息子さんが受験のつらさや、学校に行けなくなった苦しさを話してくれたのですね。
中学受験に向けて大きな努力を重ね、難関校に入学したものの、クラスの人間関係が合わず、学校に行けなくなってしまった。息子さんの中には、学校生活のつらさだけでなく、受験そのものへの苦しさや、ご両親への複雑な気持ちもあったのだと思います。
そのような息子さんの気持ちを受け止め、これまでの関わりについて謝りながら、今は「生きていてくれることがありがたい」という思いで過ごされてきたのですね。ご両親にとっても、苦しい時間だったのではないでしょうか。
そんな中、息子さん自身から相談があり、文化祭に行ってみようかなという言葉も聞かれたことは、うれしい変化だったと思います。
ご質問の、高専の情報を伝えてよいかという点について、私は、今すぐ進路の選択肢として勧めるよりも、まずは息子さんが自分の気持ちや希望を安心して話せる関係を大切にしながら、伝えるタイミングを待つことをお勧めします。
① 息子さんにとって、進路の話が「また親の希望を押しつけられること」と感じられる可能性がある
以前、通信制高校の話をしたときに「お母さんはそこに入れたいんでしょ」と怒ったのですね。
息子さんにとっては、学校をどうするかという話だけでなく、「自分の気持ちよりも、親の考える進路を優先されるのではないか」という不安があるのかもしれません。
もちろん、ご両親は息子さんの将来を心配し、少しでも本人に合う環境を見つけたいと考えていらっしゃるのだと思います。しかし、息子さんがそのように受け取る可能性がある以上、今は情報の内容以上に、「自分の進路は自分で考えてよい」「親は自分の考えを聞いてくれる」という安心感を積み重ねることが大切です。
② 文化祭に行ってみようという気持ちを、まずはそのまま大切にする
息子さんが「来月の文化祭はいい機会だから行ってみようかな」と話したときに、「いいね」と答えられたのは、とてもよかったと思います。
ここで大切なのは、文化祭に行くことを、学校復帰や今後の進路を決めるための一歩として扱いすぎないことです。
文化祭に行ってみて、楽しいと感じるかもしれません。反対に、疲れてしまったり、思っていたようには過ごせなかったりすることもあるでしょう。どちらであっても、その経験を息子さん自身がどう感じたかを大切にできるとよいですね。
例えば、行った後に話してくれたら、「行ってみてどうだった?」「どんな感じがした?」と聞き、本人の感想をそのまま受け止めてみてください。
学校に戻るかどうか、今の学校を続けるかどうかをすぐに結びつける必要はありません。まずは、息子さんが自分の気持ちを確かめる機会として見守っていけるとよいと思います。
③ 高専の情報は、息子さんの希望を確認してから伝える
息子さんが昔から機械に触れることを好きだったのであれば、高専は将来の選択肢の一つになる可能性があります。本人の興味や得意なことを生かせる環境を知っておくことは、決して悪いことではありません。
ただし、高専は専門的な学習や実習に加えて、数学や理科などの学習も必要になる学校です。機械が好きだから必ず合うとは限りませんし、学校ごとに学習内容や環境も異なります。
そのため、今は「高校でまたつらくなったら退学になるかもしれないから、高専も考えておこう」という保護者の方の心配を出発点にするよりも、息子さんが将来どんなことをしたいのか、何に興味があるのかを知ることから始めてはいかがでしょうか。
「昔から機械が好きだよね。今もそういうことに興味がある?」
と、進路の話に直結させずに聞いてみることはできると思います。
もし息子さん自身が将来の話をするようになったり、学校以外の進路について知りたいと言ったりしたら、
「そういえば、機械について学べる高専という学校もあるみたいだよ。もし興味があったら、一緒に調べてみる?」
その際には、「高専に行った方がいい」という意味ではないことを、言葉だけでなく、その後の態度でも示していくことが大切です。興味がないと言われたら、それ以上勧めずに引き下がることも、本人の意思を尊重する経験になります。
息子さんは、受験のつらさが蘇って勉強ができないと話していたのですね。勉強することそのものが、受験の苦しい記憶と結びついている可能性があります。そのため、今は学力や進路を早く立て直すことよりも、息子さんが安心して自分の気持ちを話せることや、自分の興味を楽しめることを大切にしていただきたいと思います。
そして、文化祭に行ってみようと思えたことも、機械が好きであることも、息子さんの中にある大切な気持ちです。今すぐ進路につなげなくても、その気持ちを尊重してもらえる経験が、これから自分の将来を考えるための土台になっていくのではないでしょうか。
親としては、将来困らないように、少しでもよい選択肢を伝えておきたいと思うものです。そのお気持ちは自然なことです。ただ、今は「よい進路を見つけてあげること」よりも、「息子さんが自分で進路を考えられるようになるまで、安心して話せる関係を保つこと」を優先してもよい時期なのだと思います。