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不登校ミーツ

WISCの指標をやさしく解説|言語理解・ワーキングメモリー・処理速度が低い子の特徴と学校での困りごと【発達特性のある子】

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • WISCの指標は、困りごとの「原因の手がかり」になる。同じ忘れ物でも、言語理解が低い子は「何を言われたかわからない」、ワーキングメモリーが低い子は「一度に覚えきれない・優先順位がつけにくい」と、起きていることが違う場合がある(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 言語理解は、言葉を理解し、言葉で考える力。低くても「コミュニケーションが苦手」とは限らない。
  • 視空間・流動性推理(WISC-IVでは知覚推理)は、目で見た情報を頭の中で処理して使う力。高い子は、文章より図で見せたほうが早くわかることが多い。
  • ワーキングメモリーは、目や耳から入った情報を頭にためて作業する力。処理速度は、目で見た情報を素早く正確に処理する力。どちらも低いと、本人は頑張っているのに「怠けている」「遅い」と誤解されやすい。

動画で見たい方はこちら(18:38)

発達検査(WISC)の結果に並ぶ、「言語理解」「ワーキングメモリー」「処理速度」といった言葉。

なんとなく意味はわかる気がしても、「ワーキングメモリーが低い」と言われて、それが毎日の忘れ物や、学校でのしんどさとどうつながっているのかまでは、なかなかピンときません。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの検査結果を読み解くために、WISCの指標がそれぞれどんな力を表していて、低いとどんな困りごとにつながりやすいのかを伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

WISCの指標とは? 何がわかるの?

WISC(ウィスク)は、子ども向けの代表的な知能検査です。結果には全体のIQ(全検査IQ)のほかに、いくつかの力に分けた「指標」ごとの数値が出てきます。版によって指標の数と名前が少し違います。

指標(WISC-Vの名前)WISC-IVでは山岸先生の説明をひとことで
言語理解言語理解言葉を理解する力、言葉で考える力
視空間/流動性推理知覚推理(1つの指標)目で見た情報を頭の中で処理して、使う力
ワーキングメモリーワーキングメモリー入ってきた情報を頭にためておいて、それを使って作業する力
処理速度処理速度目で見た情報を素早く理解して、正確に作業する力

WISC-IVは4つ、WISC-Vは視覚に関わる指標が「視空間」と「流動性推理」の2つに分かれて5つの主要な指標になっています。この記事では、対談の流れに合わせて「言語理解」「視空間・流動性推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つに分けて紹介します。

指標の数値を見るときに大事なのは、数値をお子さんの実際の困りごとと照らし合わせることです。山岸先生は「忘れ物」を例に挙げてくれました。

かほ
かほ:

検査で全体の傾向をつかんだあと、何と照らし合わせて見ていけばいいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

お子さんの困難さが、どういう結果に現れているのかを見てみるといいと思います。

たとえば、忘れ物が続くお子さんが心理検査を受けたとき、言語理解が低いのか、ワーキングメモリーが低いのかによって、忘れ物の原因が違っているケースがあります。

言語理解が低いお子さんの場合は、何を言われているのかがわからなくて、忘れ物につながっているのかもしれない。ワーキングメモリーが低いお子さんだと、一度に言われたことが多すぎて処理できないうちに忘れてしまうとか、優先順位をつけるのが苦手で忘れ物をしてしまうとか。

ひと口に「忘れ物をしてしまう」といっても、その子の中で何が起こっているのかを考えるひとつのヒントになると思います。

数値の見方の基本(数値が低い=悪いではないこと、全体のIQより凸凹を見ること)は、発達検査(WISC)の結果の見方の記事で詳しく紹介しています。ここからは、指標をひとつずつ見ていきます。

言語理解とは? 低いとどんな困りごとが出やすい?

言語理解は、言葉を理解する力と、言葉で考える力です。低いと、「言われたことがわからない」「わかっていても言葉にできない」という困りごとが出やすくなります。

かほ
かほ:

まず言語理解。これは簡単に言うと、どういう力なんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

読んで字のごとく、言葉を理解する力と、言葉で考える力です。

たとえば、知っている言葉の数や、ものの定義を説明したり理解したりする力、と言い換えられるかもしれません。先生の話を聞いて理解する力や、友達と言葉でやりとりする力の土台になるのが、言語理解の指標です。

かほ
かほ:

言語理解が得意な子とそうでない子だと、学校生活ではどんな違いが出ますか。

山岸先生
山岸先生:

得意なお子さんは、言葉で理解できるので、ちゃんと説明されればちゃんと理解できる子が多いです。自分の気持ちを言葉にするのも得意な子が多いので、「どうしてこうなったの?」「理由を説明して」と言われたときに、言葉で説明しやすいと思います。

逆に言語理解が低いお子さんだと、まず何を言われているのかが理解できない。先生が長く説明したときに、どこがポイントなのかがわからない。「どうしてこうなったのか話してごらん」と言われたときに、覚えてはいるけど、どう言葉にしたら伝わるのかがわからない。

言葉で相手の言いたいことを理解したり、自分の言いたいことを伝えたりするのが大変、という特徴が出やすいと思います。

話す山岸佳織先生
指標をひとつずつ説明してくれた山岸先生

言語理解が低いと、コミュニケーションが苦手ということ?

必ずしもそうとは言えない、と山岸先生は言います。

山岸先生
山岸先生:

そういう側面があるケースもありますが、必ずしもそうとは言えないですね。

コミュニケーションは言葉のやりとりだけではなくて、アイコンタクトやうなずき、身振り手振りといった、言葉を使わないコミュニケーションも人はたくさんしています。言語理解が低い子が、そういうコミュニケーションをキャッチできないかというと、全然そんなことはありません。

たとえば、一番大事なところ、二番目、三番目と順番をつけて伝えてもらうと理解しやすい子もいますし、自分の気持ちをうまく言葉にはできないけれど、相手の気持ちはちゃんとわかる、という子もいます。言語理解の指標の高さと、コミュニケーションの得意さは、必ずしもイコールにはならないんです。

言語理解が苦手なお子さんに気持ちを聞くときは、「なんで?」と聞くより、選択肢を出して聞くほうが答えやすい、とも山岸先生は話していました。

山岸先生
山岸先生:

特に言語理解の苦手なお子さんだと、自分の中で「嫌だ」というイメージがはっきりあっても、「なんで?」と聞かれると、うまく言えなくなってしまうことがあります。

大人のほうで「これか、これか、これか、今挙げた以外か。どんなところが一番嫌なの?」という形で、お子さんが答えやすいように示してあげるといいと思います。

視空間・流動性推理(知覚推理)とは? どんな力?

視空間・流動性推理(WISC-IVでは知覚推理)は、ざっくり言うと目で見た情報を頭の中で処理して、使う力です。高い子は、文章で説明されるより図で見たほうが早くわかることが多い、と山岸先生は言います。

かほ
かほ:

続いて、視空間や知覚推理、流動性推理。検査によって名前が違いますよね。このあたりはどういう力を見ているんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

検査によって名前が違うのは、見ている力も少しずつ違うからなんですが、すごく大ざっぱに言うと、目で見た情報を頭の中で処理していく力です。目で見たものを頭の中で処理して、それをさらに使う力も含まれます。

初めて見る問題の解き方を考える力や、日常生活の中でパターンを見つける力にも関わってきます。

かほ
かほ:

これが得意な子とそうでない子だと、どんな差が出ますか。

山岸先生
山岸先生:

たとえば、言語理解よりも視空間や流動性推理が高いタイプのお子さんは、言葉でつらつら説明されるよりも、図を見せたほうが早くわかることが多いです。

歴史の授業なんかだと、言語理解が高いタイプの子は教科書をずらずらと読んでいっても理解できる。でも、言語理解が低くて視空間や流動性推理が高いタイプの子は、図や表で勉強したほうが覚えやすい、というケースがたくさんあります。

逆に苦手なお子さんの場合は、図形を捉えるのに時間がかかったり、距離の感覚をつかむのに時間がかかったり、お手本を見ながら作業することにとても時間がかかったり。それから、初めて見る問題を、どこから手をつけていいのかわからない。実は私も高校の数学はずっとそうで、「これは何をどうすればいいの?」となってしまう。それが、ここが低い場合ですね。

話す山岸佳織先生
自身の高校時代の数学の話も交えて説明する山岸先生

ワーキングメモリーとは? 低い子の学校での困りごと

ワーキングメモリーは、目や耳から入ってきた情報を頭の中にいったんためておいて、それを使って作業する力です。低いと、指示を覚えておけない、優先順位がつけにくい、といった困りごとが出やすくなります。

かほ
かほ:

3つ目はワーキングメモリー。最近よく聞く言葉ですが、実際にはどういうものなんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

WISC-IVでは、耳から入った情報を頭の中にためておく力を測っていたんですが、WISC-Vからは、目で見た情報と耳から入ってきた情報の両方を測定できるようになりました。

目からの情報と耳からの情報を、頭の中でいったんためておいて、それを使って作業をする力、ということになります。

かほ
かほ:

ここが低いと、学校や家ではどんな困りごとが起きますか。

山岸先生
山岸先生:

まず、頭の中に情報をインプットしてためておくことが難しくなります。

たとえば先生が「教科書を出して、ノートを出して、これを出して、それから教科書の何ページを開いて、何行目から読んで」と指示すると、ためておけないので、どれかを出し忘れたり、何ページだったかを聞き逃したりする。まずシンプルに、覚えておけないということが出やすくなります。

それから、いくつかの情報を言われたときに、どうやったら効率よく動けるかを考えるのが難しくなります。たとえば料理だと、材料を切ってから鍋に入れるのか、先にこっちを準備しておいたほうが効率がいいのか、と考えながら手早く進めますよね。そういうことが難しくなる。優先順位がつけにくくなるということですね。

かほ
かほ:

周りからは「話を聞いていない」「集中力がない」と見えてしまいがちだと思うんですが、本人はつらいですよね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。たとえば学校で「板書して」と言われているときに、今は片づけをしなきゃいけないのか、板書をしなきゃいけないのかがわからなくなって、一生懸命片づけをしているのに「なんであいつ板書してないんだよ」と言われてしまう。

本人は怠けていないのに、怠けているように見えてしまう。「頭を使いなさい」と怒られたりもして、本人はかなりつらいと思います。

話す公認心理師の山岸佳織先生
「本人は怠けていないのに、怠けているように見えてしまう」

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ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

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処理速度とは? 低いと「遅い」と言われ続けてしまう

処理速度は、目で見た情報を素早く理解して、正確に作業する力です。低いと、本人は急いでいるのに終わらず、頑張りが否定されやすくなります。

かほ
かほ:

最後に4つ目、処理速度。これはどういう力ですか。

山岸先生
山岸先生:

これも検査によって、測定の仕方や測定している内容が少し変わってくるんですが、ざっくり言うと、目で見た情報を素早く、それがどんなものなのかを理解して、正確に作業する力です。

学校だと、素早く板書をする、問題を時間内に解く、テストで答えを書く、といったところで必要になる力ですね。

かほ
かほ:

ここが低いと、これもまたつらいですよね。本人は頑張っているのに追いつかないし、「遅い」と言われ続けるわけですよね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。いつも一生懸命やっているし、本人としては急いでいるつもりなのに、なぜか終わらない。「なんでまだ終わってないの」「ぼーっとしてたでしょ」と言われたりする。本人の頑張りが否定されやすいところでもあると思います。

それから、テストで全部わかっているのに、時間切れで点数が伸びないというのもよくある話です。

かほ
かほ:

最後の一歩に、どうしても手が届かない……そんな困りごとになりそうですね。

山岸先生
山岸先生:

そうですね。受験期のお子さんの親御さんから、「処理速度が低いと出ていて、入試の過去問がどうしても時間内に終わらない。どうしよう」というような相談を受けることもあります。

指標の結果を、学校への相談や家庭での工夫にどうつなげるかは、発達検査の結果を学校にどう伝える?の記事で紹介しています。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、検査結果の数字を前にしている親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

心理検査の数字は、良い・悪いを見るものではありません。あくまでも、その子の中での得意と苦手の凸凹の形を知るためのものと捉えていただきたいなと思います。

笑顔で話す山岸佳織先生
笑顔で話す山岸先生

「ワーキングメモリーが低い」「処理速度が低い」という言葉は、お子さんの欠点を示すラベルではありません。毎日の忘れ物や「遅い」と言われてきたことの裏で、本人がどんなふうに頑張ってきたのかを知る手がかりです。わが子の結果をどう読めばいいか迷ったら、一人で抱えずに専門家に相談してみてください。

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ゴールド

山岸 佳織先生

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