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不登校ミーツ

不登校で勉強しない・勉強したくないと言われたら? 発達特性のある子の勉強の考え方を公認心理師が解説

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 学校の勉強を完璧にこなすことが正解ではない。学校の勉強の形でなくても、生きる力を得る方法はたくさんある(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 「勉強したくない」の一言には、マス目が小さくて書くのが大変、計算がわからない、教室がざわざわして嫌、反復がめんどう……とさまざまな理由がある。「じゃあしなくていいよ」で終わらせず、まず理由を一緒に確かめる。
  • 好きなことには集中できるのに勉強には集中できないのは、やる気だけの問題とは限らない。苦手でつまずいている、音が気になるなど、集中を妨げている原因と、集中しやすい環境を探す。
  • 本人の意思を尊重することと、親が何もしないことは違う。「何ならやれそう?」を一緒に探し、本人が選べる選択肢を親が用意する。

動画で見たい方はこちら(17:06)

「学校に行かないなら、せめて家で勉強だけはしてほしい」

でも本人は教科書を開こうともしない。声をかければ「勉強したくない」。このまま勉強しないで、遅れはどうなるの、と不安になる親御さんは多いと思います。かといって「しなくていいよ」と言ってしまっていいのかもわからない。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんが不登校になったときの勉強との向き合い方を伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

不登校中に勉強しないままで大丈夫?

山岸先生の答えは、「学校の勉強を完璧にこなすことが正解では全然ない。学校の勉強の形で頑張らなくていい」というものでした。

かほ
かほ:

不登校中の勉強についてはどうでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

本当によく聞かれるところですね。学校の勉強は「基礎学力」とも言われるので、基礎として大事にしたいというのはもちろんですし、私も大事にできるならしていきたいと思っています。

でも、学校の勉強ができなかったらどれだけ困るかというと、実は割り算がわからなくてもうまくいっている大人はたくさんいますし、江戸時代と室町時代のどっちが先だったかわからなくても、やってきている人もたくさんいます。

だから、学校の勉強を完璧にこなすのが正解では全然ないと思います。

話す山岸佳織先生
「学校の勉強の形で頑張らなくていい」と山岸先生

では、勉強の代わりに何を見ればいいのか。山岸先生が例に挙げたのは、ゲームの攻略本です。

山岸先生
山岸先生:

たとえば、本人がゲームを好きなら、ゲームの攻略本をしっかり読み込んでいることがあります。攻略本って、結構難しいんですよね。フローチャートになっていて、「こうなったときはこっちへ行って、こうなったときはこっち」と。

そういう難しいものを読み込めているお子さんなら、今身につけているのは算数ではないかもしれないけれど、数学的な、順番を理解する力は、ここで身につけられているかもしれない。

学校の勉強からスタートしなくても、その子が生きる力を得るための方法はたくさんあるので、学校の勉強の形で頑張らなくていいと思っています。

「勉強したくない」と言われたら、「しなくていいよ」でいい?

「勉強したくない」の一言で「じゃあしなくていいよ」と終わらせてしまうのは、とてももったいないと山岸先生は言います。まずは、なぜ勉強したくないのかを一緒に確かめることが先です。

かほ
かほ:

これもすごくよく聞かれるんですが、子どもが「勉強したくない」と言ったとき、親として「勉強しなくていいよ」と言ってしまっていいのか。どう対応すればいいのか悩む方は多いと思います。

山岸先生
山岸先生:

「勉強したくない」と言ったときは、なんで勉強したくないのかを、先に一緒に確認できるといいと思います。

たとえば、漢字ノートのマス目が小さくて書くのが大変だから、書き取り練習をしたくない、という意味の「勉強したくない」なのか。漢字はいいけど、計算が全くわからないから算数の時間が嫌で、もう勉強なんかしたくないのか。学校の教室のざわざわした中で、あんなところで勉強したくない、なのか。単純に反復作業がめんどくさくて、勉強というものはどれも面白くない、なのか。

その「勉強したくない」という一言の中にも、たくさんの要因があると思うんです。だから、「勉強したくない」と一言言った、じゃあしなくていいよ、としてしまうのは、とてももったいないと思います。

「勉強したくない」の中身の例考えられる困りごと
漢字ノートのマス目が小さくて、書くのが大変書くこと(作業)そのものの負担
計算が全くわからないから、算数が嫌特定の教科でのつまずき
教室のざわざわした中で勉強したくない音などの環境の負担
反復作業がめんどくさくて、どれも面白くない勉強のやり方が本人に合っていない

発達特性のあるお子さんの場合、書くことや特定の学習だけが極端に難しかったり、音などの刺激に疲れやすかったりすることがあります(詳しくは関連記事「理由がわからない不登校と発達特性」でも紹介しています)。「勉強したくない」の裏に、こうした本人の努力だけではどうにもならない困りごとが隠れていないかを見ていきます。

山岸先生
山岸先生:

なので、「何ならやりたい?」「何ならやれそう?」というところを一緒に探しながら、本人が決められるように、親が手助けをしていく。

その手助けの中には、学校の勉強をさせることだけではなくて、本人が興味を持てそうなもの、その興味を少し広げられそうなものを探していくことも入ります。それがとても大事だと思います。

好きなことには集中できるのに、勉強には集中できない。やる気の問題?

ゲームなら何時間でも集中できるのに、勉強となると全く集中できない。親から見ると「やる気の問題では?」と思えてしまいますが、山岸先生は「勉強だから集中できない」と片付けず、何が集中を妨げているのかを探してほしいと言います。

かほ
かほ:

好きなことには何時間でも集中できるのに、勉強には全く集中できない。親からするとやる気の問題なのでは、と見えてしまうと思うんですが、実際はどうなんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

集中って難しいですよね。集中に影響を与えるものには、たとえば環境でいうと、部屋の明るさ、静かさ、音楽、においなど、いろんなものがあります。環境によって集中が違う、というのは実感していただけることがあるんじゃないかと思います。

私も図書館で勉強するのが好きだったんですけど、たまたま図書館の窓が開いていたときに、目の前にマクドナルドがあって、ずっとすごくいいにおいがしていたんです。人もそんなにいないいつもの図書館なのに、ずっとマクドナルドのにおいがして、お腹がすいて、集中できなかったということもあります。

身ぶりを交えて話す山岸佳織先生
図書館とマクドナルドのにおいのエピソードを話す山岸先生
山岸先生
山岸先生:

それに、興味のあることか、ないことかによっても、集中の深さは全然違います。

お子さんが勉強に集中できないのは、もしかしたらどこかに苦手なところがあって、つまずいているからかもしれない。あるいは、ゲームのときはヘッドホンをしていて周りの音が聞こえないけれど、勉強中はいろんな音が気になって集中できないのかもしれない。

本当に「勉強だから集中できない」と片付けてしまうのではなく、何が原因で集中できたり、できなかったりするんだろう、というところから、そのお子さんが集中しやすい環境を探っていくことを最初にしていただけるといいと思います。

勉強に集中しやすい環境は、どう見つける?

ヒントになるのは、お子さんがすでに集中できていることです。山岸先生は、ゲームに集中しているときに「ゲームのどんなところが、この子の集中力を引き出しているのか」を考えてみてほしいと言います。

かほ
かほ:

できていることからヒントを得る、というのは、意外と思いつかないことなので大事なポイントですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。勉強も、たとえば対戦が好きなお子さんなら、お父さん・お母さんと一緒にやっていくほうが、意外と集中できるという子もいます。

黙々とパズルゲームのように解いていくのが好きなお子さんなら、「3分で解けるかな」と時間を決めて、自分でタイムトライアルをするほうが集中できる、という子もいます。

お子さんがゲームで集中しているなと感じるときに、ゲームのどんなところがこの子の集中力を引き出しているんだろうと、一度考えてみてもいいと思います。

ゲームでの好み勉強への生かし方の例
対戦が好き親と一緒にやってみる
パズルゲームを黙々と解くのが好き「3分で解けるかな」と時間を決めてタイムトライアルにする

ゲームとの付き合い方(やめさせると癇癪を起こす、終わりの時間を守れないなど)については、関連記事「不登校でゲームばかり、やめさせると癇癪になる子への対応は?」で詳しく紹介しています。

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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勉強するかどうか、本人の意思はどこまで尊重する?

「本人が勉強したくないと言っているなら、その意思を尊重すべき?」という迷いに、山岸先生は「本人の意思を尊重することと、親が何もしないことは全然違う」と答えます。

かほ
かほ:

学校に行く・行かない、勉強する・しない。こういったところで、本人の意思をどこまで尊重して、親はどこから働きかければいいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

すごく迷われるところだと思います。迷うのは正解がないからでもあるので、必ずこれが正しい、ということではないんですが、本人の意思を尊重することと、親御さんが何もしないことは全然違うと思います。

まずは本人と、今何がしんどいのか、どうなったらやってみようと思えるのか、やりたいとまでは思えなくても、どうやったら苦痛ではないのか、といったことを話せる関係になることが一番だと思います。

そのうえで、「こういうこともできるけど、どうする?」と、本人が選べる選択肢を親御さんのほうで用意して、聞いてあげることがとても大事だと思います。

かほ
かほ:

「しなさい」でも「しなくていい」でもなく、一緒に選択肢を考える、ということですね。

学校に戻ったときの勉強のつらさ(黒板が見えない、板書のスピードについていけないなど)については、席の位置やタブレットでの撮影といった配慮を学校に相談できることもあります。詳しくは関連記事「合理的配慮とは?」で紹介しています。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、お子さんの勉強や将来に不安を感じている親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

発達特性のあるお子さんは、脳の使い方そのものが、定型発達の子と少し違うというのが、特性が出る原因でもあります。

だから、違う仕組みのものを、みんなと同じような結果を出すことに合わせるのではなくて、その子の頭の使い方に合わせた、その子の生き方を見つけていくことを大切にしてほしいなと思います。

山岸先生
山岸先生:

障害があるから将来どうしよう、お先真っ暗だ、ということではありません。自分ってどんな人なんだろうと自分で知って、自分に合った方法や、自分が使える支援をたくさん知っていく。そうやって、自分で生きていく力をつくっていくことが大事です。

笑顔で話す山岸佳織先生
「その子の頭の使い方に合わせた生き方を」

「勉強したくない」は、怠けのサインではなく、どこかに困りごとがあるというサインかもしれません。教科書を開かせることより先に、「何がしんどいのか」「何ならやれそうか」を一緒に探すところから始めてみてください。

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