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不登校のわがまま、どこまで聞く?線引き3つを公認心理師が解説

公開

お話を伺った専門家:はやし ゆか先生(公認心理師)

取材・構成:不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 不登校の子は「学校に行けない自分はダメだ」と自信を失い、不安を抱えていることが多い。その不安が、わがままに見える行動として出てくる場合が多い(公認心理師・はやし ゆか先生)。
  • 断ると荒れるのが怖くて聞き続けると、「押せば通る」と学習して要求はさらに大きくなる。線引きのポイントは3つ。①基準を先に決める(時間・金額の上限)②その場の気分で基準を変えない③物やお金で機嫌をとらない。
  • 断るときは「あなたが大事」と「それはできない」を分けて、短く、はっきり、冷静に。理由を長々と説明しない。荒れたら安全を確保して離れ、落ち着いてからフォローする。
  • 夫婦で基準がばらばらだと、子どもは片方の言うことだけ聞くようになる。要求を通すかどうかの場面では、夫婦で一貫した姿勢を。

「お菓子買ってきて」くらいだったのが、いつの間にか「今すぐコンビニ行ってきて」「夜中でもいいから買ってきて」に。ゲームの課金に「3000円ちょうだい」が毎週のように続く。

断ると不機嫌になる。暴れることもある。だから、つい言うことを聞いてしまう──。不登校の子のわがままに、どこまで応えればいいのか迷っている親御さんは多いはずです。

今回は、児童相談所などで約20年、子どもと家族の相談に携わってきた公認心理師のはやし ゆか先生に、不登校の子のわがままの理由と、どこで線を引けばいいのかを伺いました。

Zoomで対談する不登校ミーツのかほと公認心理師のはやし ゆか先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:はやし ゆか先生

不登校の子が、わがままになるのはなぜ?

はやし先生は、わがままに見える行動の奥には「不安と自信のなさ」があると話します。

かほ
かほ:

不登校の子どもは、親から見るとわがままに見える行動をとることがあると思います。勉強はせずにスマホやゲームばかり、言うことがころころ変わる、親を困らせるような要求をする。これには、どんな心理があるのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

これまでの親御さんの関わりが影響している、ということは、もしかしたらあるかもしれません。ただ、それは親御さんが悪いという意味では決してありません。

不登校の子は、「学校に行けない自分はダメだ」と自信を失ったり、不安を抱えていたりすることが多いと思います。その不安が、わがままに見える行動として出てくる場合が多いのかなと思います。

これまで親御さんが先回りして子どもが困らないようにしてきた場合や、顔色をうかがって要求を受け入れてきた場合は、もしかしたら「要求を押し通す」ことが習慣になっている、ということもあるのかなと思います。

かほ
かほ:

わがままが通ることで、子どもは自信を取り戻しているのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

「自分には何もできない」「自分なんていなくなればいい」と思っている子が、少しでも自分の要求が通ると、「聞いてもらえた、このまま思いどおりに進むといいな」と思って、要求がどんどんエスカレートしていく、ということはあるかもしれません。

自信を取り戻すプロセスとして、そういうことを利用するのはあるかもしれません。でも、全部を飲み込むと、きっと親御さんが対応に困る部分が出てくるので、そこはセーブすることも必要なのかなと思います。

わがままがエスカレートしたら、どこで線を引く?

最初は小さかった要求が、だんだん大きくなっていく。はやし先生は「聞ける要求と、聞けない要求の線引きが大事」と話します。

はやし先生
はやし先生:

線引きは、今だけのためではありません。将来、子どもにパートナーができたときに、同じように自分の要求を押し通して、聞いてくれないと手を出す、ということにならないためにも大事かなと思います。

エスカレートしているときは、断ると不機嫌になったり暴れたりするのが怖くて、つい聞いてしまう、という流れになることが多いと思います。でも、要求を聞き続けていると「押せば通る」と学習してしまって、要求がさらに大きくなりやすいのが実態だと思います。

では、どう線を引けばいいのでしょうか。はやし先生は、ポイントを3つ挙げてくれました。

はやし先生
はやし先生:

1つ目は、線引きの基準をあらかじめ決めておくこと。たとえば「夕方5時までだったら買い物を考えてもいいよ、でも夜中は買いに行けないよ」「何百円までは買ってあげられるけど、それ以上は買えないよ」など、金額の上限を決めておくのは大事かなと思います。

2つ目は、基準をその場の親御さんの気分や機嫌で変えないこと。子どもは、親御さんが「怖いから」「今日は機嫌がいいから買ってあげよう」というところをよく観察しているので、見抜かれることもあります。「強く言えば聞いてもらえる」と学習させないためにも、基準は変えないことが大事です。

3つ目は、子どもの機嫌が悪いときに「お小遣いをあげるから落ち着いて」のように、物やお金で機嫌をとらないこと。そうしたくなることもあるかもしれませんが、今後の対応が難しくなるので、極力避けたほうがいいと思います。

この3つは、伝えるタイミングも大切です。

はやし先生
はやし先生:

子どもの機嫌が悪いときではなく、落ち着いているときに、あらかじめこの3つを伝えておくと、その場での衝突が減るかもしれません。

また、要求が大きくなる背景には、不安や自信のなさがあるかもしれません。断るときは「絶対ダメ」ではなく、「あなたのことを大事に思っているから、今はこれはできないよ」と、子どもの存在を否定しているのではなく、大事に思っているからこそルールを決めるんだ、ということを伝えてあげるのも大事かなと思います。

話すはやし ゆか先生
「基準は、その場の気分で変えない」

断ると荒れる子には、どう伝えればいい?

断ると怒鳴る、物に当たる、部屋にこもって口をきかなくなる。そんなときこそ、伝え方が大切です。

はやし先生
はやし先生:

子どもが「暴れたら言うことを聞いてもらえる」と学習してしまうと困るので、どんな行動をとっても「これはできないよ」と伝えて、その場を少し離れるのが大事かなと思います。身の危険があるときは見てあげなければいけませんが、そうでないときは離れて、落ち着いてきたころに気持ちを伝えてフォローするのが大事です。

ポイントは、短く、はっきり、冷静に伝えること。「それはできない」とはっきり伝えればいいと思います。理由は長く説明しないほうがいい。荒れているときに長々と説明しても、入らないからです。

それから、「あなたが嫌いだから断るのではない」ことも、きちんと伝えてあげると安心につながると思います。

はやし先生
はやし先生:

怒鳴られたり、物に当たられたりしても、そのことには反応せず、親御さん自身と子どもの安全を確保して距離をとるのが大事です。「あなたが大事」ということと、「それはできない」ということを分けて伝えるのが、子どもを傷つけない断り方かなと思います。

「この子に嫌われるかも」「このままで大丈夫かな」と不安になって、断るのがつらい気持ちは、とてもよくわかります。でも、今の子どもの状態だけで判断するのではなく、どんな子になってほしいかも少し念頭に置きながら、冷静に、できないことはできないと伝えられるといいのかなと思います。

断ると荒れるときはやし先生の話のポイント
伝え方短く、はっきり、冷静に。「それはできない」
理由長く説明しない(荒れているときは入らない)
気持ち「あなたが嫌いだから断るのではない」と伝える
荒れたら反応せず、安全を確保して距離をとる。落ち着いたらフォロー

子どもが暴れたり物に当たったりするときの安全確保は、不登校の子の暴言・暴力への対応は?で詳しく伺っています。

夫婦で厳しさがばらばら。そろえたほうがいい?

お母さんは厳しくしようとしているのに、お父さんは甘い。夫婦で基準がそろわないときは、どうすればいいのでしょうか。

はやし先生
はやし先生:

考え方として、厳しい役割とフォローする役割が必要な場合もあるかもしれません。でも、子どもが要求を通すかどうかという場面では、ご夫婦ともに一貫した姿勢を示すのが大事なのかなと思います。

そうしないと、片方の言うことは聞くけど、片方の言うことは聞かない。相手や物、お金によって子どもが自分の行動を変える、というのは、今後の人格形成にもすごく影響を与えてしまうと思うので、そこの一貫性は、ご夫婦で足並みをそろえられたほうがいいと思います。

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ゴールド

はやし ゆか先生

公認心理師

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ゲームの時間を守らない・課金をせがまれるときは?

わがままの中でも特に多いのが、ゲームとお金の悩みです。

ゲームのルールは、どう決めて、どう守る?

はやし先生
はやし先生:

ルールは、親御さんが一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に決めるほうが、子ども自身も守りやすくなると思います。落ち着いているときに「何時までにしようか」と子どもの意見を聞いて決める。そして、決めた後は、そのつどの要求で変えないことも大事です。

「みんなもっとやってるよ」「〇〇くんの家ではもっとやってる」と言われても、「そうなんだ。でも、うちはこのルールでいくよ」と伝えられるといいと思います。

守れなかったときは、「約束はここまでだったよね」と淡々と伝えて、決めた対応を実行する。そうするとけんかにならず、エスカレートせずに済むのかなと思います。夜中まで続けて昼夜逆転してしまう場合も、「夜は何時まで」と決めることで、生活リズムが少しずつ整う部分もあると思います。

はやし先生は、「ゲームをやめたらお小遣い」「宿題をしたらゲーム」のような交換条件は、なるべく避けたほうがいいとも話します。

はやし先生
はやし先生:

交換条件を続けていくと、「やらされている」「親に自分がコントロールされている」という気持ちが育ちやすくて、自分のために、自分で切り替えよう、という力がつきにくくなると思います。

それから、できなかったことに目が行きがちですが、うまくできた日には「自分で終わらせられたね」と、事実を認める一言を付け加えてあげる。漠然と褒めるより、「何時までの約束をきちんと守れたね」と具体的に伝えるほうが子どもにわかりやすく、良い行動が強められて、次も頑張ろうという気持ちにつながると思います。

ルールの話し合いがうまくいかないときは、「場面」を工夫するのも一つです。

はやし先生
はやし先生:

親子の関係が緊張状態だと、話し合いもうまくいかないと思います。話し合いの前に、おいしいものを一緒に食べたり、トランプやボードゲームをしたりして、空気がなごんだ、リラックスした状態で話し合いを始めるのもひとつだと思います。そのほうが子どももルールを受け入れやすくなりますし、「あなたの意見を尊重しようとしている」という親の気持ちも伝わりやすいと思います。

ゲーム・スマホのルールについては、ゲームのルールを守らない子への対応でも別の先生に伺っています。

課金など、お金をせがまれたら?

はやし先生
はやし先生:

お金や物で交換条件をするやり方を続けると、子どもは「お金がないと動けない」、あるいは「親の求めに応えることで愛してもらえる」と、間違って学習してしまうことがあると思います。それに、人間の要求は本当に無限なので、最初は満足していた要求もどんどん大きくなって、親御さんが対応できないものになるかもしれません。

ダメなものはダメ、できないことはできない、と線引きをしたうえで、お金の使い方を一緒に考える機会にされるといいと思います。たとえば「お小遣いの範囲なら、これは買えるよね」「お手伝いをすると、この金額は渡せるよ」など。要求したから与えるのではなく、将来の仕事の対価なども念頭に置きながら、子どもの役に立つお金の学びを一緒にしていかれるといいのかなと思います。

断った後、「かわいそうなことをした」と思ってしまったら?

線を引いたあとで、罪悪感に苦しむ親御さんもいます。

はやし先生
はやし先生:

ご自分の中で、なぜそれを「かわいそう」と思ったのか、少し考えてみられるといいかもしれません。

その場の感情に流されるのではなく、「あの子が悲しそうな顔をしたから、私はつらいと思っているけれど、この子の将来を考えたら、今の対応のほうがいいんじゃないか」と整理できると、親御さん自身も自信を持って対応できると思います。自分を責めたり罪悪感を持ったりしているときこそ、少し冷静に、自分の気持ちを整理する時間を持つことも必要かなと思います。

わがままの中には、「こんな自分でも見捨てないか」を確かめる試し行動が混ざっていることもあります。見分け方や声のかけ方は、不登校の子の試し行動とは?で詳しく伺っています。

不登校の子の親御さんへ、はやし先生からのメッセージ

最後に、子どものわがままに悩む親御さんへ、はやし先生のメッセージです。

はやし先生
はやし先生:

そう悩まれるのは、子どもに真剣に向き合っておられる証拠だと思います。まずは、ここまで努力されたご自分を褒めて、認めてあげてほしいなと思います。

子どものわがままの裏には、不安や自信のなさがあると思います。迷ったときは、次の3つを思い出してください。

1つ目、気持ちは受け止める。要求は、聞けるものと聞けないものをきちんと分ける。2つ目、物やお金で動かさず、できないことは冷静に「できないよ」と伝える。3つ目、愛情は、何でもしてあげることではなく、言葉や態度で日常的に伝える。

線引きは、子どもを突き放すことではありません。ぶれずに関わり続けることで、子どもは「この人は絶対に離れていかないから大丈夫」と安心できるようになり、わがままも減っていくのかなと思います。完璧に対応できなくても大丈夫です。うまくいかなかったときは、自分を責めずに「さっきはごめんね、大事に思っているからね」と伝えてあげてください。迷ったり疲れたりしたときは、ぜひ専門家を頼ってください。

笑顔で話すはやし ゆか先生
「愛情は、何でもしてあげることではない」

わがままに応え続けるのも、突き放すのも、どちらもつらいものです。はやし先生の話から見えてくるのは、「気持ちには寄り添い、要求には線を引く」という、その間の道です。基準を先に決めて、ぶれずに続ける。それが、子どもにとって「何があっても離れていかない」という安心につながっていきます。

よくある質問

Q. 不登校の子のわがままがエスカレートするのはなぜ?
A. はやし先生は、不登校の子は自信を失い不安を抱えていることが多く、その不安がわがままに見える行動として出てくると話しています。また、断ると不機嫌になったり暴れたりするのが怖くて聞き続けると、子どもは「押せば通る」と学習してしまい、要求がさらに大きくなりやすいそうです。
Q. わがままな要求の線引きは、どう決めればいい?
A. はやし先生のすすめるポイントは3つです。①「夕方5時までなら買い物を考える」「何百円まで」など、時間や金額の基準を先に決める、②その場の気分や機嫌で基準を変えない、③物やお金で機嫌をとらない。この基準は、子どもが落ち着いているときに前もって伝えておくと、衝突が減るそうです。
Q. 子どもに「課金したいからお金をちょうだい」と言われたら?
A. はやし先生は、ダメなものはダメと線を引いたうえで、お金の使い方を一緒に考える機会にすることを勧めています。「お小遣いの範囲ならこれは買える」「お手伝いをしたらこの金額を渡せる」など、要求したから与えるのではなく、将来の仕事の対価なども念頭に置いた学びにするとよいそうです。

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ゴールド

はやし ゆか先生

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