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不登校ミーツ

不登校の家での過ごし方|何もしないで大丈夫? 見守るだけでいい? 発達特性のある子の場合を公認心理師が解説

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 発達特性のある子の不登校でも、家での過ごし方の出発点は同じ。まず「安心と安全」の回復を最優先にし、学校に行っていない分を家で頑張らせすぎないことが大切(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 学校に行けなくなった時期は、本人が思う以上に心と体のエネルギーが減っている。生活リズムなど生活の基盤を整え、そのうえで「ちょっとできた」「ちょっと楽しかった」を増やしていく。
  • 何もしないでいいわけではないが、何にも興味が持てない時期に無理にやることを探させる必要はない。「今疲れてるんだね」くらいの気持ちで構える。
  • 家は「エネルギーを回復する場所」。向かい合って話すより、隣で同じものを見る関わり方がおすすめ。ゲームやオンラインの世界も、否定せずに隣で一緒に見る。

動画で見たい方はこちら(17:06)

「学校に行かない日、家で何をさせればいいんだろう」

朝から晩まで家にいて、ゲームや動画ばかり。生活リズムも崩れてきた。このまま何もしないで過ごさせていて大丈夫なのか、それとも見守るだけでいいのか。不登校が始まると、多くの親御さんがここで迷います。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんが不登校になったときの家での過ごし方と、親の関わり方を伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

不登校の子は、家でどう過ごせばいい? まず何を優先する?

山岸先生の答えは、「まずは安心と安全の回復を最優先に。学校に行っていない分、家で頑張らせすぎないこと」です。これは発達特性があってもなくても同じだといいます。

かほ
かほ:

発達特性のあるお子さんの不登校では、一般的な不登校の対応と比べて、親が意識したほうがいいことはありますか?

山岸先生
山岸先生:

発達特性があろうとなかろうと、不登校の状態のお子さんには、まず安心と安全の回復・確保を最優先にしていただきたいです。それはどんなお子さんでも同じですね。

そのうえで、発達特性のあるお子さんの場合は、「行きたくない」「行きたいけど行けない」の裏に、特性からくる困難が隠れているかもしれない、という目を持っていただけるといいと思います。

かほ
かほ:

では、家では実際にどんな過ごし方を意識するといいでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

一番大事なのは、「学校に行っていない分、家で頑張りなさい」とさせすぎないことだと思います。

みんなが学校に行っている時間は、家でこれだけ努力しなさい、ドリルを全部終わらせなさい。友達が学校にいる時間は、オンラインゲームは絶対にしてはいけない。ある程度の制限は必要かもしれませんが、そうやってお子さんを頑張らせようとしすぎないことが一番大事です。

話す山岸佳織先生
「家で頑張らせすぎないことが一番大事」と山岸先生

山岸先生は、その理由をスポーツのけがにたとえて説明してくれました。

山岸先生
山岸先生:

アスリートを目指していた子がけがをしたとき、アスリートになるためだからと、けがをしたまま頑張ってトレーニングするかというと、しませんよね。まずはけがを治すところから始めましょう、となるはずです。

不登校も同じで、将来どうしようと焦ったり、不安になったりすると思いますが、まずは体と心を整えることを優先していくのが大事だと思います。

かほ
かほ:

学校に行くかどうか、社会に適応できるかどうか以前に、人として回復して、楽しく一日を過ごせることがすごく大事なんですね。

生活リズムはどこまで整える? 親にできることは?

学校に行けなくなった時期は、本人が思っている以上に、心と体のエネルギーが減っている状態です。山岸先生は、まず生活リズムを整え、生活の基盤をつくるところからのスタートをすすめます。

山岸先生
山岸先生:

ちょこちょこ学校に行けているタイプの不登校だと、いつから不登校なのかがわかりにくいことも多いです。それでも、学校に行くのがつらくなった時期、行けなくなった時期は、本人が思っている以上に心と体のエネルギーがとても減っていることがあります。

なので、まずは生活リズムを整えて、生活の基盤を整えて、「安心・安全だ」という感覚を確保していくところからスタートするのがいいと思います。

そのうえで、学校に行っていない時間に、「ここならちょっとできた」「これはちょっと楽しかった」という気持ちを増やしていけるといいですね。

「本人の意思を尊重するなら、生活のことも本人に任せるべき?」と迷う親御さんもいるかもしれません。山岸先生は、本人が自分で決めていくことと、親が何もしないことは別だと話します。

山岸先生
山岸先生:

決める権利は本人にあるかもしれないけれど、親は環境を整えていくことができます。

たとえば昼夜逆転の生活がずっと続いていたら、どうしても不健康になってしまうので、朝の時間になったら「おはよう」と声をかけていく。「ご飯食べられてる?」と気にかける。食事と睡眠と、お風呂に入れているかという、生活の基本的なところがあまり崩れすぎないように声をかけていくのは、ご家族だからこそできる支援だと思います。

何もしないでだらだら過ごしていても大丈夫? 見守るだけでいい?

「何もしないで過ごすのがいい」わけではありません。ただ、エネルギーが残っていない時期に、無理にやることを探させる必要もない、というのが山岸先生の考えです。

かほ
かほ:

一方で、家で何もしないでずっとだらだら過ごしていて本当に大丈夫なのかな、と心配な親御さんもいると思います。このあたりはどう考えたらいいですか?

山岸先生
山岸先生:

今まで普通に学校に行っていた子が突然行けなくなったり、ちょこちょこ休んでいた子の休みがだんだん増えてきたりすると、「今日も行ってないの?」と、すごく不安になったり、将来どうするんだろうと焦ったりしますよね。その気持ちはとてもよくわかります。

何もせずにずっと過ごすのがいい、ということではなくて、本人が「これならやれそう」「少なくなったエネルギーの中でも、これはちょっとやってみたい」と思えるものを、少しずつ探していくのが大事だと思います。

山岸先生
山岸先生:

逆に、本人が「これならやれそう」というものも見つからない、何にも興味が持てない、という時期もあります。そういうときはまだそこまでエネルギーがない状態なので、無理に探させるのではなく、焦らずに、「今疲れてるんだね」というくらいのゆったりした気持ちで構えていただくのがいいと思います。

話す公認心理師の山岸佳織先生
「『今疲れてるんだね』というくらいのゆったりした気持ちで」と山岸先生

では、そのまま見守り続けていいのか、いつ動き出せばいいのか。ここはお子さんによって全く違うと山岸先生は言います。

山岸先生
山岸先生:

いつまでそのままでいればいいのか、と悩まれると思います。でもそのタイミングは本当にお子さんによって全然違いますし、どんなサインが出てきたら学校の話をしてもいいのか、というのも、お子さんによっても、学校の雰囲気によっても変わってきます。

そういうところは、遠慮なく相談していただけるといいなと思います。

子どもの様子親の構え方の目安
何にも興味が持てない、ぐったりしているまだエネルギーがない時期。やることを探させず「今疲れてるんだね」と構える
「これならやれそう」「ちょっとやってみたい」が出てきた本人と一緒に、できそうなことを少しずつ探す
家で元気に過ごせる日が続いている本人が「行ってみたい」と言ったタイミングで、小さな一歩を一緒に考える(下の見出しで紹介)

家で親はどう関わればいい? 会話がなくても大丈夫?

山岸先生は、家を「人と関わるためのエネルギーを回復する場所」と位置づけてほしい、と話します。会話は必ずしも必要なく、向かい合うより、隣で同じものを見る関わり方がおすすめだそうです。

かほ
かほ:

家ではどんなふうに過ごすのがいいか、ポイントはありますか?

山岸先生
山岸先生:

家は、お子さんにとって一番の安全基地であってほしいので、本人にとって人と関わるためのエネルギーを回復する場所、と位置づけていてほしいなと思います。

「子どもとどんな会話をしたらいいですか?」と聞かれることもあるんですが、必ずしも会話している必要はないんです。同じ場所で一緒にご飯を食べる、同じテレビを見る。なんとなくお子さんが楽しそうなときに「楽しいね」と言ってみる。お子さんが何かに熱中しているときに、何をしているのかなと横で見ている。

どちらかというと、お子さんと向かい合って話をするのではなく、お子さんの隣で同じものを見ている、という目線で関わっていただくのがいいと思います。

かほ
かほ:

「何か話さなきゃ」と思うと、親のほうも構えてしまいますよね。隣にいるだけでいい、と思えると少し楽になります。

身ぶりを交えて話す山岸佳織先生
「向かい合うより、隣で同じものを見る」

ゲームやオンラインばかりのときは、どう見ればいい?

「学校に行っていない=社会参加できていない」とは限りません。山岸先生は、お子さんの今の状況を観察して知ること、そしてゲームやオンラインの世界を頭ごなしに否定せず、隣で一緒に見ることをすすめます。

山岸先生
山岸先生:

まずは、お子さんが今どんな状況なのかを、ご家族が知れるようにしておくことが大事です。心理学の言葉でいえば「行動観察」ですね。

朝何時に起きているか、ご飯をどのくらい食べたか。どこまでなら外に出られるのか。学校には行けないけど、家の中なら自由にいられるのか。家にこもっているけれど、オンラインで誰かとつながっているのか。そういうことも含めて見ていきます。

山岸先生
山岸先生:

学校に行っていないから社会参加できていない、外に出られないから社会参加できていない、ということではないんです。オンラインの世界に友達がたくさんいるかもしれないし、自分の世界をしっかり作っている途中なのかもしれない。

お子さんの社会参加を、学校だけに絞らず、広い目で見てあげられるといいと思います。

かほ
かほ:

お子さんがオンラインの世界に入り込んでいると、親としては依存しているのかな、引きこもりになるんじゃないかな、といろいろ想像してしまいます。

お子さんの世界を、お子さんの物差しで見ていく姿勢が大事になりそうですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。お子さんにとって、ご家族が敵にならないでほしいと思っています。

今のお子さんにとってオンラインしかないときに、ご家族がオンラインを否定してしまうと、お子さんにとっては自分の世界を否定してくる存在になってしまいます。どうしても敵になりやすい構図が生まれるんです。

だからといって、昼夜逆転していても何もしなくていい、というわけではありません。お子さんの世界がどういう世界なのかを、敵にならないように、お子さんの隣にいて一緒に見ていく。そうしていただけるといいと思います。

ゲームをやめさせると癇癪を起こす、終わりの時間を守れない、といったときの具体的な対応は、関連記事「不登校でゲームばかり、やめさせると癇癪になる子への対応は?」で詳しく紹介しています。

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

親子の「今」を大切に、一緒に考えます

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学校に行く・行かないは、毎朝本人に聞いたほうがいい?

「今日は学校どうする?」と毎朝本人に判断させることが、かえって負担になることは結構ある、と山岸先生は言います。

かほ
かほ:

本人の意思を尊重しようと、毎朝「今日は学校どうする?」と聞くご家庭もあると思います。それが逆に負担になることはありますか?

山岸先生
山岸先生:

結構あると思います。特に、家では元気に過ごせていて、日中はすごく調子がよさそうなのに、朝になるとぐずぐずしている。そこに「どうする?」と聞く。あるいは、午後には「明日は行こうかな」と言っていた子に、朝「どうする?」「昨日行くって言ってたじゃん」と言っても、「やっぱりお腹が痛い」となる。そういうことはよくあります。

毎日毎日聞かれると、本人は「行ってみる」と言って、でもやっぱり行けなかった、という失敗を積み重ねてしまうことにもなるんです。

山岸先生
山岸先生:

以前関わったお子さんでは、本人が「ちょっと学校に行ってみようかな」と言ったタイミングで、午後3時、もう学校に誰もいない時間だけど行ってみる。校門まで行ってみる。次は10時くらいに行ってみる。そうやって、本人が「行ってみる」と言ってくれるのを少し待ってみるのもいいと思います。

家で元気な状態が続いていて、本人が行ってみたいと言ったなら、日曜日にちょっと行ってみる。「学校までちゃんと歩いてこれたね」というところがスタートでもいいと思います。

学校に行くかどうかは、学校に相談するかどうかも含めて、まず「今何がしんどいのか」を本人と話せる関係づくりから、と山岸先生は話します。そのうえで「先生と話してみることもできるけど、どうする?」と、本人が選べる選択肢を親が用意して聞いてあげることが大切だそうです。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、今まさにお子さんの不登校で悩んでいる親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

お父様、お母様、ご家族の皆様、毎日大変な中、本当にお疲れさまです。

お伝えしたいのは、学校に行けていないときも、何も成長していないわけではないということです。

学校に行けない日が続くと、ご家族もご本人も「このままでいいんだろうか」「自分だけ置いてけぼりになってしまった」と、寂しさや焦り、挫折感など、いろんな気持ちを味わわれると思います。でも学校に行っていない時期にも、お子さんはお子さんなりにいろんなことを考えたり、将来どう生きればいいんだろうと考えたりしています。その前の段階として、自分の心と体のエネルギーを回復させようとしている時期でもあるんです。

山岸先生
山岸先生:

親御さんが不安になるのは当然のことなので、その不安を一人で何とかしなきゃ、と思わないでほしいです。

お子さんへの支援だけではなく、親御さん自身が安定して生活を回せる状態を保つこと。それ自体が、立派なお子さんへの支援にもつながります。

今すぐ答えを出そうと焦ってしまう気持ちは当然だと思いますが、焦らなくて大丈夫です。お子さんとご家族にとって、どう生活するのが負担がなく、これから先につながるのかを、一緒に考えていきたいと思っています。

笑顔で話す山岸佳織先生
「焦らなくて大丈夫です」

家で過ごす時間は、何もしていない時間ではなく、エネルギーを取り戻すための時間です。「何をさせるか」より先に、お子さんが家で安心していられるかどうかを見てあげてください。どこまで見守り、いつ次の一歩を考えるかに迷ったら、一人で決めずに相談してみてください。

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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