
発達障害に気づくきっかけは? 小学生の子に家庭で気づけるサインを公認心理師が解説【発達特性と不登校】
公開 不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 「発達障害かも」と思ったときに大切なのは、特徴に当てはまるかどうかより、生活の中で本人が何に・どのくらい困っているかを見ること(公認心理師・山岸佳織先生)。
- 家庭で気づけるサインの例は、周りに合わせることへの強いストレス、予定変更が苦手、友達とのトラブルをうまく説明できない、忘れ物や提出物の困りごと、特定の学習だけが極端に苦手、音や光への敏感さ、学校で頑張りすぎて家でぐったりする、など。
- いくつ当てはまったら発達障害、というものではない。1つでもとても苦しい子もいれば、たくさん当てはまっても自分でうまく処理できる子もいる。
- 小学生になってから、あるいは突然の不登校をきっかけに特性に気づくことも多い。突然に見える不登校も、その前からずっと頑張ってきた結果であることがある。
「もしかして、うちの子は発達障害なのかな」
学校に行けなくなったことをきっかけに、そう考え始める親御さんは少なくありません。ネットにはチェックリストもたくさんあって、読めば読むほど当てはまる気もするし、違う気もする。
家庭では、子どものどんなところを見ればいいのでしょうか。
今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの不登校を前提に、家庭で気づけるサインと、特性に気づくきっかけについて伺いました。

「発達障害かも」と思ったら、家庭では何を見ればいい?
山岸先生がまず挙げたのは、「この特徴に当てはまったら発達障害、ということではない。生活の中で、本人が何にどのくらい困っているのかを見る視点が一番大切」ということでした。
不登校の背景を考えるとき、親御さんはご家庭でどんなところを見ていけばいいのでしょうか。どんな様子があると、もしかしたら発達特性が関係しているのかな、と当たりをつけたらいいですか?
この特徴に当てはまったら発達障害、ということではなくて、生活の中で本人が何にどのくらい困っているのかを見る、という視点が一番大切だと思います。
チェックリストは「当てはまるかどうか」を数えるものになりがちです。でも山岸先生の視点は、あくまで本人の困りごとが出発点。この前提を押さえたうえで、家庭で気づけるサインを見ていきましょう。
家庭で気づけるサインには、どんなものがある?
山岸先生は「挙げていくと限りがない」と前置きしたうえで、家庭や学校の様子から気づけるサインの例を挙げてくれました。
たとえば、集団生活の中で、周りに合わせることにとても強いストレスを感じている。予定の変更や、見通しの持てない状況に大きなストレスを感じている。
お友達とのトラブルが繰り返されるけれど、本人に聞いても、何があったのか、どんな気持ちだったのかをうまく説明できない。
それから、ADHDの特徴としても挙げられるものですが、忘れ物や遅刻が多い、提出物がうまく出せない、出すのを忘れてしまう。読む・書く・計算といった、特定の学習だけが極端に苦手。
音やにおい、光などの特定の刺激に対して、すごく感受性が強かったり、逆にうまくキャッチできなかったりするお子さんもいます。
興味があることには非常に高い集中ができるのに、興味の持てないものには、集中しようとしてもうまくできない。本人の頑張りとは関係なく集中が切れてしまう、という特徴もあります。
それから、本人としてはすごく頑張っているのに、全然うまくいかないと感じる経験が続いている。
あとは、学校では非常に頑張っていて、問題なく過ごせている、むしろ「しっかり者のいい子です」と言われるようなお子さんが、学校でエネルギーを全部使い果たして、家に帰ってきたら疲れ切って何もできなくなってしまう。そういうことも考えられると思います。
山岸先生が挙げたサインを、表にまとめました。
| 見えやすい場面 | サインの例 |
|---|---|
| 集団生活 | 周りに合わせることに、とても強いストレスを感じている |
| 予定・見通し | 予定の変更や、見通しが持てない状況に大きなストレスを感じる |
| 友達関係 | トラブルが繰り返されるのに、何があったか・どんな気持ちだったかをうまく説明できない |
| 忘れ物・提出物 | 忘れ物や遅刻が多い/提出物を出せない・出し忘れる |
| 学習 | 読む・書く・計算など、特定の学習だけが極端に苦手 |
| 感覚 | 音・におい・光などの刺激にとても敏感/逆に気づきにくい |
| 集中 | 興味のあることにはすごく集中できるのに、興味の持てないことは頑張っても集中が切れる |
| 頑張りと結果 | 本人は頑張っているのに、うまくいかない経験が続いている |
| 学校と家の差 | 学校では「しっかり者のいい子」なのに、家に帰るとぐったりして何もできない |
一般に、予定変更が苦手なことや人との関係のつまずきはASD(自閉スペクトラム症)、忘れ物や集中の続きにくさはADHD(注意欠如・多動症)、特定の学習だけの極端な苦手さはLD(学習障害)の特徴としてよく挙げられます。ただし、表に当てはまる=発達障害、ではありません。ASD・ADHD・LDの子が学校で抱えやすい困りごとは、理由がわからない不登校は発達障害が原因?で詳しく紹介しています。

不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「ADHDの小4息子、叱られ続けて自信をなくしています。親の関わり方を間違えたのでしょうか」
山岸佳織先生 の回答
ご相談ありがとうございます。 「自分が息子さんの自信を削ってしまったのではないか」と振り返り、ここまでご自身を責めてこら…
いくつ当てはまったら発達障害? チェックリストの数で決まる?
数では決まりません。山岸先生によると、1つしか当てはまらなくてもとても苦しい子もいれば、たくさん当てはまっても自分でうまく処理できる子もいます。見るべきなのは、どんな苦しさが、どのくらいの期間続いているかです。
今いくつか挙げていただきましたけど、これは、いくつ当てはまったら疑ってみて、という問題ではないんですね。
ないですね。たとえば、1つしか当てはまらなくても、それがすごく苦しいお子さんもいるかもしれないし、たくさん当てはまったとしても、うまく自分で処理できるかもしれない。
それはお子さんの特性だけではなくて、学校の先生の関わり、クラスの友達の雰囲気、学校と家の距離、教室の明るさなど、いろんな要因があるからです。だから、何か1つを犯人として決めてしまうのは、とても危険なことだと思います。
どんな苦しさがあって、それがどのくらいの期間続いてしまっているのかを、お子さんに合わせて、一人ひとり丁寧に見ていくことが大事だと思います。
困りごとの種類や形だけではなくて、それがどれくらい続いているか、ご本人にとってどれくらいつらいのかも合わせて、総合的に見ていくことが大事なんですね。
そうですね。
山岸先生は、同じ特性でも現れ方には大きな個人差がある、とも話していました。
ASDの特徴だけが当てはまるお子さんもいれば、ASD・ADHD・LDの全部の特徴に当てはまるお子さんももちろんいます。
何個当てはまればこの診断、ということではなくて、その子が今何に困っているんだろうと紐解いていくときに、「ここはASD的なのかな」「ADHDっぽい要素があるのかな」とわかると、どんなことで困っているのか想像しやすくなる。それが、特性を知ることのメリットだと思います。
発達障害に気づくきっかけは? 小学生になってから・不登校で気づくのはなぜ?
小さいころは目立たなかった特性が、学年が上がって求められることが変わったときや、学校での頑張りが限界を超えたときに見えやすくなることがあります。突然の不登校が、親が特性に気づくきっかけになることも少なくありません。
「幼稚園や低学年のころは何も言われなかったのに」と感じる理由について、山岸先生は「特性が途中で生まれたのではなく、もともとあった特性が、環境の変化で見えやすくなった」と話しています。読み書きの場面が少ない幼児期には学習障害に気づきにくいこと、小さいうちは周りの大人の手が多く、困りごとが大きくなる前に助けてもらえていることなどです。詳しくは理由がわからない不登校は発達障害が原因?の「小さいころは問題なかったのに、なぜ今になって?」で紹介しています。
そしてもう一つの大きなきっかけが、突然に見える不登校です。
不登校は、突然なったように見えるケースが多いです。特に、ちょこちょこ休みながら学校に行けるタイプではなく、ある日突然バタンと行けなくなるタイプの不登校だと、「急にどうした?」という感じに見えることが多いんですけど、
それは、そこで突然何かがあったわけではなくて、その前からずっとずっと、お子さんが頑張ってきた一つの結果なのかもしれない。そういう目を持っていただきたいなと思います。
一方で、お子さん自身は、親が思うよりずっと早く自分の特徴に気づいていることがある、と山岸先生は言います。
早い子だと、年長さんくらいには自分の特徴に気づき始めています。お友達と役割のある遊びができるようになってくるころには、だんだん「自分はどんな人なんだろう」と見つめ始めるお子さんが多いと思います。
そこで「お友達となんだかうまくいかないな」「いつも怒られるな」と気づくと、みんなすごくそれを克服しようと頑張るんです。
親が「突然」と感じる不登校の裏で、子どもは何年も前から、自分なりに工夫して頑張り続けていたのかもしれません。

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
発達障害かもと気づいたら、まず何をすればいい?
まずはお子さんが何にどう困っているのかを具体的に書き出し、身近な相談先に相談することです。山岸先生は、相談では「発達障害かどうか」という結論を聞きに行くよりも、具体的な困りごとを伝えるほうが、支援までスムーズだと話します。
お子さんが「発達障害かもしれない」という結論を聞きに行くような感覚よりも、今お子さんが何にどういうふうに困っているのか、それによってご家族はどう感じているのか。その具体的なところを、一つひとつ順番に伝えていただくのがいいと思います。
先に「発達障害」というラベルから話してしまうと、そのラベルとその子がどこがどうずれているのかを確かめる作業が一手間入るので、かえってお子さんの具体的な特徴が見えにくくなることもたくさんあるんです。
具体的には、次のような流れが考えられます。
- 上の表や「3つのこと」を参考に、家での様子・学校での様子をメモする
- 担任の先生、スクールカウンセラー、保健室の先生など、身近な相談先に話してみる
- 必要に応じて、小児科の発達外来や児童精神科、自治体の発達相談につないでもらう
- 何を知りたいかがはっきりしてきたら、発達検査も選択肢に入れる
相談先の選び方は「子どもの発達が気になったら:相談先と相談のしかた」、発達検査の考え方は「発達検査は受けるべき?」の記事で、それぞれ詳しく伺っています(ページ下の「あわせて読みたい」から読めます)。
不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ
最後に、お子さんの困りごとに直面している親御さんへ、山岸先生の言葉を紹介します。
こういう困りごとがあるのは、お子さんが悪いわけでも、まして親御さんの育て方や対応が悪かったわけでも全くありません。むしろ、ご家庭が安心できる環境だったからこそ、困りごととしてご家庭で出てくるものでもあります。
だから、お子さんを責めることなく、ご自身を責めることなく、これからどう関わっていくのが一番いいのかを考えていってほしいなと思います。
困った行動が出ているのは、お子さんにとって何か大変さがあるよ、というサインでもあります。お子さんがこれから先、困ったことに出会ったときに乗り越える手段を増やせるか、そのヒントを探す場でもある。今困りごとが起きたことを、チャンスだと思って、お子さんと向き合っていってほしいなと思っています。

「発達障害かどうか」を家庭で判断する必要はありません。親にできるのは、お子さんが何に困っているのかに気づき、それを言葉にして、一緒に考えてくれる人につなぐこと。気づいた今が、お子さんの頑張りに目を向けるスタートです。
この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます
山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?
みんなの相談
•••こんな相談に回答しています
「ADHDの小4息子、叱られ続けて自信をなくしています。親の関わり方を間違えたのでしょうか」
山岸佳織先生 の回答
ご相談ありがとうございます。 「自分が息子さんの自信を削ってしまったのではないか」と振り返り、ここまでご自身を責めてこら…
あわせて読みたい
理由がわからない不登校は発達障害が原因? 発達特性のある子が学校に行けなくなる理由を公認心理師が解説理由がわからない不登校は、発達障害を疑うべきなのか。発達特性のある子が学校に行けなくなる理由、ASD・ADHD・LDの子が学校で抱えやすい困りごと、小学生になってから特性に気づく理由を、発達支援の現場で10年以上働く公認心理師・山岸佳織先生に聞きました。
子どもの発達が気になったら相談先はどこ? 学校・病院・自治体の使い分けと相談のしかたを公認心理師が解説【発達特性と不登校】子どもの発達が気になったら、どこに相談すればいい? 発達特性のある子の不登校を前提に、担任・スクールカウンセラー・保健室の先生・病院・自治体の発達相談の使い分け、相談で伝えること、子どもが行けないときの方法を、公認心理師・山岸佳織先生に聞きました。
発達検査は受けるべき? 種類と子どもへの伝え方、嫌がる・疲れ切っているときの考え方を公認心理師が解説【発達特性と不登校】子どもの発達検査は受けるべきか。発達特性のある子の不登校を前提に、検査が役に立つとき、WISCなどの種類、嫌がる子への伝え方、疲れ切って受けられないときの考え方を、発達支援の現場で10年以上働く公認心理師・山岸佳織先生に聞きました。
ASD・ADHD・LDの違いとは? 子どもに出やすい特徴を公認心理師がわかりやすく解説【発達特性と不登校】ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(学習障害)は何が違うのか。子どもに出やすい特徴、本人や親が抱えやすい苦しさ、複数の特性が重なるときの考え方を、発達特性のある子の不登校に向き合ってきた公認心理師・山岸佳織先生に聞きました。