小学生の頃から、学校に行けなくなったり、転校したりしながらも、中学1・2年生では登校を頑張ってこられた娘さん。そして今回、再び学校に行けなくなり、受験を迎える中で、娘さんの希望を尊重しながら進路を考えてこられたのですね。
県外の通信制高校への進学に向けて、お仕事を辞めて一緒に生活することも決断されたとのこと。お母様自身にも大きな不安がある中で、娘さんが安心して新しい生活を始められるよう、環境を整えようとされていることが伝わってきます。
一方で、これまでの経過を振り返ると、また人間関係でつまずいてしまうのではないか、将来どうなってしまうのだろうかと心配になるお気持ちも、よくわかります。
① 娘さんは「逃げている」のではないかもしれません。
今回、特に気になったのは、娘さんが中学3年生になってから、以前少し付き合っていた男子や、その周囲の男子からからかわれたことをきっかけに、学校が息苦しくなったと話している点です。学校に行けなくなった理由は一つとは限りませんが、本人が人間関係で傷つき、学校にいること自体をつらく感じるようになった可能性は十分に考えられます。
周囲から見ると、学校に行かないことは「逃げている」ように映るかもしれません。しかし、本人にとっては、これ以上傷つかないように自分を守るために距離を取っているのかもしれません。
特に、以前から学校に行けなくなった経験がある場合、再び人間関係でつらい思いをすると、「また同じことが起きるのではないか」「今度は耐えられないかもしれない」という不安が強くなることもあります。そのため、今の娘さんの姿を、単に困難から逃げていると捉えるよりも、何が本人にとって耐え難い状況になっているのかを理解することが大切だと思います。
もちろん、今後、社会生活の中で苦手な人間関係や困難に直面することはあるでしょう。そのときに必要なのは、どんなにつらくても我慢してその場に居続けることだけではありません。自分に合う環境を選ぶこと、困ったときに助けを求めること、距離を取ること、別の方法を考えることも、大切な力です。
今は、娘さんが安心できる環境の中で、自分の気持ちや希望を整理していけることを大切にしてよいと思います。
② 通信制高校を選ぶことは、将来にとってマイナスとは言えないケースも多いです。
娘さんは、県外の通信制高校への進学を希望し、実際にお試しにも4回参加されたのですね。
進学先を考える際に大切なのは、全日制か通信制かという形式だけではなく、その環境が本人に合っているかどうかです。
毎日通う自信がないと感じている娘さんにとって、通信制高校は、自分のペースを保ちながら高校卒業を目指すための選択肢になっているのかもしれません。通信制高校で学び、大学や専門学校への進学を目指すこともできます。通信制を選んだからといって、将来の可能性が狭まるわけではありません。
ただし、通信制高校にも学校ごとの違いがあります。登校日数や学習の進め方、スクーリング、課題提出の負担、困ったときの相談体制などは、入学前に確認しておくと安心です。
特に娘さんの場合は、人間関係に不安があるとのことですので、友達づくりを急がされないか、対人関係で困ったときに相談できる先生がいるか、登校が難しくなった場合にどのような支援が受けられるかなども、確認しておきたい点です。
高校生活は、毎日登校して友達と過ごすことだけがすべてではありません。まずは安心して学び、自分なりの生活を築いていくことも、大切な高校生活の一つだと思います。
③ お母様が一緒についていくという決断について
県外への進学にあたり、お仕事を辞めて一緒に生活することを決断されたのですね。
お母様ご自身も、仕事や生活を大きく変えることになるため、不安があって当然だと思います。
お母様が一緒にいることで、娘さんが新しい環境に慣れるまでの安心感につながる可能性はあります。これまで忙しく、十分に向き合えなかったと感じていらっしゃるからこそ、今度はそばで支えたいと思われたのですね。
ただ、これまでの関わりをすべて反省し、取り戻さなければならないと考える必要はありません。お母様が仕事をしながら生活を支え、娘さんの成長を見守ってこられた時間も、親子の歴史の一部です。
また、一緒についていくことが正しいかどうかは、周囲の人が一律に判断できるものではありません。娘さんの希望、お母様の生活や経済的な見通し、今後どの程度のサポートが必要かなどを踏まえて考えていくことが大切です。
一つ意識しておきたいのは、お母様がそばにいることと、娘さんの問題をすべてお母様が解決することは別だという点です。
新しい生活が始まったら、最初は必要な支援をしながらも、少しずつ娘さん自身が選んだり、困ったときに相談したりできるようにしていけるとよいと思います。お母様自身も、新しい土地での仕事や生活を大切にし、無理なく続けられる環境を整えてくださいね。
④ 高校でも人間関係でつまずき、また学校に行けなくなったらどうしよう、という不安について
これまでの経過を考えると、また同じことが起きるのではないかと心配になるのは自然なことです。
ただ、今から「また行けなくなるかもしれない」と考え続けても、実際にどうなるかはわかりません。
大切なのは、二度と学校に行けなくならないようにすることだけを目標にしないことだと思います。
例えば、新しい学校で人間関係に悩んだとき、以前より早い段階で周囲に相談できること。無理をして体調を崩す前に休めること。登校が難しくなっても、自分に合った学び方を先生と相談できること。
こうしたことも、今後の大切な目標になります。
娘さんは、中学1・2年生では登校を頑張ってこられました。また、現在も塾や家庭教師を通じて勉強に取り組み、担任の先生への対応もきちんとできているとのことです。
こうした姿からは、学校に行けない状態だけでは捉えきれない、娘さんの力も見えてきます。
一方で、先生への対応がきちんとできているからといって、本人の内面に負担がないとは限りません。周囲に合わせて頑張りすぎてしまうこともあるため、表面的な様子だけで判断しないことも大切です。
新しい学校では、頑張って通うことだけでなく、つらいときに自分の状態を伝えることや、無理をしないことも、娘さんと一緒に大切にしていけるとよいですね。
⑤ お母様の不安について
娘さんの将来が心配になるのは、これまで何度も学校に行けなくなる経験をし、そのたびにお母様も悩み、対応してこられたからだと思います。
「また同じことが起きたらどうしよう」「今度こそ何とかしてあげたい」という気持ちが強くなるのも無理はありません。
ただ、娘さんの将来は、今の登校状況だけで決まるものではありません。
今は、娘さんが安心して学べる環境を選び、新しい生活を始めようとしている段階です。まずは、その選択を大切にしながら、実際に生活が始まってから、娘さんに合うペースや支援を一緒に探していけばよいと思います。
また、娘さんの不登校を、お母様一人で何とかしなければならないわけでもありません。主治医やカウンセラーとの相談を続けながら、必要に応じて進学先の先生とも連携し、娘さんを支える体制をつくっていけると安心です。
最後に、娘さんがこれから先、どのような高校生活を送るのか、今の段階で確実なことは誰にも言えません。けれども、これまでの経験があるからこそ、娘さん自身が「自分に合わない環境から離れてもよいこと」「つらいときには助けを求めてもよいこと」を学んでいける可能性もあります。
以前と同じように学校に通えることだけを回復の目標にするのではなく、娘さんが自分に合った環境を選び、安心して学び、自分の将来を考えられるようになること。そのような視点で、これからの生活を見守っていけるとよいですね。
お母様も、どうかご自身のことを大切にしながら、新しい一歩を踏み出してください。