
発達検査は受けるべき? 種類と子どもへの伝え方、嫌がる・疲れ切っているときの考え方を公認心理師が解説【発達特性と不登校】
公開 不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 発達検査は「受けるべき・受けなくていい」で決めるものではなく、「その検査で何を知りたいか」がはっきりしているときに役に立つ(公認心理師・山岸佳織先生)。
- 検査は診断名をつけるためというより、困りごとがどこで・どう起きているのかを分解し、これからの支援を考えるための材料。WISCや田中ビネーのほかにも、検査は膨大な種類がある。
- 子どもには「困っているから病院へ」ではなく、「あなたの得意なところ・強みを探しに行こう」と誘う。本人が行けないときは、親だけで先に相談する方法もある。
- 疲れ切っているときは、無理に検査を受けさせないのも大切な判断。検査や診断がなくても支援は始められる。まずは生活を整え、健康を回復することを優先する。
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「発達検査、受けたほうがいいのかな」
学校に行けなくなったわが子に、もしかしたら発達の特性があるのかもしれない。そう感じたとき、多くの親御さんが迷うのが発達検査です。
受けたら何がわかるのか。子どもにはどう切り出せばいいのか。本人が嫌がったら、疲れ切っていて受けられそうになかったら、どうすればいいのか。
今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの不登校を前提に、発達検査を受けるかどうかの考え方と、子どもへの伝え方を伺いました。

発達検査は受けるべき? 受けたほうがいいのはどんなとき?
山岸先生の答えは、「受けるべき・受けなくていい、で決めるものではない。その検査で何を知りたいのかによって、検査が役に立つかどうかが変わる」というものでした。
発達検査について、受けたほうがいいのかな、と悩まれる親御さんも多いと思います。山岸先生はどう考えますか?
「受けたほうがいいですか」と聞かれて、「いいですよ」「受けなくてもいいですよ」とお答えするよりも、その検査で何を見たいのかによって、検査が有効かどうかが変わってくると思います。
たとえば、学習面でどこがつまずいているのかを確認したい。漢字の読み書きができない理由が、どの段階でつまずいているのかを知りたい。この子の頭の使い方は、どんなところが得意なんだろうと知りたい。
そんなふうに、その子のこれからの支援にどう活かしたいのかが明確な場合には、検査は非常に役に立つと思います。
検査を考え始めたら、まずは「この子の何を知りたいのか」を、親御さん自身の言葉にしてみるところから始めるとよさそうです。
発達検査は何のため? 診断名をつけるためのもの?
発達検査は、診断名をつけるためというより、お子さんの困りごとを分解して、どんな過程で起きているのかを知り、これからの支援を考えるための材料です。山岸先生は、診断名そのものについても「困りごとの特徴に名前をつけているだけ」と話します。
診断名をつけるためというよりは、その子の困りごとを分解して、どういうプロセスでその困りごとが起きているのかを分析するために使うもの、という感じでしょうか。
そうですね。心理検査でよく聞かれるのは、WISC(ウィスク)や田中ビネー、新版K式発達検査あたりで、耳なじみのある方も多いと思います。
でも、検査って本当に何千もの種類があるんです。言葉の流暢さを調べる検査、目の見え方を調べる検査、頭の中に情報を保持しておける時間を調べる検査……。
なので、「この検査を受けさせたい」というよりも、お子さんが今こんなことに困っている、というところから、この検査を受ければこれからの支援につながるかな、どう支援していくのがいいかな、と考える材料に使えるといいと思います。
よく名前が挙がる検査を、おおまかにまとめると次のとおりです(対象年齢は版によって異なります。どの検査を使うかは、困りごとに合わせて検査を行う専門家が選びます)。
| 検査名 | 対象のめやす | わかること(おおまかに) |
|---|---|---|
| WISC(ウィスク/ウェクスラー式の子ども用知能検査) | 5歳〜16歳 | 全体の知的な力に加えて、言語理解・ワーキングメモリ・処理速度などの指標ごとの得意・不得意(凸凹) |
| 田中ビネー知能検査 | 2歳〜成人 | 年齢に応じた問題を通して、知的発達の水準 |
| 新版K式発達検査 | 0歳〜成人 | 「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の領域ごとの発達の様子 |

山岸先生は、診断名との付き合い方についてもこう話していました。
診断は、困りごとの特徴に名前をつけているだけなんです。診断名がわかると、「こんなことで困っているのかな」と想像しやすくなるメリットはあります。
でも、たとえば同じASDのお子さんでも、空気を読みたいと思っているタイプの子もいれば、「空気は読めないよ」と開き直っているタイプの子もいます。コミュニケーションが苦手という特徴は同じでも、出方も結果も全然違ってくるので、診断名に振り回されずに、その子自身を見ていくことが大事だと思います。
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発達検査を子どもにどう伝える? 嫌がる子への誘い方は?
「あなたのここが困っているから病院に行こう」という言い方は、子どもが身構えやすい伝え方です。山岸先生がすすめるのは、「あなたの得意なところ、強みを探しに行こう」と前向きに誘うこと。本人が行けないときは、親だけで先に相談に行く方法もあります。
お子さんに発達検査を提案したいとき、どんなふうに声をかけたらいいでしょうか。
「あなたのここが困っているから、病院に行こう」という言い方だと、「嫌だ」「そんなに困ってないし」と身構えてしまうお子さんが多いと思います。
強がっちゃいますよね。
お子さん本人が行けないときには、親御さんだけで先に相談に行くのもありだと思います。親御さんが病院に行ってみて、この先生となら信頼関係を結べそうだなと思えたら、「先生が、あなたにも会いたいって言ってたよ。一緒に来てくれない?」という入り方もできます。
それから、検査を受けようという話になったときには、苦手なところをつぶす方法を探すんじゃなくて、あなたの得意なところ、あなたの強みを探しに行こう、と。それを活かせる形で学校を選んだり、学校にどうやって戻るかを考えたりする材料にしたいんだ、と伝える。
そんなふうに、お子さんのいいところ、得意なところを探しに行こうと誘うのも、ひとつ有効だと思います。
ネガティブに伝えるより、前向きな形で提案するほうが、お子さんも受け入れやすいですよね。
そうですね。「失敗した」「自分はダメだ」という挫折感でいっぱいになっているお子さんがすごく多いんです。そこで心理検査を受けて「やっぱり自分はバカだったんだ」と感じてしまうと、検査は怖いし、嫌なものになってしまう。やりたくないから適当に解いてしまう、というお子さんもいます。
でも本当は、検査はお子さんにとって怖いものではありません。心理検査を通して、自分のいいところや、自分が得意なやり方がわかる。それを、日常生活や、将来自分らしく生きていくにはどうしたらいいのかを考えるきっかけに使っていけるといいと思います。
疲れ切って検査を受けられないときは、無理に受けなくていい?
無理に受けなくて大丈夫です。山岸先生によると、検査はお子さんを知るための材料の一つでしかなく、検査をしなくても、診断がつかなくても、支援は始められます。疲れ切っているときは、生活を整えて健康を回復することが最優先です。
実際の場面だと、お子さん本人が検査を嫌がったり、疲れ切っていて受けられる状態じゃなかったり、集中力が続かなかったりすることもあると思います。そういうときは、どう考えたらいいですか?
検査は、お子さんの得意・不得意や、今どんな状況なのかを客観的に知るための一つの材料です。一つの材料ではあるけれど、一つの材料でしかないとも言えるので、検査をしなくても、診断がつかなくても、だから支援が始められないということは全然ないと思います。
学校に行くこと自体に疲れ切っていて、生活のリズムも整わないようなお子さんだと、今すぐ検査を受けさせることが、かえってストレスになってしまうこともたくさんあります。そこで受けたとしても、本来のポテンシャルを全然発揮できない可能性も高いと思います。
だからそういうときは、「今は無理に検査を受けさせるときじゃない」と判断するのも、ひとつの大切な支援です。まず生活を整えて、健康を回復するところを最優先にしていかれるのがいいと思います。
不登校になると、親御さんも「早く何とかしなきゃ」とすごく焦ると思うんですけど、急がば回れ、ということですね。
そうですね。お子さんの不登校は、原因ではなく結果なんです。何かがあって、お子さんがすごく頑張った結果として、今学校に行くのが大変な状況になっている。
そこからさらに急に頑張らせようとすると、お子さんもつらい状況なので抵抗も大きくなりますし、頑張らせようとする親御さんの負担も、とても大きくなってしまうと思います。

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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
検査を受けられない間、親にできることは?
山岸先生は、本人に決めてもらうことと、親が何もしないことは全然別だと話します。親にできるのは、①食事・睡眠・お風呂など生活の土台が崩れすぎないように声をかけること、②選択肢をたくさん集めておくこと、③お子さんの「今」の様子をよく見ておくことです。
なかなか検査を受けられそうにない段階で、親御さんがやれることは何かありますか?
まず、本人が自己決定していくことと、親が何もしないことは全然別だと考えています。決定権は本人にあるかもしれないけれど、親は環境を整えていく。
たとえば昼夜逆転の生活がずっと続いていたら、どうしても不健康になってしまうので、朝の時間になったら「おはよう」と声をかける。「ご飯食べられてる?」と聞く。食事と睡眠と、お風呂にちゃんと入れているかな、という衣食住に関わる基本的なところが崩れすぎないように声をかけていくのは、ご家族だからこそできる支援だと思います。
それから、お子さんが今は動けない状況だったとしても、たとえば進路をそろそろ決めなきゃいけないときに、親御さんが「この学校にしておこう」と決めてしまうのではなく、選択肢をたくさん集めておく。
どういう学校ならどんな特徴があって、どんなサポートがあるのか。選択肢がなるべくたくさんある状態を保ってあげることが、親御さんにできる、本人の自己決定を支えるお手伝いになると思います。

検査の代わりに:子どもの「今」をよく見ておく
検査を受けられないときの代わりになるのが、家庭での行動観察です。
検査を無理に受けなくて大丈夫、というお話がありましたが、その場合の代わりの手段は何かありますか?
検査はお子さんの状況を客観的に判断する一つの材料なので、受けられなかったとしても、今お子さんがどんな状況なのかを知っておくことはできます。心理学の言葉で言えば行動観察ですね。
朝何時に起きているかな、ご飯をどのくらい食べたかな、どこまでだったら外に出られるのかな。学校には行けないけど、家の中だったら自由にいられるのかな。家の中でずっとこもっているけど、オンラインで誰かとつながっているのかな。そういうことも含めて、ご家族がお子さんの今を知れる状況を作っておくのは大事だと思います。
学校に行っていないから、外に出られないから社会参加できていない、ということではありません。オンラインの世界に友達がたくさんいるかもしれないし、自分の世界をしっかり作っている途中なのかもしれない。
お子さんの社会参加を学校だけに絞るのではなく、広い目で見てあげられるといいと思います。
こうした日々の様子のメモは、あとで検査を受けるときや、学校・病院に相談するときにも、お子さんの状態を具体的に伝える材料になります。
不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ
対談の最後に、山岸先生は大切にしてほしいことを、こうまとめてくれました。
「発達障害」という存在を探すのではなく、その子自身が学校で何にどう困っていたのかを探すことを意識していただきたいなと思います。
そして、検査はお子さんを評価するためというより、その子にこれからどんな支援をしていけばいいのかを探すヒントにするために使っていただきたいと思っています。

発達検査は、受けること自体が目的ではありません。「この子の何を知りたいのか」がはっきりしたときに、お子さんの得意を見つけ、これからの支え方を考えるための道具になります。
今は疲れ切っていて、それどころではない。そんなときは、検査を急がず、まずは家で安心して過ごせること、ご飯と睡眠が取れていることを大切にしてみてください。
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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
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