ご相談ありがとうございます。カウンセラーの山岸です。
息子さんが学校に行けなくなってから、この1か月、お母様も悩みながら過ごしてこられたのですね。
以前は勉強も陸上も頑張っていた息子さんが、「全部無理」「何もかも疲れた」と話すようになり、学校に行こうとしても行けない姿を見るのは、とてもつらいことと思います。
少しでも学校に行かせた方がよいのか、それとも休ませた方がよいのか、先生と相談しながら試行錯誤されてきたのですね。
今回は、息子さんの現在の状態をどう捉えるか、休んでいる間の関わり方、今後の学校や進路との付き合い方について、心理的な視点からお伝えします。
① いったん学校を休むことにしても、大丈夫でしょうか?
今の息子さんにとって、いったん学校から離れて休む時間をつくることは、選択肢の一つだと思います。
これまで週に1〜2回登校したり、学校の門まで行ってみたりと、息子さんなりに頑張ってこられたのですよね。それでも、朝になると行き渋りがあり、学校に入れないこともあったとのことですから、学校に行こうとすること自体に、かなりのエネルギーを使っていた可能性があります。
不登校の初期には、本人も「どうして行けないのか」「何がつらいのか」をうまく説明できないことがあります。何か一つの明確な原因があるというより、勉強や人間関係、日々の疲れ、本人が感じているプレッシャーなど、さまざまなことが重なっている場合もあります。
そのようなときに、理由を説明させたり、登校する方法を考え続けたりすることが、本人にとってさらに負担になることもあります。
まずは学校に行くことをいったん脇に置き、心身の疲れを回復させる時間をつくることも大切です。
ただし、「休ませれば必ず回復する」というわけでもありません。休む期間を、単に学校に行かない期間とするのではなく、息子さんが安心して過ごし、自分のペースを取り戻していく期間と考えてみてはいかがでしょうか。
また、休む期間をあらかじめ何週間、何か月と決めて、その期限までに登校できるようにする必要もありません。回復のペースは一人ひとり違います。
② 学校に行かない間、どのように過ごし、声をかければよいでしょうか?
今は、息子さんが安心して過ごせることを大切にしながら、日常生活の土台を整えていくことをおすすめします。
例えば、次のようなことです。
・睡眠や食事など、生活のリズムを少しずつ整える。
・陸上や友達との交流など、本人が楽しめていることは、無理のない範囲で続ける。
・学校や勉強の話題を毎日確認するのではなく、ゲームや趣味、日常の出来事など、気軽に話せる時間を大切にする。
・本人が話したくないときには、無理に理由を聞き出そうとせず、話せるときに話せる関係を保つ。
お母様としては、学校を休んでいる間に勉強が遅れてしまうことや、高校受験への影響も気になると思います。しかし、今すぐに勉強や進路の問題を解決しようとするより、まずは息子さんが少しでも安心して生活できることを優先してよいと思います。
声をかけるときも、例えば、
「今は学校のことを無理に決めなくてもいいよ。まずは元気を取り戻していこうね」
「何がつらいのか、今はうまく説明できなくても大丈夫だよ」
「学校のことも、勉強のことも、一緒に考えていけるからね」
といったように、すぐに答えを出さなくてもよいことを伝えてみてはいかがでしょうか。
一方で、何も話題にしないことが正解というわけでもありません。本人が学校について話したそうなときには耳を傾け、本人の気持ちを確認しながら、必要な情報を一緒に整理していくことも大切です。
そして、お母様ご自身も、息子さんの様子を見て不安になったり、学校の先生と話して焦ったりすることがあると思います。それは、息子さんの将来を大切に考えているからこそ生じる気持ちでもあります。不安を感じること自体を責める必要はありません。ただ、その不安を解消するために息子さんに登校を促したくなったときには、一度立ち止まり、「今、この子に必要なのは何だろう」と考えてみることが役立つかもしれません。
③ 学校には行けなくても、陸上や友達との交流ができていることについて
息子さんが、学校には行けなくても、陸上の大会に参加したり、陸上の友達と話したりできていることは、大切な情報だと思います。
また、ゲームや友達とのLINE通話、オンライン塾も続けられているのですね。
こうした様子からは、少なくとも現在も、本人が関心を持てる活動や、人とのつながり、学びに取り組める場が残っていることがわかります。学校に行けないことと、あらゆる活動ができなくなることは同じではありません。
学校には、授業だけでなく、集団で長時間過ごすこと、時間割に合わせて行動すること、周囲の人との関係を保つことなど、さまざまな負担があります。一方、陸上やオンライン塾では、本人が好きなことに取り組めたり、学校とは異なる人間関係や環境の中で過ごせたりするのかもしれません。
そのため、陸上には行けるのに学校には行けないからといって、本人の気持ちの問題や甘えと考える必要はありません。むしろ、今できている活動を大切にしながら、本人がどのような環境なら安心して過ごせるのかを知る手がかりにしていけるとよいと思います。
ただし、陸上やオンライン塾を続けられているからといって、心身の負担がないと判断することもできません。好きなことに取り組むために、本人なりに頑張っている可能性もあります。活動後の疲れや、本人がどの程度無理をしているのかにも目を向けてみてください。
④ しばらく休んだ後、また学校に行けるようになるのでしょうか? 高校進学は大丈夫でしょうか?
今、一番気になっていらっしゃるのは、この先の見通しではないでしょうか。以前は勉強も陸上も頑張っていた息子さんだからこそ、今の状態が長く続いてしまうのではないかと心配になりますよね。
不登校を経験した子どもが、その後、少しずつ登校できるようになることはあります。また、別の学び方や環境を選び、自分に合った形で進学していく子どももいます。
ただ、どのくらいの期間で回復するのか、以前と同じように登校できるようになるのかは、今の段階では誰にも断言できません。
大切なのは、今の状態だけを見て、将来を決めつけないことです。
中学2年生であれば、高校進学までにはまだ時間があります。今すぐ高校受験に向けて勉強を立て直さなければと考えるより、まずは心身の状態を整え、その後、本人の状態に合わせて学習や進路について考えていくことができます。
また、現在オンライン塾を続けられていることも、一つの足がかりになると思います。今は学校に行くことを目標にしなくても、本人が学ぶ力や興味を持ち続けられる環境を保つことができます。
もちろん、進学に向けては出席状況や成績、入試制度など、確認しておくべきこともあります。今すぐすべてを決める必要はありませんが、学校や教育相談の窓口などに相談し、選択肢を知っておくと、お母様の不安を少し整理しやすくなるかもしれません。
⑤ お母様がご自身を責めてしまうことについて
最後に、お母様にお伝えしたいことがあります。
勉強や高校受験について、しつこく話してしまったことがきっかけだったのではないかと、ご自身を責めていらっしゃるのですね。
確かに、その時期のやり取りが息子さんの負担になった可能性はあります。しかし、不登校の背景には、さまざまな要因が関係していることが多く、一度の関わりだけですべてが決まるわけではありません。お母様も、息子さんの将来を心配し、よかれと思って声をかけてこられたのだと思います。
もし、あのときの関わりについて息子さんに伝えたいことがあるなら、長く説明したり、返事を求めたりする必要はありません。
例えば、
「勉強や受験のことを何度も話して、しんどい思いをさせてしまったかもしれないね。心配するあまり、あなたの気持ちを十分に考えられていなかったかもしれない。ごめんね」
と、短く伝えるだけでもよいと思います。
その後、息子さんがすぐに何かを話してくれなくても、謝罪を受け入れたかどうかを確認する必要はありません。これからの関わりの中で、本人の気持ちを尊重する姿勢を少しずつ示していくことが大切です。
そして、お母様自身も、一人で不安を抱え続けないでください。子どもと親のサポートセンターや市の家庭相談に相談しようと考えていらっしゃることは、とてもよい一歩だと思います。
保護者が安心して相談できる場所を持つことは、息子さんを支えるためにも大切です。
今は、学校に行かせることを目標にするのではなく、息子さんが元気を取り戻すことを大切にしたい、というお母様のお考えを大事にしていただきたいと思います。
休むことは、将来を諦めることではありません。
今できていることを大切にしながら、息子さんが安心して過ごせる時間をつくり、必要な支援を受けつつ、これからのことを一緒に考えていく。その積み重ねが、次の一歩につながっていくのではないでしょうか。