
子どもの暴力が母親にだけ向くのはなぜ?対応を公認心理師が解説
公開
お話を伺った専門家:はやし ゆか先生(公認心理師)
取材・構成:不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 母親は一緒にいる時間が長く、甘えも出やすい。子どもは家族のパワーバランスをよく見ていて、受け止めてくれそうな相手、出しやすい相手に向けることがある(公認心理師・はやし ゆか先生)。
- まずはお母さんを守ること。家族の中で力のある立場の人が「暴力は認めない」「大事なお母さんに手を出すのは許さない」とはっきり伝えると、子どもの歯止めにも、お母さんの安心にもなる。
- 危ないときは一時的に家から離れてクールダウンを待つ。親戚や事情を知る友人など、身近な第三者が入るだけで落ち着くこともある。刃物が出るなど命に関わるときは警察や児童相談所(189)へ。
- 外では良い子で家で荒れる子は、第三者がいる場で「なぜそうなったか」を一緒に話す時間をもつと、考え方を修正するきっかけになる。
お父さんには何も言わないのに、お母さんにだけきつい言葉を投げる。手が出るのも、お母さんに対してだけ。
不登校の子どもの暴言・暴力の相談では、こうしたケースが少なくありません。「私の育て方が悪かったのか」と、ひとりで抱え込んでいるお母さんもいるかもしれません。
今回は、公認心理師のはやし ゆか先生に、子どもの暴力が母親にだけ向く理由と、家族の対応、頼れる相談先を伺いました。

子どもの暴力が、母親にだけ向くのはなぜ?
はやし先生は、理由として「一緒にいる時間の長さと甘え」、そして「家族のパワーバランス」を挙げます。
ご相談の中には、父親には暴言や暴力をしないのに、母親にだけそういった行為がある、という話も聞きます。これはなぜなのでしょうか。
お母さんのほうが一緒にいる時間が長くて、甘えも出やすいということが考えられます。一方でお父さんには、力ではかなわないと感じて、暴言や暴力が向くことは少ないのかなと思います。
お子さんって、本当に家族のパワーバランスをよく観察しているんです。お父さんとお母さんの関係も見ながら、どちらが自分のことを受け止めてくれるか、どちらに出しやすいか、ということを考えながら行動しているんじゃないかなと思います。
母親にだけ向くのは、お母さんが嫌われているからではなく、「受け止めてくれる」「出しても大丈夫」と感じている相手だから、という面もあるのかもしれません。ただし、だからといって暴力を我慢し続けていいわけではありません。
不登校の子が家で荒れる背景や、暴言を言われたその場の対応は、不登校の子の暴言・暴力への対応は?で詳しく伺っています。
母親にだけ暴力が向くとき、家族はどう対応すればいい?
はやし先生がまず挙げたのは、「お母さんを守ること」です。
母親にだけ暴言や暴力が向いてしまうとき、お母さん自身や、ほかの家族はどう対応したらいいでしょうか。
やはり、そのお母さんを守ることが重要だと思います。
もし家族の中で一番力を持っているのが父親という立場の方なら、お母さんへの暴力は認めていないということを、はっきり子どもに伝えることも重要だと思います。「どんな状況でも、暴力という形は許さないよ」「大事なお母さんに手を出すのは、もってのほかだよ」と伝えてもらうことが必要です。
そうすることで、子ども自身の歯止めになることもありますし、お母さん自身も「自分が守られている」と安心できるのではないかなと思います。
不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「転校しても不登校の高2娘、また明るく戻れる?」
はやしゆか先生 の回答
娘さんを大切に思ってこられた気持ちと、お母様ご自身のつらさがぎゅっと詰まっていて、何度か読み返しました。 明日からの連休…
危ないと感じたら、どこに相談すればいい?
暴力がエスカレートして、身の危険を感じることもあります。はやし先生は、段階に分けて頼れる先を教えてくれました。
警察や外部の機関も忙しく、なかなか動いてもらえないこともあるかもしれません。離れたほうがよければ、その場から離れて、一時的に親御さん自身も家から離れて、子どもがクールダウンするのを待つのもひとつだと思います。
ただ、状況によっては、たとえば刃物が出るような、命に関わる場合には、警察や外部機関の助けを求めるのもひとつの方法だと思います。
外部の機関がなかなか動いてくれない場合に、一番身近な相談先としては、どんな方に相談すればいいでしょうか。
外部機関はちょっとハードルが高いと思うので、たとえば親戚の中で、おじいちゃん・おばあちゃんが助けてくれそうであれば、そういう方に頼るのもひとつだと思います。遠方で誰もいない場合は、家庭の状況を理解してくれている友人に来てもらうのもひとつです。
第三者が入ることで、すごく興奮している子どもが落ち着くことは、よくあることなので、家族以外に頼れる人がいるなら、まずその方に相談するのもひとつかなと思います。
ただ、そういう方がいつもいるわけではないので、どうしても命に関わる場合は、警察や、児童相談所の専門ダイヤル「189」に相談するのもひとつです。
| 状況 | 頼れる先(はやし先生の話から) |
|---|---|
| 危ないと感じる | その場や家から一時的に離れ、子どものクールダウンを待つ |
| 家族だけでは収まらない | 祖父母などの親戚、家庭の事情を知る友人に来てもらう |
| 刃物が出るなど、命に関わる | 警察、児童相談所の専門ダイヤル「189」 |
| 対応のしかたを相談したい | 親だけでもカウンセリングや相談機関へ |

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
はやし ゆか先生
公認心理師
「どうしたらいい?」からで大丈夫です
外では良い子なのに、家で荒れる子にはどう対応する?
学校や外では良い子なのに、家ではひどく荒れる。いわゆる「過剰適応」の子の場合、はやし先生は、第三者がいる場を、話し合いのきっかけにしてほしいと話します。
過剰適応のお子さんであれば、たぶん第三者が入ると、すとんと落ち着くと思います。ただ、その方がいなくなるとまた荒れてしまうことも考えられます。
ですから、その方がいるときに、話し合いの糸口として、最初になぜそういう行動になってしまったのか、その原因などを一緒に話し合う時間を持ってもらうと、子ども自身も考え方を少し修正して、家族だけに向けても意味がない、と理解できるようになるのかなと思います。
一方で、家族だけでは何も変わらない、というわけでもありません。
家族だけだと、関係はすぐには変わりにくいと思います。でも、これまで怒ってやめさせようとしていた親御さんが、落ち着いて「それはやめよう」「お母さん、ちょっと今離れるね」と対応すると、子どもは今までと違う対応をすぐに感じ取ります。
「お母さん、お父さん、今までと違う」と、ふと我に返ることもあるのかなと思います。家族だけで解決しない、ということではなく、親御さんの対応次第で変わる場合もあると思います。
外では頑張れているのに家で荒れる「過剰適応」については、学校では良い子なのに家で荒れる?過剰適応を公認心理師が解説でも、発達特性のある子の場合について別の先生に伺っています。
不登校の子の親御さんへ、はやし先生からのメッセージ
最後に、子どもの暴言や暴力に悩んでいる親御さんへ、はやし先生のメッセージです。
暴言や暴力は、人を恐怖の支配下に置くので、親御さんの思考をストップさせてしまうほど、怖いと感じられることも多いと思います。
責任感の強い親御さんほど、ずっと子どもと一緒にいて、なんとかしなくちゃと思われていると思います。でも、少し別々の時間もとって、ご自分のケアも大切にしていただきたいなと思います。

暴力が母親にだけ向くとき、いちばん傷ついているのはお母さんかもしれません。お母さんがひとりで受け止め続ける必要はありません。家族で「暴力は許さない」という線をはっきり示し、危ないときは離れ、身近な人や相談先を頼ってください。
よくある質問
- Q. 子どもの暴力が母親にだけ向くとき、父親はどうすればいい?
- A. はやし先生は、家族の中で一番力を持っている立場の人(父親など)が、「お母さんへの暴力は認めていない」「どんな状況でも、大事なお母さんに手を出すのは許さない」とはっきり子どもに伝えることが重要だと話しています。子どもの歯止めになるとともに、お母さんも守られていると安心できるそうです。
- Q. 警察に連絡するほどではないとき、誰に頼ればいい?
- A. はやし先生は、助けてくれそうな祖父母などの親戚や、家庭の状況を理解してくれている友人に来てもらうことを挙げています。第三者が入ることで、興奮している子どもが落ち着くことはよくあるそうです。命に関わるときは、警察や児童相談所の専門ダイヤル(189)に相談してください。
この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
はやし ゆか先生
公認心理師
「どうしたらいい?」からで大丈夫です
不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「転校しても不登校の高2娘、また明るく戻れる?」
はやしゆか先生 の回答
娘さんを大切に思ってこられた気持ちと、お母様ご自身のつらさがぎゅっと詰まっていて、何度か読み返しました。 明日からの連休…
あわせて読みたい
不登校の子の暴言・暴力への対応は?原因と対処を公認心理師が解説不登校の子が家で荒れて暴言や暴力が出るのはなぜ?その場での受け止め方、収まった後の話し方、逆効果になるNG対応、警察や外部に相談する目安まで、児童相談所で約20年相談に携わってきた公認心理師のはやし ゆか先生に伺いました。
子どもが物に当たる・壁に穴を開けたら?公認心理師が解説イライラして物を投げる、壁を殴って穴を開ける。そんなとき親はどう対応する?落ち着ける場所の作り方、壊れた物や壁の穴の片付けを誰がするか、やりがちなNG対応を、公認心理師のはやし ゆか先生に伺いました。
学校では良い子なのに家で荒れる?過剰適応を公認心理師が解説過剰適応とは、学校で頑張りすぎた反動で家に帰ると崩れてしまう状態です。家で荒れたときの気持ちを言葉にする関わり方と線引き、学校への具体的な伝え方を、発達特性のある子を支援してきた公認心理師の山岸佳織先生が解説します。