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不登校ミーツ

合理的配慮とは? 学校で相談できる具体例と伝え方を公認心理師が解説【発達特性のある子の不登校】

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 合理的配慮とは、その子が学習や学校生活に参加しやすくなるよう、学校が無理のない範囲で行う変更や調整のこと。わがままや特別扱いではなく、誰もが公平に学べることを目指す考え方(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 発達特性のある子の場合、「板書をiPadで撮らせてもらう」「口頭の指示を板書にしてもらう」「プリントで配ってもらう」「黒板が見える席にしてもらう」などが相談できる例。
  • 不登校の子が学校に相談するときは、「どう戻るか」より、行けなくなる前の大変さをどう調整するかを話す。診断名からではなく、いつ・どこで・誰が・何に困っているかを具体的に伝える。
  • 配慮は一度決めて終わりではなく、3か月〜半年ごとに見直す。通常級か支援級かも二択で考えず、その子の困りごとと環境のミスマッチがどちらで少なく、調整しやすいかで考える。

動画で見たい方はこちら(17:06)

「学校に配慮をお願いしたいけれど、わがままだと思われないだろうか」

発達特性のあるお子さんが学校に行きづらくなったとき、「合理的配慮」という言葉に行き当たる親御さんは多いと思います。でも、言葉が堅くて、何をどこまでお願いしていいのかがわかりにくいものです。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの不登校を前提に、合理的配慮の考え方と、学校に相談できることを伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

合理的配慮とは? わがままや特別扱いではないの?

合理的配慮とは、その子が学習や学校生活に参加しやすくなるように、学校ができる範囲で行う調整のことです。山岸先生は「誰もが公平に学べることを目指す考え方で、決してわがままや特別なことではない」と話します。

かほ
かほ:

発達特性のあるお子さんの場合、学校での環境調整や合理的配慮は、どんなふうに考えたらいいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

合理的配慮って、漢字ばかり並んでいて、堅苦しい言葉に感じますよね。でも基本的には、誰もが公平に学べることを目指すという考え方です。

その子が学習や学校生活に参加しやすくなるために、どんなことができるかを考えていくのが合理的配慮です。

35人、40人が一斉に受ける授業の中には、「ここは得意だけど、ここは苦手」という子もいれば、逆に「こっちはできるけど、こっちは苦手」という子もいます。その子たちがみんな、一つの授業で同じように学びやすくするために、できる範囲のことはしましょうということなので、難しく考えなくていい言葉でもあるかなと思います。

山岸先生は、合理的配慮を「当たり前に、みんなが気遣いとしてやれること」とも表現します。

かほ
かほ:

わがままや甘えではない、と言っていただけると、救われる方も多いと思います。

山岸先生
山岸先生:

SNSなどでは、「診断名を免罪符にして」「合理的配慮と言っておけば何でも許されると思って」といったことを言われることもあります。

でも、診断名が免罪符になるわけではなくて、困難があるからラベルがついているということなんです。その困難に対して、みんながちょっとずつできることを持ち寄ったら、その子が参加しやすくなるよ、ということ。

背が低い人には前の方の席にしてあげよう、ちょっと届かないなら台を置いておいてあげよう。お店に、高いところの商品を取るための道具が置いてあるような、ああいうものが合理的配慮なのかなと思います。

学校にはどんなことを相談できる? 合理的配慮の具体例

山岸先生が挙げた例は、どれもその子の「困っていること」に合わせて、先生が無理なくできる範囲の工夫です。

かほ
かほ:

具体的には、学校にどんなことを相談できるものなんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

たとえば、ワーキングメモリーが低いお子さんに口頭でいっぱい指示を出すと、忘れてしまいます。なので、指示を板書にしてください、というお願いはできるかもしれません。

書くのが遅いお子さんなら、同じ内容をプリントで配ってくださいというのもできるかもしれない。それも難しいなら、板書したものを書き取るのが大変なので、iPadで撮らせてくださいというのもできるかもしれません。

子どもの困りごと相談できる配慮の例
口頭の指示を覚えておけない(ワーキングメモリーの低さなど)指示を黒板に書いてもらう
書くのに時間がかかり、板書が写しきれない同じ内容をプリントで配ってもらう/板書をタブレットで撮影させてもらう
黒板が見えにくく、授業についていけない黒板の見える前の方の席にしてもらう

山岸先生自身も、子どものころに合理的配慮を受けていたそうです。

山岸先生
山岸先生:

私、子どものころすごく背が低かったんです。小学校1年生で100センチなくて、メガネもかけていました。2番目、3番目の席だと、前の人の頭しか見えなくて黒板が何も見えない。それだと授業についていけないので、席替えをしても、いつも前の方の席にしてもらっていました。

診断があろうがなかろうが、それも当時していただいていた合理的配慮の一つですね。お子さんが本当に困っていることを、先生方が無理のない範囲で解決できるようにするのが合理的配慮です。

話す山岸佳織先生
子どものころの自分の体験を交えて話す山岸先生

では、どこまでお願いできるのか。山岸先生は車椅子のお子さんを例に説明します。

山岸先生
山岸先生:

たとえば車椅子のお子さんが「学校にエレベーターをつけてください」とお願いしても、それはちょっと大変なので、合理的配慮からは外れます、と言われてしまうと思います。

でも、階段しかないところに、スロープになる板を置いておいてください。それなら誰かが押してくれれば通れるので、板を置いておくようにはできるんじゃないか。そういう「できそうな配慮」を求めていくということなんです。

発達検査の結果がある場合の伝え方は、発達検査の結果を学校にどう伝える?でくわしく紹介しています。山岸先生は「数値が低いので配慮してください」ではなく、今の困り方と、してほしい配慮をセットで伝えるほうがいいと話しています。

不登校の子の場合、学校にはどう相談すればいい?

不登校の子の場合、山岸先生のアドバイスは「どうやって戻るか」より、「行けなくなる前の大変さを、どう調整するか」を学校と相談することです。

かほ
かほ:

不登校のときに学校へ相談する場合、何かポイントがあれば教えてください。

山岸先生
山岸先生:

学校への戻り方は、多くの親御さんが相談されるところだと思います。でも、今学校に行けないのは、その前の大変さの結果として行けなくなっていることがほとんどです。なので、その前の大変さの部分をどう調整したらいいかを、学校と相談されるといいかなと思います。

たとえば、黒板が見えなくて授業についていけず、勉強がつらくなってしまったのなら、黒板の見える位置に席替えをしてもらえないか、という配慮をお願いすることになるでしょう。書くスピードについていけなくて黒板が写せないのなら、タブレットで撮っていいですか、という配慮をお願いすることになると思います。

学校に戻ったときに、その子がそれまでの苦しさをもう一回繰り返さなくて済むにはどうしたらいいか。そこを意識して相談していただけるといいかなと思います。

学校での様子と家での様子が違う子の場合は、伝え方にも工夫がいります。山岸先生は「診断名などのラベルから伝えるより、今どこで、誰が、何に困っているのかを具体的に伝える」ことが大事だと話します。

山岸先生
山岸先生:

学校に「本人がつらいみたいです」とだけ言うと、学校の先生からは「普通にできていますし、むしろしっかり者で頼りになるいい子ですよ」となって、お母さんだけがしんどいと言っているような扱いをされてしまうこともあります。

なので、おうちで具体的にどうなっているのかを伝えるほうがいいと思います。たとえば「学校では問題なく授業に参加できていると先生も言ってくださるし、本人も『学校ではできてるもん』と言っています。でも家では、宿題を始めるまでに何時間もかかって、30分で終わるはずの宿題が、完璧にするまで終われなくて3時間かかるんです」というように。

そのうえで、本人が寝不足で朝起きるのがつらいのか、毎晩遅くまで話を聞いている親御さんもつらいのか、というところも含めて、いつ、どこで、誰が困っているのかを学校にお伝えするのがいいかなと思います。

学校とのつながりは、無理にでも保ったほうがいい?

本人が「もう無理」となっているときに、配慮を使ってでも学校とのつながりを保つべきか。山岸先生の答えは、「状況によるが、学校という枠にこだわらないほうがいいケースのほうが多い」でした。

山岸先生
山岸先生:

たとえば、その子の世界が学校しかなくて、ほかに家族みんなが知っている大人も、助けてくれる人も誰もいない、というときに、学校にまだ使っていないリソースがあるなら、それを頼るのは一つの選択肢かもしれません。

ただ、もう疲れ切って行けないとなっているときに、そこへ無理に戻すのではなくて、少し離れて、何がしんどかったのかを整理する時間を作ることも、とっても大切です。

ほかにつながっているところがあれば、それも学校以外で社会参加ができているということなので、無理に学校という枠での社会参加にこだわらないほうがいいケースのほうが多いと思います。

配慮は誰に相談する? 一度決めたら終わり?

担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターなど、複数の先生で話し合う「ケース会議」を開いてもらうのも一つの方法です。そして配慮は、一度決めたら終わりではなく、3か月〜半年ごとに見直していくものだと山岸先生は話します。

山岸先生
山岸先生:

担任の先生にお話しして、それでうまくいくケースもあります。ただ、担任の先生もお一人でたくさんの生徒さんを見ていますし、仕事量もかなり多い。中学生以降だと、担任以外に関わる先生もすごく増えてきます。

そういう場合は、担任の先生だけでなく、スクールカウンセラー、養護の先生、学年主任の先生、管理職の先生、特別支援教育コーディネーターの先生など、いろいろな先生にお話しできるように、ケース会議の場を作っていただくのも一つ大きな手かなと思います。

山岸先生
山岸先生:

それから、配慮は一度決めて「じゃあそれでいきましょう」となっても、だいたい3か月くらいすると、うまくいっていれば少し変わってきます。逆に、3か月毎日関わっているのにあまり変わらないときは、その支援がその子にうまくはまっていないこともあります。

だから、一回決めてやってみておしまいではなくて、計画を立てて、実際にやってみて、だいたい3か月とか半年に1回振り返る。合っていたか、合っていなかったか。このまま続けるのか、減らすのか、別の手立てを足すのか。何度も何度も見直しをしながら進めていくのが大事かなと思います。

身ぶりを交えて話す山岸佳織先生
配慮の見直し方について話す山岸先生

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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通常級と支援級、どっちがいい? 選ぶときの考え方

山岸先生は、「通常級か支援級かの二択で考えるとしんどくなる」と話します。大事なのは、その子の困りごとと環境のミスマッチが、どちらのほうが少なく、どちらのほうが調整しやすいかです。

かほ
かほ:

通常級でつらさを抱えている場合、支援級への変更はどういった基準で考えたらいいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

支援級か通常級かの二択になってしまうと、結構きついところもあるかなと思っています。

本当は、自治体によっても、学校によっても、同じ学校の中でも学年によっても違っていて、支援級より通常級のほうが過ごしやすいケースもあるし、支援級に移って過ごしやすくなったケースもあります。通常級でしんどそうだから、じゃあ支援級に行ったら楽になるかというと、必ずしもそうではないケースもたくさんあるんです。

なので、今通常級でしんどい理由が、合理的配慮があったとしても変わらないのか。支援級に行ったら変わるのか。その子のつらさと環境のミスマッチが、どちらのほうが少なくて、どちらのほうが調整しやすいかで考えられるといいかなと思います。

かほ
かほ:

支援級に移れば解決、という魔法のクラスではないんですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。支援級には、通常級より子どもの人数が少なくて先生の人数が多い、といった支援級ならではのメリットはもちろんあります。

でも、支援級のほうが大変な状況にあるお子さんが多いこともあるので、教室の雰囲気としては、むしろ通常級のほうが静かで落ち着いていて学びやすいというお子さんもいます。

それに、支援級ではみんながそれぞれバラバラの課題をやっていることもあります。そのほうが学びやすい子もいれば、逆に周りが気になってしまって、「みんな同じことをやっている」ほうがわかりやすいタイプの子もいます。

だから、今の課題と、その子がどうなれたらいいかを考えて、どちらの環境なら合うのかな、というところで相談されるといいなと思います。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、学校との関わり方に悩んでいる親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

どこまで家庭で頑張るか、どこから相談するか。そういうことさえも、ご家族だけで決めなくていいですし、むしろ一人で決めないほうがいいことかなと思います。

親御さん自身が相談している姿を見せることで、お子さんも「相談してもいいんだ」と感じられるきっかけになることもあります。お子さんに「ちょっと話してごらん」と言うだけではなくて、ぜひ親御さんが相談をする姿勢も見せてあげてほしいなと思います。

それから、家でもっと頑張って、どうにもならなくなってから相談するのではなく、今困っている、という状態で相談していただくほうが、つらい時間が減ります。保護者の方がお一人で抱え込まずに、支援者と一緒に対応を考えていってもらいたいなと思っています。

笑顔で話す山岸佳織先生
「一人で決めなくていいんです」

合理的配慮は、特別扱いをお願いすることではなく、お子さんが「みんなと同じように学べる」ための工夫を、学校と一緒に探していくことです。何をお願いすればいいのか迷ったら、まずは「この子は今、どこで何に困っているのか」を整理するところから始めてみてください。

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ゴールド

山岸 佳織先生

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Q

「感覚過敏のある小3の息子。教室の音と給食が苦手で行けません。合理的配慮はどこまで求められますか」

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山岸佳織先生 の回答

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