本文へ移動
不登校ミーツ

発達障害・グレーゾーンの子の不登校、どこまで頑張らせる? 甘やかしとの境目を公認心理師が解説

公開  不登校ミーツ編集部

この記事の要点

  • 発達特性があってもなくても、不登校の子にはまず「安心と安全の回復」が最優先。そのうえで、行きたくない気持ちの裏に特性的な困難さが隠れていないかという目を持つ(公認心理師・山岸佳織先生)。
  • 診断がつかない「グレーゾーン」の子も考え方は同じ。診断名の有無より、その子が学校で何に困っていたのかを詳しく聞いていくことが大切。
  • 「障害があるから人一倍頑張らせないと」という不安は自然なもの。ただ、頑張らせすぎると、社会に出る前に疲れ切ったり「何をやってもダメだ」という挫折感を持ったりするほうが怖い。
  • 目指したいのは、苦手を一人で克服することではなく、得意と苦手のバランスを取り、助けを借りながら自分なりの方法で生きていく力。
  • 「頑張らせるか、甘やかすか」の二択ではなく、どんな環境なら本人が力を発揮できるかを考える。どこまで頑張るかも家族だけで決めなくていい。

動画で見たい方はこちら(17:06)

「発達障害やグレーゾーンがあるなら、人一倍頑張らせないと、将来社会でやっていけないんじゃないか」

そう思う一方で、「無理をさせて、もっと状態が悪くなったらどうしよう」とも思う。学校に行けなくなったわが子を前に、どこまで頑張らせて、どこからは休ませればいいのか、迷っている親御さんは多いのではないでしょうか。

今回は、公認心理師の山岸佳織先生に、発達障害・グレーゾーンなど発達特性のあるお子さんの不登校について、「どこまで頑張らせるか」の考え方を伺いました。

対談する不登校ミーツのかほと公認心理師の山岸佳織先生
左:かほ(不登校ミーツ)/右:山岸佳織先生

発達特性のある子の不登校、まず何を大切にすればいい?

山岸先生の答えは、「発達特性があってもなくても、まずは安心と安全の回復を最優先に」。そのうえで、行きたくない気持ちの裏に、特性的な困難さが隠れているかもしれないという目を持っておくことが大切だと言います。

かほ
かほ:

発達特性のあるお子さんの不登校の対応は、一般的な不登校の対応と比べて、親御さんが意識したほうがいいことはありますか?

山岸先生
山岸先生:

発達特性があろうとなかろうと、不登校の状態のお子さんには、まず安心と安全の回復・確保を最優先にしていただきたいと思います。それはどんなお子さんでも同じです。

そのうえで、発達特性のあるお子さんの場合は、「行きたくない」「行きたいけど行けない」となっている状況の裏に、もしかしたら特性的な困難さが隠れているかもしれない、という目を持っていただけるといいと思います。

山岸先生
山岸先生:

たとえば「友達が嫌だから行けない」というとき、特性のないお子さんなら、その子たちと相性が合わないというシンプルな問題のこともあるかもしれません。

でも発達特性のあるお子さんの場合は、友達が何を言っているのかわからない、友達との距離の取り方がわからない、ということがあって、相手の子が変わっても同じことを繰り返してしまったり、「友達が嫌」と言いながら、相性の合う子は一人も作れなかったりする。そういう、特性としての困難が隠れているケースがあることを知っておいていただくといいと思います。

不登校と発達特性の関係そのものについては、「理由がわからない不登校は発達障害が原因?」で詳しく紹介しています。

診断がつかない「グレーゾーン」の子も、同じ考え方でいい?

はい。山岸先生は「グレーゾーンの子も、診断名より『何に困っているのか』を詳しく聞いていくのが大事」と話します。

かほ
かほ:

いわゆる診断がついていない、グレーゾーンと言われるお子さんの場合も、同じような考え方でいいんでしょうか?

山岸先生
山岸先生:

グレーゾーンと言われるお子さんについて、なぜ診断がつかないのかを考えてみると、診断には「Aのグループで何項目以上、Bのグループで何項目以上当てはまったら、この診断をつけます」という基準があります。

たとえば、Aは3項目必要なうちの1個しか当てはまらないけれど、Bは5項目中5項目すべて当てはまっている。でも基準としては、AもBも3つずつないと診断はつかない。そういう形で、診断がついていないケースもたくさんあるんです。

山岸先生
山岸先生:

なので、このときも「発達障害だからこう」というより、お子さんがそこで何に困っているのかを詳しく、詳しく聞いていくことが大事です。

「友達が嫌」と言っているけれど、もしかしたら、そもそも友達とどう関わっていいかがわかっていないのかもしれない。「友達が無視するんだよ」と言っていても、よく聞くと、その状況なら誰でも話はしないよね、という場面を、その子は「無視された」と受け取ってしまっているのかもしれない。

これは診断があってもなくても、あり得ることです。その子が何がつらかったのか、学校でどんな経験をしたのかを聞いていくのがいいと思います。

話す山岸佳織先生
「診断があってもなくても、何に困っていたのかを聞いていく」

障害があるなら、人一倍頑張らせないと社会でやっていけない?

山岸先生は、その不安は「親として自然な感覚」と受け止めたうえで、「障害があるから頑張らなきゃいけない、とは思っていない」と言います。

かほ
かほ:

障害がある分、人一倍頑張らせないと社会でやっていけないんじゃないかと思う一方で、無理をさせて状態を悪化させるのも心配だ、という声をよく聞きます。こういう場合、どこまで頑張らせていいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

それは、親御さんの感覚としてとても自然なことだと思います。ただでさえ、どんなお子さんでも将来どうなるのかなという不安がある中で、障害のあるお子さんの場合は、見えている道筋が、多数派の太い道とは違うように見えやすい。だから、その気持ち自体はとても自然です。

ただ、障害があるから頑張らなきゃいけないかというと、私はあまりそうは思っていないんです。

山岸先生
山岸先生:

一番大切なのは、苦手なことでも何でも、一人でできるようにすることではなくて、自分の得意と苦手をうまくバランスを取りながら、自分なりの方法で生きていく力を身につけることだと思います。

逆に、頑張らせなきゃとやりすぎてしまうと、社会に出るときには疲れ切ってしまう、ということもあります。それまでに「こんなに頑張ってもできなかった」という挫折感を持って、そこから「自分は何をやってもダメなんだ」と思い、社会に出る意欲自体がなくなってしまう。そのほうが、より怖いことだと思っています。

山岸先生
山岸先生:

できないことがある、それが人よりちょっと多い、という状態だったとしても、そのできないことを頑張るのではなくて、できないときにはどうすればいいか。できることで代わりにするのか、誰かに助けてもらうのか、どうやったら助けてもらえるのか。家中にペンを置いておいて忘れないようにするのか。

そういうところで、自分の機嫌の取り方と、自分の「取扱説明書」を作っていってもらうことが大事だと思います。

かほ
かほ:

頑張る方向性として、苦手を気合いで乗り越えていくのではなく、自己理解を深めて、人に「助けて」と言えるスキルを身につけ、自分に合う環境をしっかり理解して、社会に出ていく。そちらのほうが大事ということですね。

山岸先生
山岸先生:

本当にその通りだと思います。

苦手を「頑張らせる」方向山岸先生がすすめる方向
目標苦手なことも一人でできるようにする得意と苦手のバランスを取り、自分なりの方法で生きていく
できないときもっと練習する・気合いで乗り越える得意なことで補う/人に助けてもらう/道具や環境を工夫する
起こりやすいこと疲れ切る・「何をやってもダメだ」という挫折感自分の「取扱説明書」ができていく

苦手なことは、トレーニングで克服させたほうがいい?

山岸先生によると、「トレーニングしたら苦手が伸びるかというと、そうでもない」。ちょっとした工夫で伸びるところはやってあげつつ、苦手を「困りごと」にしない工夫を一緒に探すほうがいいと言います。

山岸先生
山岸先生:

ご家庭でよく聞くのは、「苦手だから頑張らせなきゃ」「将来困らないようにトレーニングしなきゃ」ということです。でも、トレーニングしたら伸びるかというと、そうでもないんです。

かけっこが苦手な人が、アスリートに走り方を教えてもらったら、ちょっとは速くなるかもしれない。でも、だからといってクラスで一番になれるほど速くなるかというと、そういうわけではないですよね。そういうちょっとした工夫で本人が伸びるところはやってあげたらいいと思いますが、かけっこが苦手な人に「頑張れ、頑張れ」だけでは、本人も周りも続かなくなってしまいます。

むしろ、どうやったらその苦手を「困難」にしないか、という視点を持ってあげるのがいいと思います。

山岸先生
山岸先生:

極端な例ですが、知り合いのお宅で、お子さんが2人ともADHDというおうちがあって、家中のいたるところにペンと付箋のセットが置いてあるんです。本人はショルダーバッグにバインダーを付けていて、思いついたらすぐメモを取ってそこに貼っていく。それで抜け漏れがないようにしているんですね。

私も初めて行ったときは「なんでここにもそこにもペンがあるんだろう」と思いました。でもそのおかげで、思いついた瞬間に忘れないでいられるので、結果的には忘れ物がすごく減った、というお話でした。

身ぶりを交えて話す山岸佳織先生
「どうやったら苦手を困難にしないか、という視点を」
山岸先生
山岸先生:

ただ逆に、それを別のご家庭でお伝えしたら、ペンがありすぎてどこに何があるかわからなくなった、と言われたこともあります。別のお家では「ペンはここ」と全部にラベルが貼ってあるほうがわかりやすかったりする。

何が合うかは、お子さんとご家族によって本当に違います。だからご家庭では、その子がどうしたらできるのか、どうしたらやりやすいのかを一緒に探してあげられるといいと思います。

山岸先生自身も、苦手なことは「どうやってもできるようにならなかったりする」と話します。

山岸先生
山岸先生:

私もいまだに、高校数学はまったくわからないところがいっぱいあって、高校のときは赤点ギリギリでした。でも、そのできないことがあるから大学に行けないかというと、そうでもなかったりもして。

どういう苦手さがあって、それをどう補うかのバランスさえ取れていれば、障害があっても社会で生きていける方はたくさんいらっしゃいます。見える道筋が多数派ではない分、少なく見えるかもしれませんが、そこは不安になりすぎず、たくさん相談していただけるといいなと思います。

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます

ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

親子の「今」を大切に、一緒に考えます

山岸佳織先生のプロフィールと空きを見る

「頑張らせる」か「甘やかす」か、どう判断すればいい?

山岸先生は、「頑張らせるか甘やかすかの二択ではなく、どういう環境なら本人が力を発揮できるのかを考えてほしい」と話します。

山岸先生
山岸先生:

頑張らせるか甘やかすかの二択じゃなくて、環境をどういうふうに調整して、どういう環境であれば本人が力を発揮できるのかな、ということを考えていただきたいと思います。

特に、学校に行けなくなったばかりの時期は、「学校に行っていない分、家で頑張らせる」ことには注意が必要だと山岸先生は言います。

山岸先生
山岸先生:

まず、学校に行っていない分、家で頑張りなさい、とさせすぎないことが一番大事だと思います。みんなが学校に行っている間は家でこれだけ努力しなさい、ドリルを全部終わらせなさい、とか。ある程度の制限は必要かもしれないですけど、そうやって頑張らせようとしすぎないことです。

学校に行くのがつらくなった時期、行けなくなった時期というのは、本人が思っている以上に、心と体のエネルギーがとても減っている状態だったりします。まずは生活リズムを整えて、安心と安全の感覚を確保するところからスタートするのがいいと思います。

山岸先生
山岸先生:

アスリートを目指していた子がけがをしてしまったときに、アスリートになるために、けがをしているのに頑張ってトレーニングするかというと、まずそのけがを治すところから始めますよね。それと同じです。将来どうしようと焦ったり不安になったりすると思いますが、まずは体と心を整えるのが大事だと思います。

かほ
かほ:

学校に行く・行かない、勉強する・しない。こういうところについて、本人の意思をどこまで尊重して、親はどこから働きかければいいんでしょうか。

山岸先生
山岸先生:

本当に迷われるところだと思いますし、迷うのは正解がないからでもあります。ただ、本人の意思を尊重することと、親御さんが何もしないことは、全然違うことだと思います。

まずは本人と、今何がしんどいのか、どうなったら学校に行きたいと思えるのか、行きたいとまでは思えなくても、どうやったら苦痛ではないのかを話せる関係になることが一番。そのうえで、「学校に配慮を求めることもできるけど、どうする?」「先生と話してみることもできるけど、どうする?」と、本人が選べる選択肢を親御さんが用意して、聞いてあげるのがとても大事だと思います。

山岸先生
山岸先生:

どこまで家庭で頑張るかを、ご家族だけで決める必要もないです。どこまで頑張るか、どこから相談するか、そういうことさえも、一人で決めなくていい。むしろ、一人で決めないほうがいいことだと思います。

家での過ごし方や、学校に相談できる配慮については、「不登校の家での過ごし方」「合理的配慮とは?」でも詳しく紹介しています。

不登校の子の親御さんへ、山岸先生からのメッセージ

最後に、発達特性のあるお子さんを支えている親御さんへ、山岸先生にメッセージをいただきました。

山岸先生
山岸先生:

お父様、お母様、ご家族の皆様、本当に毎日大変な中、お疲れさまです。

お伝えしたいのは、学校に行けていない時期は、何も成長していないということではない、ということです。学校に行けない日が続くと、ご家族もご本人も「このままでいいんだろうか」「自分だけ置いてけぼりになってしまった」と、寂しさや焦り、挫折感など、いろんな気持ちを味わわれると思います。

でも、学校に行っていない時期にも、お子さんはご本人なりに、いろんなことを考えたり、将来どう生きればいいんだろうと考えたりしています。その前の段階として、自分の心と体のエネルギーを回復させようとしている時期でもあります。

山岸先生
山岸先生:

特に発達特性のあるお子さんは、脳の使い方そのものが、定型発達の人とは少し違います。だから、違う仕組みのものを、みんなと同じ結果を出すことに合わせるのではなくて、彼らの頭の使い方に合わせた、彼らの生き方を見つけていくことを大切にしてほしいと思います。

今すぐ答えを出そうと焦ってしまう気持ちは当然だと思いますが、焦らなくて大丈夫です。お子さんとご家族にとって、どう生活するのが負担がないのか、これから先につながるのかを、一緒に考えていきたいと思っています。

笑顔で話す山岸佳織先生
「焦らなくて大丈夫です」

「どこまで頑張らせるか」に、決まった正解はありません。だからこそ、苦手を気合いで乗り越えさせるより、お子さんが「どうしたらできるか」「誰に助けてもらえるか」を一緒に探していく。その積み重ねが、お子さんが自分なりの方法で生きていく力になっていきます。迷ったときは、一人で決めずに相談してみてください。

この記事でお話を伺った山岸先生には、不登校ミーツで直接相談できます。

この記事でお話を伺った先生に、
直接相談できます

ゴールド

山岸 佳織先生

公認心理師・精神保健福祉士・臨床発達心理士

親子の「今」を大切に、一緒に考えます

山岸佳織先生のプロフィールと空きを見る

不登校の悩み、
専門家に相談してみませんか?

みんなの相談

•••こんな相談に回答しています

Q

「不登校の対応をめぐって夫と意見が合いません。夫婦で方針を揃えるべきでしょうか」

ゴールド

山岸佳織先生 の回答

ご相談ありがとうございます。 息子さんの不登校そのものに加えて、ご夫婦の考え方がぶつかる状況は、本当にお疲れになると思い…

不登校ミーツのほかのカウンセラーを見る →

あわせて読みたい