
発達検査(WISC)の結果の見方|数値が低い=悪い? 凸凹の意味を公認心理師が解説【発達特性のある子の不登校】
公開 不登校ミーツ編集部
この記事の要点
- 発達検査の結果は、細かい数字から見るより、まず「何のために受けたか」に対して心理師がどう解釈しているか(得意・苦手・おすすめの支援)を読むのがよい(公認心理師・山岸佳織先生)。
- WISCの数値は、同じ年齢の子の平均を100としたときのズレを表すもの。数値が低い=悪い・できない、数値が高い=できる、ということではない。
- 全体のIQは指標の平均なので、凸凹が大きいほど全体の数字の意味は薄くなる。凸凹そのものより、凸凹が実生活で何を生んでいるかを見ることが大切。
- 発達特性のある子の不登校では、能力がないから行けないのではなく、得意・不得意の凸凹と学校で求められることのミスマッチで疲れてしまうことが多い。検査結果は理由を言い当てる地図ではなく、本人の話を聞くためのヒントのひとつ。
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発達検査を受けたあとに渡された、結果の紙。小さな字で、知らない言葉と数字がずらっと並んでいる。
「この数字、低いってこと?」「うちの子、何ができないの?」——読めば読むほど不安になってしまった、という親御さんは少なくありません。
発達検査(WISCなど)の結果は、どこを、どう見ればいいのでしょうか。
今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達特性のあるお子さんの不登校をテーマに、発達検査の結果の見方を伺いました。

発達検査の結果は、まずどこを見ればいい?
山岸先生の答えは、「細かい数字から見るのではなく、検査を受けた目的に対して、心理師がどう解釈しているかを読む」でした。
発達検査の結果の紙には、いろんな数字や指標がずらっと並んでいますよね。親御さんは、まずどこを見たらいいんでしょうか。
小さい字でいろいろ書き出されているので、何を見たらいいのかわからないですよね。
最初から中身を全部細かく見ていくよりも、まずは全体です。検査を受ける前に、何のためにその検査を受けたいのか、どんなことがわかるといいかを心理師とお話しされたと思うので、それがどう書かれているかから見ていかれるといいと思います。
心理検査の報告書には、その子にどんな特徴があって、何が得意で、何が苦手か。そしてどうやったら得意を活かせるのか、どうやったら苦手を得意でカバーできるのか、といったことが書いてあります。そこを意識して読んでいただくといいかなと思います。
数字が並んでいると、つい一つひとつの項目の点数を知りたくなります。でも山岸先生によると、細かい項目ごとの結果は、そもそも親に伝えないことになっている検査が多いそうです。
心理検査には倫理として、「この問題は通過しました」「これは通りませんでした」といったことを親御さんに言ってはいけないというものが多いんです。
問題が外に漏れるのを防ぐためでもありますし、誤解を防ぐためでもあります。たとえば「迷路の課題ができませんでした」と聞くと、「家では迷路をやっているのに、なんでできないんだろう」と思ってしまいますよね。
だから、結果として出てくる数字は、細かい問題の結果をまとめた平均のようなものです。数字を見るよりも、検査をとった心理師の「解釈」のところをしっかり読み込んでもらうほうがいいと思います。
発達検査の数値が低いのは「悪い」ということ?
「数値が低い=悪い」ではありません。山岸先生は、学校のテストにたとえて説明してくれました。
とはいえ、数字が低く出ていると、成績表のようにショックを受けてしまう親御さんもいらっしゃると思います。数値が低いイコール悪い、というわけではないんですよね。
全然違いますね。
発達検査は、たとえばWISCだと、同じ年齢のお子さんの平均を100としたときに、その子がどのくらい平均とズレているかを出しているものです。
たとえば、ある子のテストの平均点が50点だったとします。でも中身を見ると、算数と社会は100点、国語と英語は0点。平均すると50点ですが、その子を「50点の子」と評価していいかというと、全然そんなことはありません。むしろ、算数と社会はちゃんと100点がとれる子。だけど国語は苦手なんだ、という見方をしていくことが、まずとても大切です。

さらに、「低い点数=その力がない」とも言い切れない、と山岸先生は続けます。
国語が0点だったとして、じゃあ国語がダメなのかというと、よくよく見ると文章の意味はちゃんとわかっているのに、漢字の書き方のミスだけで全部減点されていた、ということもあります。原稿用紙の使い方がわかっていなくて、どんどん減点されていた、ということもあるかもしれません。
その子が本当にわかっているかどうかと、結果に出てくる点数は、全然違うことがあるんです。
検査の点数も、あくまでこの問題形式で、そのときの心理師の言い方で問われたときに、模範回答に合っていたかどうかというだけです。客観的なひとつの指標ではありますが、点数が低いからできない、逆に点数が高いからできる、ということでもないと思っていただけるといいと思います。
成績表のように「良い・悪い」で見るものではないんですね。
そうですね。成績表は、学校で求められるところに到達したかどうか。心理検査は、その検査の場で模範回答が出たかどうか。
どちらも、お子さんを知るための材料としては、ほんの一部分でしかありません。お子さんがどういう子なのかを知るヒントにはなりますが、それがお子さんそのものを表しているとまでは言えないものだと思います。
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全体のIQより「凸凹」を見たほうがいいのはなぜ?
検査結果には、全体のIQ(WISCでは「全検査IQ」)と、いくつかの指標ごとの数値が出てきます。山岸先生は、全体のIQよりも、指標ごとの凸凹(でこぼこ)のパターンを見るほうが役に立つことが多いと話します。
検査結果を見るときは、全体のIQだけでなく、それぞれの指標の凸凹を見ることも大事なんでしょうか。
どちらかというと、全体の数値よりも、凸凹のパターンを見ていくほうが有効なことが多いと思います。
全体のIQというのは、凸凹も含めた4つなり5つなりの指標の平均点のようなものです。なので、凸凹が大きければ大きいほど、全体のIQという数字の意味はあまりなくなってしまう。むしろ、一つひとつにどんな特徴があったのかを見ていくほうが大事だと思います。
では、凸凹が大きいと、それだけで「問題がある」ということになるのでしょうか。
逆に、凸凹が大きすぎると、それだけで問題があるとか、困りごとがすごく大きいということになるんでしょうか。
昔はそう言われた時期もあったんですが、今の解釈としては、そうではないというのが一般的です。
むしろ、2人に1人は意味のある凸凹を持っていると言われるくらいなんです。凸凹が大きいから困難がある、凸凹が大きいから支援が必要、というよりも、その凸凹が実生活でどんなことを生んでいるのかを見るほうがとても大切です。
検査結果は、お子さんの実際の困りごとと照らし合わせて見ると、ぐっと意味を持ってきます。たとえば同じ「忘れ物が多い」でも、どの指標が低いかによって、その子の中で起きていることが違う場合がある、と山岸先生は言います(具体例は指標の解説記事で紹介しています)。
凸凹のある子は、どんなしんどさを抱えている?
得意なことがはっきりある子ほど、「できるのに、なぜこれだけできないんだろう」というギャップに苦しむことがあります。周りからも「できる子」に見えて、苦手が見過ごされやすくなります。
得意なところと苦手なところがあるお子さんは、本人としてはどんなしんどさを抱えることになるんでしょうか。
できることがたくさんあると自覚している分、どうしてここはできないんだろう、というギャップで苦しむお子さんは、たくさん見てきました。
それから、たとえば言語理解が高いお子さんだと、言葉でお話しするのがすごく上手だったりするので、「できる子」に見えてしまうんです。実際、だいたいのことはできる子なんですけど、だいたいできるけど苦手がある。その苦手が「サボり」に見えたり、「できる子なんだから大丈夫だよ」と言われたりして、できないところが隠されてしまう(マスキングされてしまう)というしんどさもたくさんあると思います。
できることはすごく褒められるのに、少し苦手なところは「サボっている」と思われてしまう。つらいですよね。

つらいですよね。本人は「どうしてこれだけできないんだろう」と苦しむかもしれないし、周りは、ひとつ「できる」があると、そこに引っ張られて、本人を全体として正しく見ることがしにくくなってしまう。それがひとつのリスクかなと思います。
不登校との関係についても、山岸先生ははっきり話します。
特に不登校との関係でいうと、能力がないから学校に行けない、ということではありません。本人の得意・不得意の凸凹と、学校で求められることのミスマッチがすごく大きくなって、疲れてしまうケースがとても多いと思います。
得意なことは本人も好きだし、どんどん伸びていくと思います。でも苦手なことは、苦手だから苦手と出ているので、「じゃあ頑張れ」としても苦手は苦手なんです。
だから「苦手だからもっとやれ」ではなく、その苦手の根っこは何なのかを考えて、環境や方法、教え方や教材も含めて調整していく。そうやって、本人が「これならできる」を増やしていくのが大事だと思います。
発達特性と学校という環境のミスマッチについては、理由がわからない不登校と発達特性の記事でも詳しく伺っています。
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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
親子の「今」を大切に、一緒に考えます
発達検査の結果で、不登校の理由はわかる?
検査結果だけで「学校の何がつらかったのか」を言い当てることはできません。山岸先生は、検査結果を「全部を見通す地図」ではなく、「理由を探すためのヒントのひとつ」として使ってほしいと話します。
発達検査の結果から、不登校の背景、学校の何がつらかったのかは、どんなふうに見えてくるんでしょうか。
全部を見通す地図になるというより、この子は学校の何がつらかったのかを探す、ヒントのひとつになるくらいの感覚でいたほうがいいと思います。
たとえば、ワーキングメモリーが低いお子さんの場合。もしかしたら、クラス全体の中で指示を聞くのが大変だったのかもしれない。同じワーキングメモリーの低さでも、忘れ物をして怒られたのがつらかったのかもしれない。あるいは、「これとこれとこれやって」と言われたときに、友達から「遅いよ」「違うよ、こっちのほうが効率いいじゃん」と言われたのがつらかったのかもしれない。
ワーキングメモリーの低さから「こんなことが苦手だったのかな」と想像はできます。でも、苦手そのものがつらかったのか、怒られたのがつらかったのか、友達に「できない」と言われたのがショックだったのか。「ワーキングメモリーが低かったから学校がつらかったんだね」とは言えないんです。
すべてを見通せる魔法のアイテムではなくて、あくまでヒントのひとつなんですね。
そうですね。私たちも「こういう大変さがあったのかな」と想像はします。でも実際にお子さんに話を聞いてみると、「できないのは別にいいんだよ。友達にバカだって言われるのが嫌なんだよ」というケースもあります。
逆に、周りはすごく配慮していて「できていないわけじゃないよ」と言ってくれているのに、自分の中でそれが許せなくて嫌になってしまった、という場合もあります。そうなると、かけるべき声もまったく変わってきます。
だから、検査結果はヒントにはするけれど、大人が決めつけるのではなく、お子さんの心の声をしっかり聞いていけるといいと思います。
検査結果を学校や家庭でどう活かすか、お子さん本人にどう伝えるかは、発達検査の結果を学校にどう伝える?の記事で詳しく紹介しています。
不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ
最後に、今まさに検査結果を前にして不安になっている親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。
心理検査の結果って、本当に小さい字で何枚もあって、何を見たらいいのかわからないと思います。専門用語もたくさん出てくるし、しかも100点満点ではない数字がいろいろ出てきて、どうしたらいいのかと途方に暮れることもとても多いと思います。
心理師さんの説明も、詳しいところもあれば、本当に一言二言で終わってしまうところもあるかもしれません。まずは検査をとった心理師さんに、どういう解釈だったのかをお聞きできればいいと思います。
それでも、この結果は今の困りごととどう関係しているのか、この強みはどうしたら活かせるのか——そういうことは、たくさん悩まれると思います。ぜひ相談していただきたいなと思います。

発達検査の結果は、お子さんに「できない」のラベルを貼るためのものではありません。数字の高い・低いに一喜一憂するより、「この子は何が得意で、何に困っていたのか」を知るための手がかりとして、心理師の解釈とお子さんの声を合わせて読んでみてください。
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山岸 佳織先生
公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士
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山岸佳織先生 の回答
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