理由がわからない不登校は発達障害が原因? 発達特性のある子が学校に行けなくなる理由を公認心理師が解説
公開 不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 発達障害がそのまま不登校を引き起こすのではなく、発達特性と学校という環境の「ミスマッチ」で学校がしんどくなることが多い(公認心理師・山岸佳織先生)。
- 発達特性のある子は、年長さんのころから自分の特徴に気づき、克服しようと頑張っていることが多い。理由がわからない不登校は、頑張り続けた後の「疲れたよ」のサインであることがある。
- 「発達障害かどうか」の犯人探しより、学校で何に・どれくらい・どのくらいの期間困っていたのかを具体的に探すことが大切。
- 小さいころは目立たなかった特性が、学年が上がり求められることが変わったときに見えやすくなることがある。
「うちの子、どうして学校に行けないんだろう」
本人に聞いても「わからない」。いじめがあったわけでも、勉強が極端にできないわけでもない。ネットで調べると「理由がわからない不登校は、発達障害を疑ったほうがいい」という声も見かけます。
でも、それって本当なのでしょうか。
今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの不登校について、学校に行けなくなる理由と、親が持っておきたい視点を伺いました。

理由がわからない不登校は、発達障害を疑ったほうがいい?
山岸先生の答えは、「発達障害かどうかの犯人探しはしなくていい。ただ、本人が困って苦しくなる特徴があるのかもしれない、という目は持っておいてほしい」というものでした。
ネットでは「理由がわからない不登校は、発達障害を疑ってみたほうがいい」という声も見かけます。山岸先生は、この考え方をどう思われますか?
「発達障害を疑う」というより、お子さんが困って苦しくなるような特徴があるのかもしれない、という目を持ってあげるのはいいと思います。
ただ、その特徴に当てはまったから発達障害だとか、発達障害だから学校に行けないのかもしれない、という「発達障害」という犯人探しをするのは違うかなと。
ネットの言葉もおそらく、学校に行けない要因の中に、本人の特性的なつらさがあるかもしれない。それを丁寧に探していきましょう、という意味なんだと思っています。
「発達障害」という大きなラベルでお子さんを見るのではなく、具体的に何に困っていて、それがどう学校のつらさにつながっているのかを見ていくことが大事なんですね。

山岸先生は、不登校の要因はお子さんの特性だけではない、とも話します。
学校の先生との関わり、クラスの雰囲気、学校と家の距離、教室の明るさ……本当にいろんな要因があります。何かひとつを「犯人」として決めてしまうのは、とても危険だと思っています。
それよりも、どんな苦しさがあって、それがどのくらいの期間続いているのかを、お子さん一人ひとりに合わせて丁寧に見ていくことが大事です。
発達特性のある子が不登校になりやすいのはなぜ?
山岸先生によると、発達特性そのものが不登校の原因になるというより、特性と「学校」という環境のミスマッチによって、学校に行くのがしんどくなることが一番大きな要因です。
発達特性のあるお子さんは不登校につながりやすい、と言われることがあります。これはなぜなんでしょうか。
家だと、家族は人数が少なくて、生まれたときから知っているメンバーですよね。自分がどう言えば伝わるか、相手が何を言おうとしているかがわかりやすい環境です。
でも学校に行くと、どうしても集団生活になります。それに、発達特性のあるお子さんは光や音に敏感な子も多いので、そもそも学校という場所が、家よりもとても疲れるということがよくあるんです。
そこに、友達とのコミュニケーションのズレ、授業がわからない、先生から「サボるんじゃない」と言われる……といったことが重なると、「行きたくない」となるのも仕方ないところがあると思います。
不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「発達障害のある高1息子、出席日数が足りません。通信制への転入をいつ切り出すべきですか」
山岸佳織先生 の回答
ご相談ありがとうございます。 「本人が回復するまで待ちたい」というお気持ちと、「進級や転入には期限がある」という現実との…
ASD・ADHD・LDの子が、学校で積み重ねやすい困りごと
山岸先生は、特性のタイプごとに、学校で起きやすい困りごとの例を挙げてくれました。どれも「本人は頑張っているのに、うまくいかない」経験が積み重なっていく点が共通しています。
| 特性のタイプ | 学校で起きやすいこと | 本人に積み重なりやすいもの |
|---|---|---|
| ASD(自閉スペクトラム症) | 冗談を言葉どおりに受け取る/予定の変更が苦手/運動会の練習の音やピストルの音がつらい | 「約束を破られた」「なぜ怒られるのかわからない」という混乱 |
| ADHD(注意欠如・多動症) | 忘れ物が多い/板書の指示を聞き逃す/何をすればいいかわからなくなる | 「自分はダメなんだ」という気持ち |
| LD・SLD(学習障害・限局性学習障害) | 漢字の書き取りなど特定の学習だけが極端に難しい/時間がかかって疲れ果てる | 「ほかはできるのに、なぜこれだけ」という苦しさと疲れ |
たとえば、ASDのお子さんで実際にあったのが、友達同士の冗談の「夜9時に公園で待ち合わせね」を本気にして、夜9時に一人で公園で待っていたというケースです。
周りの子はみんな冗談だとわかっているけれど、その子は冗談だと受け取れない。本人は約束を破られたと感じるし、遅い時間に外にいたことで怒られるかもしれない。友達に「なんで来なかったの?」と聞いても「冗談だよ」と返される。そうやって、友達との関係がうまくいかなくなっていくんです。
本人は約束を守っただけなのに……つらいですね。
運動会の時期に学校に行けなくなるお子さんもいます。ざわざわした音や、ダンスの練習の大きな音、かけっこの「よーい、パン」という音がどうしてもつらくて。その時期に休んでいるうちに、どうやって学校に戻ればいいのかがわからなくなってしまうことがあります。

ADHDのお子さんは、一つのことに注意を向け続けるのが難しいので、忘れ物が多くなりがちです。
先生が「ここを板書しなさい」と言ったときに注意が別のところに向いていると、「今なんの時間だっけ」と思っているうちに板書が消されてしまう。毎日、忘れ物をしないようにチェックリストまで作っているのに、そのチェックリストを見るのを忘れてしまう。そういうことが続くと、「自分ってダメなんだ」と思ってしまいやすいんです。
LDやSLDのお子さんは、コミュニケーションは問題がないことも多いんです。でも、たとえば漢字の書きに困難がある子だと、授業の内容はわかるのに漢字テストだけがとても難しい。
それから、意外と忘れられがちなのが「疲れやすさ(易疲労性)」です。ほかの子が10分で終わる漢字の書き取りに1時間近くかかると、それだけでほかのことが手につかなくなるくらいヘトヘトになってしまう。そういう学習の負担の積み重ねで、学校に向かう意欲がなくなってしまうお子さんもいます。
理由がわからない不登校は、頑張った後の「疲れたよ」かもしれない
親から見ると「突然」に見える不登校も、本人の中ではずっと前から続いていた頑張りの結果かもしれない、と山岸先生は言います。
こうして伺うと、どの特性でも共通して、決して怠けているわけではなく、本人はすごく頑張っているんですね。
むしろ私の印象では、特性のあるお子さんたちは自分の特徴をよく理解して、なんとか克服しようと頑張っている子がすごく多いです。
お子さんが自分の特徴に気づき始めるのは、早い子だと年長さんくらい。「友達となんだかうまくいかないな」「いつも怒られるな」と気づき始めると、みんな一生懸命それを克服しようとします。
だから、学校に行けないというサインを出すときには、すごく頑張った後の「疲れたよ」を言っている場合が多いように感じています。
親からすると、そんなに早くから気づいているとは思わないですよね。頑張って、頑張って、頑張った後に不登校になる……。

ギフテッドと呼ばれるお子さんの中にも、ASDやADHDの特徴を持っている子はたくさんいます。そういう子は「できる子だね」と見られることで、かえって「苦手」と言えなくなることがあります。「自分はできるんだから頑張らなきゃ」という期待に応えたい気持ちと、うまくいかない現実とのギャップで苦しむこともあるんです。
この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
小さいころは問題なかったのに、なぜ今になって?
「幼稚園や低学年のころは何も言われなかったのに」という声に、山岸先生は「特性が途中で生まれたのではなく、もともとあったものが、環境の変化で見えやすくなった」と答えます。
小さいころは特に何も指摘されず、学校でも問題なく過ごしてきた子が、後になって特性に気づくことはあるんですか?
ありますね。たとえば学習障害は、小さいうちは読み書きをする場面がないので気づかない、というお子さんもいます。
それから、小さいうちは周りの大人の手がたくさんある環境にいるので、本人の困りごとが大きくなる前に助けてもらえている、ということもあります。本人が少し意識して頑張れば周りに合わせられる程度であれば、小さいうちは全く目立たないケースもあります。
発達障害や発達特性と呼ばれるものは、生まれつきの脳の使い方の違いと捉えていただくのがいいと思います。
生まれたときからそういう脳の使い方をしていたけれど、環境がその子にとってそれほど負荷の大きいものではなかったから、うまく適応できていた。それが、ある段階で周りから求められるものが変わったときに、もともと持っていたものが見えやすくなった。そう捉えるほうが、実態に近いと思います。
その見方だと、誰かを責めることにもならないですね。
そうですね。みんな頑張っているんです。その頑張りが、今の環境のところで少しずれているのかもしれない。それを一緒に考えていけるといいなと思っています。
不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ
最後に、今まさにお子さんの不登校や発達特性で悩んでいる親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。
発達特性が見えやすかったお子さんのご家族は、ここまで本当に頑張ってこられたと思います。不登校になると、それまでの子育てを否定されたような気持ちになる方も多いです。
でも私がいつも思うのは、「不登校になれているんだ」という視点も大事だということ。学校がつらくても、お父さん、お母さんが作ってきたおうちが、その子にとって安全だからこそ、今おうちで充電しているんだと思っていただきたいです。
発達特性に気づいていなかったご家族も、突然知って戸惑われると思います。でも、特性はあるからいい・悪いというものではありません。お子さんの個性のひとつが、今、学校と噛み合わなくなってきた。それを知るきっかけだったと捉えて、お子さんに何が起きているのかを一緒に考えていけたらと思います。

お子さんが「学校に行けない理由」を言葉にできないとき、その裏には、言葉にならないほどの頑張りと疲れがあるのかもしれません。「何が原因か」を急いで決めるより、「何に困っていたのか」を一緒に探すところから始めてみてください。
この記事でお話を伺った山岸先生には、不登校ミーツでビデオ通話やメッセージで直接相談できます。
この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「発達障害のある高1息子、出席日数が足りません。通信制への転入をいつ切り出すべきですか」
山岸佳織先生 の回答
ご相談ありがとうございます。 「本人が回復するまで待ちたい」というお気持ちと、「進級や転入には期限がある」という現実との…