本文へ移動
不登校ミーツ不登校の悩みを、専門家と一緒に。

不登校の試し行動とは?わがままとの違いを公認心理師が解説

公開

お話を伺った専門家:はやし ゆか先生(公認心理師)

取材・構成:不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 試し行動とは、「こんな自分でも見捨てずに見てくれるか」を、親をわざと困らせて確かめようとする行動。自信のない不登校の子は、親の愛情を確かめようとすることがある(公認心理師・はやし ゆか先生)。
  • 見分け方の目安:要求が通っても満足せず次々に難しいことを求める、親が嫌がることをあえて選ぶ、愛情を確かめる言葉が出る、言った後に親の様子をうかがう──なら試し行動の可能性。手伝えばそれで満足するなら、わがままのレベル。
  • 要求と気持ちは分けて考える。できないことははっきり断っていい。そのうえで「あなたのことが大事なのは変わらないよ」「今しんどいんだね」と気持ちを代弁する。
  • 続く期間は数週間から数か月以上とさまざま。荒れる時間が短くなる、「わかった、いいよ」と受け入れられる、自分から話しかけてくる、ありがとう・ごめんねが増える、表情がやわらぐ──が終わりに近いサイン。

「本当に私のことが大事なら、これくらいしてくれるよね」

わざと困らせるようなことを言う。応えても応えても、次の要求が出てくる。断ると「どうせ私のことなんて嫌いなんでしょ」。

不登校の子どもにこんな様子が見られるとき、それは単なるわがままではなく、「試し行動」かもしれません。今回は、児童相談所などで約20年、子どもと家族の相談に携わってきた公認心理師のはやし ゆか先生に、試し行動とは何か、わがままとの見分け方と、親の対応を伺いました。

Zoomで対談する不登校ミーツのかほと公認心理師のはやし ゆか先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:はやし ゆか先生

試し行動とは?

かほ
かほ:

子どものわがままに悩んだとき、「試し行動」という言葉にピンとくる親御さんもいると思います。試し行動とは、いったいどういうものなのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

試し行動とは、「こんな自分でも見捨てずに、ちゃんと見てくれているか」を、親御さんをわざと困らせることで確かめようとする行動です。

不登校の子は自信がないことも多いので、「親の言うことを聞くときだけ愛してくれるんでしょう」「学校に行けば愛してくれるんでしょう」と思い込んでしまうところもあるかもしれません。それで、親御さんの愛情を確かめようとすることもあるかもしれません。

試し行動とわがままは、どう見分ける?

はやし先生は「見分けるのは非常に難しい」と前置きしたうえで、「要求の中身と、その背景」を見ると分かりやすいと話します。

はやし先生
はやし先生:

試し行動の場合は、要求が通っても満足せず、また次々に難しいことを要求してくる。そのとき、親御さんが嫌がることや困ることを、あえて選ぶ。「じゃあ、これをやってくれないなら、私のことは嫌いなんでしょう」など、愛情を確認するような言葉が出たり、言った後に親御さんの様子をうかがったりする。こういう場合は、試し行動の可能性が高いかなと思います。

わがままは、たとえば「面倒くさい」「これやりたくない」という行動の回避が中心で、親御さんがちょっと手伝ってあげれば、それだけで十分満足する。自分でできることを頼んできて、応えてあげれば満足する、というのがわがままのレベルかなと思います。

試し行動わがまま
要求が通ったら満足せず、次々に難しいことを求めるそれで満足する
要求の中身親が嫌がること・困ることをあえて選ぶ「面倒くさい」「やりたくない」の回避が中心
言葉・様子「やってくれないなら嫌いなんでしょ」など愛情を確かめる。言った後に親の様子をうかがう自分でできることを頼む

ただし、はっきり分けられないことも多い、とはやし先生は続けます。

はやし先生
はやし先生:

両方が混ざっているような場合もあるので、そういうときは、子どもの要求の中身と、子どもが何を考えているかという気持ちの部分を、分けて考えることが必要かなと思います。

何度もお話ししていますが、親御さんができないことは、できないとはっきりおっしゃって大丈夫です。その代わり、「今、不安な気持ちなんだね」「大事に思っているから心配しないで大丈夫だよ」と、子どもの気持ちには寄り添ってあげることが大事かなと思います。

「これをやってあげないと愛情は伝わらない」ということは、決してありません。「あなたが一緒にいてくれてうれしいよ」と言葉や態度で示すだけで、子どもに伝わることは十分あると思います。

親御さん自身が「このまま断っていいのか」「嫌われたらどうしよう」と混乱したときは、「何が起きているのか(事実)」と「自分の気持ち」を分けて整理すると、落ち着いて対応できる、とはやし先生は話しています。

話すはやし ゆか先生
「要求と気持ちは、分けて考える」

試し行動には、どんな声をかければいい?

「本当に私のことが大事なら、これしてくれるよね」と言われたとき。はやし先生がすすめるのは、子どもの気持ちを代弁することです。

はやし先生
はやし先生:

「あなたのことを大事に思っているのは変わらないよ」「ちょっと不安になっちゃった?」と、子どもの気持ちを代弁してあげるといいのかなと思います。「気持ちがぐちゃぐちゃになっちゃうくらい、今しんどいんだね」「どんなときでも、一緒にいてくれるとうれしいと思っているよ」と伝えてあげるのがいいのかなと思います。

要求には応えられないと言った後に、「こういう難しいことをやってほしいと思うくらい、もしかしたら気持ちの中はぐちゃぐちゃなのかもしれないね」と、子ども自身も気づいていないような気持ちを代弁してあげると、それだけで少し落ち着くことはあるかなと思います。

断るときの声かけについても、具体的に教えてくれました。

はやし先生
はやし先生:

断るときは、「あなたのことは大事。でも、できないよ」「今日はここまでだよ。また落ち着いたら話そうね」「気持ちはちゃんとわかっているけど、それはパパとママで考えて、やらないようにしているよ」などと伝えてあげるといいかもしれません。

ポイントは、「あなたが大事」ということと、「それはできない」ということを分けて、きちんと伝えることです。

「どうせ私のことなんて」と、子どもはいろいろ反応してくるかもしれませんが、売り言葉に買い言葉にならないように、一つひとつに反応する必要はないと思います。伝えたいことを伝えたら、その場を少し離れて、落ち着いたころに「さっきはできないって言ったけど、あなたのことを大事に思っているのは変わらないよ」とそっと伝えるだけでも、子どもの中にすとんと落ちることがあると思います。

場面はやし先生の声かけ例
気持ちを受け止める「あなたのことを大事に思っているのは変わらないよ」「気持ちがぐちゃぐちゃになるくらい、今しんどいんだね」
要求を断る「あなたのことは大事。でも、できないよ」「今日はここまで。また落ち着いたら話そうね」
落ち着いた後「さっきはできないって言ったけど、大事に思っているのは変わらないよ」

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます

ゴールド

はやし ゆか先生

公認心理師

「どうしたらいい?」からで大丈夫です

はやしゆか先生のプロフィールと空きを見る

試し行動はいつまで続く?終わりが近いサインは?

試し行動に付き合う日々は、親にとって本当に消耗します。いつまで続くのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

親御さんの愛情を試さなくても感じられるようになれば、徐々に収まっていくと思います。でも、これは子どもによって本当に違うので、数週間で落ち着くこともあれば、数か月以上にわたる場合もあると思います。

また、すぐにそこで終わりということではなく、落ち着いたかなと思ったら、また出てくることもあります。でもそれは、決して前に進んでいないとか、後戻りしたということではなく、「まだ心のどこかに、大丈夫かな、確かめたいという気持ちが残っているんだな」と受け止めてあげればいいのかなと思います。

終わりに近づいているサインも教えてくれました。

はやし先生
はやし先生:

たとえば、要求が通らなくても、荒れる時間が、前は1時間かかっていたのに30分、20分と短くなってきた。断られても、今までは「絶対やって」と押し通そうとしていたのが、「わかったよ、じゃあいいよ」と受け入れられる場面が出てくる。要求という形ではなく、子どものほうから話しかけてきたり、甘えてきたりする。「ありがとう」「ごめんね」と言える場面が増えてくる。

それから、子どもの表情が少しやわらかくなってきたなと親御さんが感じられるときも、落ち着いてきたサインなのかなと思います。

試し行動を落ち着かせるために、親にできることは?

はやし先生
はやし先生:

線引きは一貫して続けること。子どもの反応によっては「もう無理」と思うときもあるかもしれませんが、その一貫性は、その時の気分で変えないようにされるといいのかなと思います。そのうえで、「要求は聞けないけど、言葉の背景にある気持ちには寄り添えるよ」と伝えてあげることが大事です。

また、要求のやりとり以外のときに、日頃から「一緒にいてくれてうれしいよ」ということを、言葉や態度で伝えてあげることも必要でしょうし、緊迫した場面だけでなく、穏やかに一緒に過ごす時間が増えていくと、子どもも安心するのかなと思います。

試し行動は、子どもが「自分が何をしても親が離れていかないか」を確認する作業だと思うので、親御さんの対応が一貫してぶれずにいくと、「もう確認する必要はないな」と子ども自身が思えるようになるのかなと思います。

親にとっては長くつらい時間です。はやし先生は、こうも話してくれました。

はやし先生
はやし先生:

親御さんはとても疲れると思いますが、いつか終わりはきちんと来ます。完璧に対応する必要はまったくありません。うまくいかなかった日があっても、後から少し気持ちを付け加えてあげるだけで、子どもに伝わる部分も多いと思うので、そんなに器用でなくても大丈夫なのかなと思います。

わがままの線引きの具体的な方法(基準の決め方、お金やゲームの要求)は、不登校のわがまま、どこまで聞く?で伺っています。

不登校の子の親御さんへ、はやし先生からのメッセージ

最後に、子どものわがままや試し行動に悩む親御さんへ、はやし先生のメッセージです。

はやし先生
はやし先生:

そう悩まれるのは、子どもに真剣に向き合っておられる証拠です。まずは、ここまで努力されたご自分を褒めて、認めてあげてほしいなと思います。

子どものわがままや試し行動の裏には、「こんな自分でもちゃんと受け止めてくれるかな、大丈夫かな」という不安や自信のなさがあると思います。迷ったときは、気持ちは受け止め、要求は聞けるものと聞けないものを分ける。物やお金で動かさず、できないことは冷静に伝える。愛情は、何でもしてあげることではなく、言葉や態度で日常的に伝える。この3つを思い出してください。

ぶれずに関わり続けることで、子どもは「この人は絶対に離れていかないから大丈夫」と安心できるようになると思います。人間なので、すべてをパーフェクトに対応できることは決してありません。そんなときは自分を責めずに、「さっきはごめんね、大事に思っているからね」と伝えてあげれば大丈夫です。迷ったり疲れたりしたときは、ぜひ専門家を頼ってください。

笑顔で話すはやし ゆか先生
「完璧に対応する必要は、まったくありません」

試し行動は、裏を返せば「この人なら大丈夫かもしれない」と思っている相手にしか出ない行動でもあります。要求には線を引き、気持ちには寄り添う。その一貫した関わりが、子どもにとって「何があっても見捨てられない」という安心になっていきます。

よくある質問

Q. 子どもの試し行動とは?
A. はやし先生によると、試し行動とは「こんな自分でも見捨てずにちゃんと見てくれているか」を、親をわざと困らせることで確かめようとする行動です。不登校の子は自信がないことが多く、「言うことを聞くときだけ愛してくれるんでしょう」「学校に行けば愛してくれるんでしょう」と思い込み、親の愛情を確かめようとすることがあるそうです。
Q. 試し行動とわがままは、どう見分ける?
A. はやし先生は、要求の中身と背景を見ると分かりやすいと話しています。要求が通っても満足せず次々に難しいことを求める、親が嫌がることをあえて選ぶ、「やってくれないなら嫌いなんでしょう」など愛情を確かめる言葉が出る、言った後に親の様子をうかがう──なら試し行動の可能性が高いそうです。面倒くさい・やりたくないという回避が中心で、少し手伝えば満足するなら、わがままのレベルとのことです。両方が混ざっていることもあります。
Q. 試し行動はいつまで続く?
A. はやし先生は、親の愛情を試さなくても感じられるようになれば徐々に収まっていくものの、数週間で落ち着くこともあれば数か月以上続くこともあり、子どもによって本当に違うと話しています。落ち着いたと思ったらまた出ることもありますが、後戻りではなく、まだ確かめたい気持ちが残っているのだと受け止めればよいそうです。

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます

ゴールド

はやし ゆか先生

公認心理師

「どうしたらいい?」からで大丈夫です

はやしゆか先生のプロフィールと空きを見る

不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?

みんなの相談

•••こんな相談に回答しています

Q

「中3娘の不登校、通信制進学で大丈夫?」

ゴールド

はやしゆか先生 の回答

小5の頃から、長い道のりを娘さんと一緒に歩いてこられたのですね。そのうえで「やるしかない」と腹を括られたお気持ちに、敬意…

不登校ミーツのほかのカウンセラーを見る →

あわせて読みたい