岸先生
山岸先生:

暴力とか暴言とか、そういうものを受け止める、我慢するということは、しなくていいです。むしろ、しないほうがいいです。

お子さんが荒れているときや無気力なときには、「実況中継」をぜひ使っていただきたいです。「今もう疲れてるね」「今嫌なんだね、ムシャクシャしてるんだね」「しんどいんだね」と、その気持ちのところは言葉にして伝えつつ、「でも、物を投げるのだけは危ないからやめて」と。やってはいけないことは、線引きして伝えていく。これはとても大事なことです。

「実況中継」とは、今のお子さんの気持ちや状態を、親が言葉にして伝えてあげる関わり方です。説得したり正論を言ったりするのではなく、お子さんが自分の状態に気づいて落ち着くのを手伝うイメージです。

山岸先生
山岸先生:

荒れているときに物を投げちゃいけない、というのは、お子さんも結構わかっていたりします。「何でも投げるんです」と言われるお子さんでも、よく聞いてみると「確かにレゴブロックは投げるけど、ハサミは投げたことがないね」ということがある。お子さんの中で、一生懸命に線引きをつけている子はたくさんいるんです。

ただ、大人からしたらレゴブロックも危ないですよね。だから、その線引きが大人とずれていたら、伝えたほうがいいです。「レゴも危ない、レゴも痛い。だからレゴもやめてほしい。だけど、今すっごいムシャクシャしてるんだね。こっちのクッションにどうぞ」というふうに。

身ぶりを交えて話す山岸佳織先生
「気持ちは受け止めつつ、線引きはちゃんと伝える」
かほ
かほ:

気持ちは受け止めつつ、線引きはちゃんと伝える。そこがポイントなんですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。ただ、その線引きって、やっぱり難しいと思うんです。今までお父様お母様がしてきた声かけと全く違う言い方をされると、お子さんもパニックになってしまうことがあります。

だから、お子さんの今の状況をお聞きしながら、「今までこう伝えてこられたのなら、次はこうしてみるのはどうか」「このお子さんなら、どういう言い方が響くか」を一緒に考えていけたらと思っています。そういう意味でも、ご家庭だけで抱えずに、一緒に考えていけるほうがいいと思います。

学校に「家では大変なんです」と伝えても、わかってもらえないときは?

「本人がつらいみたいです」と伝えるだけでは、伝わらないことが多いと山岸先生は言います。ポイントは、家で何がどれくらい起きているのかを記録して、具体的に伝えることです。

かほ
かほ:

学校では問題がないように見えるのに、本人のつらさを学校側に理解してもらえない、という場合もあると思います。

山岸先生
山岸先生:

学校に「本人がつらいみたいです」とだけ言うと、学校の先生からすれば「普通にできているし、なんならむしろいい子だし、クラスの中でもしっかり者で頼りになる」となって、お母様だけが「しんどい」と言っているような扱いをされてしまうケースもあります。極端な話、「お母様の子育てのスキルがないからだ」と言われて、さらに傷つけられてしまった、という話も聞いたことがあります。

だから、具体的に家でどうなっているのかを伝えるほうがいいと思います。

山岸先生が挙げてくれた伝え方の例は、こんなイメージです。

山岸先生
山岸先生:

そのうえで、困っているのは「本人が寝不足で朝起きるのがつらい」ということなのか、「毎日日付が変わってから2時間も3時間も話を聞くので、私もつらい」という親御さんのつらさなのか。そこも含めて、いつ、どこで、誰が困っているのかを学校にお伝えするのがいいと思います。

診断がついていたり検査を受けていたりすると、そこから伝える方も多いのですが、ラベルから入るよりも、今どこで誰が何に困っているのかを具体的に伝えるほうが大事です。

担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや養護の先生、特別支援コーディネーターの先生などにも入ってもらう「ケース会議」を開いてもらう方法もある、と山岸先生。学校との話し合いや配慮の求め方は「合理的配慮とは? 不登校・発達特性のある子が学校に相談できること」で詳しく紹介しています。

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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親が受け止めきれない、と感じたときは?

山岸先生がくり返し伝えていたのは、「家が安心できる場所であることは守ってほしい。でも、それは親が全部抱えるという意味ではない」ということです。

山岸先生
山岸先生:

以前、私がそれ(家で荒れるのは安心できる場所だから)だけをお伝えしていたときに、保護者の方から「先生がそう言ったので、なんとか私が受け止めなきゃと思っていたんです」と言われたことがあって。本当に申し訳ないことをしたな、と反省したんです。

ご家庭が全てを受け止めなきゃいけないとか、お父様お母様が頑張ってクッションになってください、サンドバッグになってください、ということでは全然ないんです。

山岸先生
山岸先生:

家が「安全基地」であるという環境を保つためにも、お父様お母様には相談してほしいと思います。お父様お母様がストレスフルな状態だと、お子さんはそれも感じてしまって、家が安全な場所ではなくなってしまう。そうなると、学校でも頑張って、家でも頑張って、お子さんが力を抜ける場所がひとつもなくなってしまうんです。

だから、お父様お母様が心のゆとりを少しでも持てるように、お友達でも、ご実家でも、外のサービスでも、どんなところでも使っていただきたいなと思います。

かほ
かほ:

子どものためにも、親が自分の心を守ることが大事なんですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。お父様お母様がこれまでしてきた関わりが、お子さんの安心感を作ってきているんです。でも、そのせいでお父様お母様が疲れ切ってしまっては、安心感を作っていくのも大変になってしまいます。まずは、お父様お母様が自分の心を守れるようにしていってほしいと思います。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、学校と家での姿のギャップや、家での荒れに悩んでいる親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

今こうした困りごとを抱えているお子さんの親御さんは、とてもとても大変だと思います。それを相談することにハードルがある、というお気持ちもとてもよく理解できます。

ただ、こういう困りごとがあるのは、お子さんが悪いわけでも、まして親御さんの育て方や対応が悪かったわけでも全くありません。むしろ、今までご家庭が安心できる環境だったからこそ、困りごととしてご家庭で出てくるものでもあります。お子さんを責めることなく、ご自身を責めることなく、これからどう関わっていくのが一番いいのかを考えていってほしいと思います。

困った行動が出ているのは、お子さんにとって何か大変さがあるよ、というサインでもあります。これから先、困ったことに出会ったときに乗り越える手段を増やすためのヒントを探す場でもあるので、今困りごとが起きたことをチャンスだと思って、お子さんと向き合っていってほしいと思います。

笑顔で話す山岸佳織先生
「お子さんも、ご自身も責めないで」

「学校では良い子」は、お子さんが学校でそれだけ頑張っている、ということなのかもしれません。家で見せる荒れやぐったりした姿は、その頑張りの裏側です。お子さんの気持ちを言葉にして受け止めつつ、親御さん自身も一人で抱え込まずに、頼れるところを頼ってください。

この記事でお話を伺った山岸先生には、不登校ミーツで直接相談できます。

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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