
不登校で人と関わるのが怖い子に、無理に人と会わせるべき? 病院に行くべき目安も公認心理師が解説
公開 不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 不登校になって人と関わるのを怖がる子に、無理にでも人との接点を作るのはしないほうがいい。友達がたくさんいるより、安心して話せる人が1人でも2人でもいるほうが大事なケースは多い(公認心理師・山岸佳織先生、発達特性のある子の支援の経験から)。
- 家は、人と関わるためのエネルギーを回復する「安全基地」。向かい合って話すより、隣で同じものを見る関わり方を。
- 本人が今関われなくても、学校の先生や地域の相談員など「本人のことを知っている人」を保ち、話したくなったら話せる選択肢を残しておく。
- 命に関わりそうなとき(死にたい・消えてしまいたいなど)は様子見をせず医療へ。食事がとれない状態が続く、体重が減る、強い不安や抑うつが見られる、誰とも関われない状態が長期間続くときも、医療機関への相談を考えるサインになる。
「学校に行かなくなってから、人に会うのを怖がるようになった」
友達からの連絡にも出ない。親戚が来ると部屋から出てこない。外に出ることもほとんどない。このままずっと誰とも関わらずに過ごすのでは……と心配になる親御さんは多いと思います。
無理にでも人と会わせたほうがいいのでしょうか。それとも、そっとしておけばいいのでしょうか。病院に連れて行ったほうがいいのは、どんなときなのでしょうか。
今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの支援の経験から、不登校で人と関わるのが怖くなった子への関わり方と、医療機関への相談を考えたいサインを伺いました。

不登校で人と関わるのが怖い子に、無理にでも人との接点を作るべき?
山岸先生の答えは、「無理にでも、はしないほうがいい」。無理をすると、どこかで必ずほころびが出るからです。
不登校になってから、人と関わることを強く怖がるようになった。この場合、無理にでも人との接点は作ったほうがいいでしょうか。
まず、無理にでも、はしないほうがいいですね。無理にとなってしまうと、どこかで必ずほころびが出るので、お子さんご本人や親御さんがかなり無理をして「接点を作らなきゃ」「増やさなきゃ」「維持しなきゃ」というのは、しないほうがいいと思います。
「友達100人できるかな」じゃないですけど、100人友達がいるよりも、安心して「この人だったら話せるな」という人が、1人でも2人でもいるほうが大事なケースはたくさんあります。
誰かと会ったほうがいい、外に出たほうがいい、ということではないんです。
その子が今、学校に行くこと自体に疲れてしまっている、人間関係全体に疲れてしまっている、「誰かと会おうよ」ということ自体が嫌になってしまっている。そういうときに「たくさんの人と会っていこうよ、その中の誰かとつながれるかもしれないよ」というのは、ある意味とてもハードルの高いことなんです。
ハードルの高いことを促し続けると、そもそも誰かと話をすること自体が嫌になってしまうこともたくさんあります。
「扉だけ開けておく」という考え方
なので、無理に促すというよりは、今お子さんが誰とだったら話せるのか、それとも誰とも話せないくらい、まだ回復していない状態なのかを見極めながら、扉だけ開けておく。
「この人とこの人だったら話せるよ。話したいと思ったら、話せるよ」という形で、開いておく。無理にでもというよりは、そういう考え方をしてもらえるといいかなと思います。
人と関わるのが怖い時期、家ではどう過ごせばいい?
家は、人と関わるためのエネルギーを回復する「安全基地」。向かい合って話をするより、子どもの隣で同じものを見るような関わり方がいい、と山岸先生は話します。
そうなると、家ではどんなふうに過ごすのがいいでしょうか。
家はやっぱり、お子さんにとって一番の安全基地であってほしいので、本人にとって人と関わるためのエネルギーを回復する場所、と位置づけていてほしいなと思います。
「子どもとどんな会話をしたらいいですか?」と聞かれることもあるんですけど、必ずしも会話している必要はなくて。同じ場所で一緒にご飯を食べるとか、同じテレビを見ているとか。なんとなくお子さんが楽しそうなときに「楽しいね」と言ってみるとか、お子さんが熱中しているときに、何をしているのかなと横で見ているとか。
どちらかというと、お子さんと向かい合って話をするのではなく、お子さんの隣で、同じものを見ているというような目線で、ご家庭で関わっていただくのがいいかなと思います。

不登校中の家での過ごし方は、不登校の家での過ごし方の記事でも詳しく紹介しています。
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誰とも関わらない時間が続くのが心配。親にできることは?
本人が出られないからといって、何もしないわけではありません。山岸先生は、親が「本人がつながりうる選択肢」をつないでおくことを勧めます。
このまま誰とも関わらない時間が続くと、それはそれで心配になってしまう親御さんも多いと思います。どう考えたらいいでしょうか。
本人が出られないときに、だから何もしない、ではなくて。理想を言えば、親御さんが、本人がつながりうる選択肢をつないでおいてあげることができるといいかなと思います。
本人は今関われないかもしれないけれど、本人のことを知っている人が、たとえば学校の先生にいたり、地域の相談員さんが知っていてくれたり、幼なじみの誰々さんが知っていてくれたり。本人は今関われないけれど、本人のことを知っている人がいて、本人にとって選択肢が残っている状態を保ってもらえるといいなと思います。
「今は喋りたくない。それはそれでいい。でも、話したいなと思ったら、お父さんお母さんも聞くし、お父さんお母さんじゃなくても、先生にこうしたら話すこともできるし、匿名で電話で相談したいと思ったら、電話の相談もあるよ」。
そんなふうに、いろんな選択肢がある状態を残しておいてあげるのがいいかなと思います。
「社会参加」は学校や外出だけではない
山岸先生は別の場面で、子どもが今どんな状況にあるのかを広い目で見てほしい、とも話しています。
学校に行っていないから社会参加できていない、外に出られないから社会参加できていない、ということではなくて。たとえばオンラインの世界でお友達がたくさんいるかもしれないし、自分の世界をしっかり作っている途中なのかもしれません。
お子さんの社会参加を、学校だけに絞るのではなく、広い目で見てあげられるといいかなと思います。
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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
不登校の子を病院に連れて行くべき目安は?
山岸先生が「様子見をせず、医療機関につないでほしい」と話したのは、次のようなときです。まず、命に関わりそうな場面があったら、迷わず医療へ。そのうえで、食事と睡眠の状態や、強い不安・抑うつ、誰とも関われない状態の長さも目安になります。
ここで紹介するのは、山岸先生が普段保護者の方にお伝えしている目安です。お子さんの状態によって判断は変わるので、迷ったときは早めに医療機関や専門家に相談してください。
様子を見る段階、見守る段階、医療につなぐべき段階。この見極めが大事になってきますね。
そうですね。一つは、命に関わりそうな場面があったときには、もう様子見をしないほうがいいです。
たとえば「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」という、うつにつながるような気持ち。自殺について考える、消えてしまいたいと思っている、という状態のときは、迷わず医療につながってほしいと思います。
あとは、ご飯が食べられているか、睡眠が取れているか。この2つも結構大事です。体重が減っているな、全然ご飯を食べられていないな、水分を取っていないな、と。
どのくらいの期間かは人によりますけど、私は2週間とお伝えしています。ご飯が食べられないのが2週間続いたら「病院に行きませんか」とお伝えすることが多いです。
体重や見た目は、もともと細い方だと変化が見えにくかったりします。でも、産毛が濃くなってきたというのも、栄養が足りていないときのひとつのサインです。ちょっと産毛が濃くなってきたかな、肌がカサカサしている感じが続くな、というようなときにも、医療機関を受診してほしいなと思います。

また、誰とも関われない状態や強い不安についても、山岸先生はこう話しています。
それが、たとえば1年、2年といった長い期間、もう誰とも関われないとか。あとは強い不安感、たとえば誰かに見られるんじゃないかと思ってカーテンを全部閉め切って、ネットのカメラもオフにして、誰かに見られることが怖い、誰かが自分を呼びに来るんじゃないかという不安がある。
それから、こんな状態が続くのがしんどくて消えてしまいたい、というようなうつっぽい様子が見られたときには、そこはもう様子見をしないで、医療機関につないでほしいところだなと思います。
| こんなとき | 山岸先生の目安 |
|---|---|
| 「死にたい」「消えてしまいたい」と言う、自殺について考えている | 様子見をせず、迷わず医療へ |
| ご飯が食べられない・水分をとっていない | 2週間続いたら「病院に行きませんか」と伝えている |
| 体重が減ってきた、見た目にも痩せてきた | 医療機関の受診を |
| 産毛が濃くなってきた、肌のカサカサが続く(栄養不足のサインのことがある) | 医療機関の受診を |
| 誰かに見られるのが怖い、誰かが呼びに来るのではと強く不安がる | 様子見をせず医療機関へ |
| 1年、2年といった長い期間、誰とも関われない | 医療機関へつなぐことを考える |
命に関わる差し迫った危険があるときは、受診の予約を待たずに、救急(119)や各地の相談窓口を頼ってください。
どこに相談すればいい?
病院といっても、どこに行けばいいかわからない、ハードルが高い、と感じる方も多いと思います。山岸先生は、子どもの発達について相談できる場所として、小児科、児童精神科、発達外来を掲げている小児科などを挙げていました。病院がハードルが高いときは、市役所など自治体の発達相談で、「医療につないだほうがいいか」「近くに通える病院があるか」を相談することもできるそうです。
相談先については、子どもの発達が気になったときの相談先の記事でも詳しく紹介しています。
不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ
最後に、人と関われなくなったお子さんを見守る親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。
毎日大変な中、本当にお疲れさまです。私が伝えたいのは、学校に行けていないときは、何も成長していないということではない、ということです。
学校に行けない日が続くと、ご家族もご本人も「このままでいいんだろうか」「自分だけ置いてけぼりになってしまった」という寂しさや焦り、挫折感など、いろんな気持ちを味わわれると思います。でも、学校に行っていない時期にも、お子さんはご本人なりにいろんなことを考えたり、将来どう生きればいいんだろうと考えたりしています。その前段階として、自分の心と体のエネルギーを回復させようとしている時期でもあるんです。
親御さんが不安になるのは当然のことです。その不安を、一人でなんとかしなきゃと思わないでほしいなと思っています。
親御さん自身が安定して生活を回せる状態を保つことは、それ自体が立派なお子さんへの支援にもつながります。今すぐ答えを出そうと焦ってしまう気持ちは当然だと思いますが、焦らなくて大丈夫です。お子さんとご家族にとって、どう生活するのが負担がないのか、これから先につながるのかを、一緒に考えていきたいと思っています。

人と関わるのが怖くなった子にとって、家は、もう一度人とつながるためのエネルギーをためる場所です。無理に会わせるより、扉を開けておくこと。そして、命や体に関わるサインが見えたときは、様子見をせずに医療につなぐこと。迷ったときは、一人で抱えずに相談してみてください。
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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
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