娘さんが不登校になる前は、勉強や陸上、書道などに意欲的に取り組んでいたのですね。以前の頑張る姿を知っているからこそ、今ゲーム中心の生活が続いていることに、「このままで大丈夫なのだろうか」「何かしてあげなければ」と心配やもどかしさを感じていらっしゃるのだと思います。
以前はできていたことが難しくなり、ゲームをしている時間が長くなると、保護者の方から見ると、娘さんが立ち止まってしまったように感じられるかもしれません。娘さん自身も、以前のように動けないことや、何をしたらよいかわからないことに戸惑っている可能性があります。ご家族が心配されるのは、それだけ娘さんのことを大切に思い、これまでの頑張りをよく見てこられたからこそだと思います。
一方で、最近は自分からアプリをアンインストールしようとしたり、書道を再開したり、ウォーキングや家族との外出を楽しめたりしているとのこと。こうした様子は、娘さんの中に「少し変えてみたい」「何かやってみたい」という気持ちが生まれている可能性を感じさせる、大切な変化だと思います。大きな変化には見えなくても、今の娘さんにとっては、相応のエネルギーを使っていることも考えられます。
① 今の変化を急がず、大切にする
不登校になってから、以前できていたことが難しくなった背景には、心身のエネルギーがまだ十分に戻っていないことも考えられます。学校に行くことだけでなく、勉強や部活動、人との関わり、習い事などにも、思っている以上の力を使う場合があります。今は、以前と同じように頑張ることよりも、安心して過ごしながら少しずつ力を取り戻している時期なのかもしれません。
そのため、書道や外出ができたときに、「またできたね」「次は塾にも行けそうだね」と先の目標につなげるよりも、
「久しぶりに書道をやってみて、どうだった?」
「ウォーキングしてみて、少し気分は変わった?」
と、本人の感覚を聞いてみるのもよいと思います。
活動を増やすことを急がず、「やってみたら少し心地よかった」「家族と一緒なら外に出られた」という経験として積み重ねていけるとよいでしょう。できる日とできない日があっても、必ずしも後戻りとは限りません。心身の状態によって、活動が増えたり減ったりすることもあります。
② ゲーム以外の活動を、親が急いで決めなくてもよい
娘さんが「暇になっちゃう」「やることがない」と話したとき、保護者の方は「それなら塾やフリースクールに行ってみたら」と思われるかもしれません。それは、娘さんに少しでも前に進んでほしい、孤立してほしくないという思いから出てくる、自然な反応だと思います。
ただ、今の娘さんにとっては、ゲームをやめた後に何をしたらよいのか思いつかないほど、心身の余力が少なくなっている可能性もあります。本人が「何かしたいけれど、わからない」と話したときには、
「今までゲームをしていたから、急に時間ができると何をしたらいいか迷うよね」
「何かやってみたいことが見つかったら、一緒に考えようね」
と受け止めるだけでも、十分な支えになることがあります。
本人が相談してきたときには、書道、散歩、好きなことに関する活動など、負担の少ない選択肢を一緒に考えてみましょう。塾やフリースクールも選択肢の一つですが、見学だけ、資料を見るだけ、短時間だけ参加するなど、段階を小さくする方法もあります。今すぐ通うことを決める必要はありません。
③ 睡眠と服薬については、具体的な記録を持って医師に相談する
特に気になっているのは、睡眠薬を飲み始めてからも、平均10〜16時間ほど眠っているという点です。長時間眠ることだけで、回復している、あるいは状態が悪化していると判断することは難しいと思います。ただ、薬の影響、睡眠リズムの乱れ、心身の疲労、気分の落ち込みなどが関係している可能性も考えられるため、一度、処方している医師に具体的に相談していただきたいと思います。
受診の際には、次のような内容をメモして持参すると、医師が状態を把握するうえで役立つかもしれません。
* 薬を飲む時間と薬の名前、量
* 布団に入る時間、眠りにつくまでの時間
* 実際に眠っている時間
* 起床時間と、起きた後に自分で動けるかどうか
* 日中の眠気、だるさ、ぼんやりする感じ
* 食事や水分が取れているか
* 書道や外出など、できた活動
* 気分の落ち込み、不安、イライラの程度
* 「消えたい」「いなくなりたい」などの発言の有無
受診時には、保護者の方から、
「薬を飲み始めてからも10〜16時間眠る日があります」
「起きている時間もだるそうで、日中の活動が少ないように見えます」
「書道や外出はできる日がありますが、活動量に波があります」
など、できるだけ具体的に伝えてください。娘さんが診察室でうまく説明できない場合は、保護者の方がメモを渡したり、診察前に医療機関へ電話して情報を伝えたりする方法もあります。
薬については、眠気が強いからといって、自己判断で量を減らしたり、中止したりすることは避けてください。薬の変更や中止が必要かどうかは、処方した医師に相談して決めることが大切です。次回の予約が先であっても、日中の強い眠気や生活への影響が気になる場合は、医療機関に電話して、早めに相談した方がよいか確認してみてください。
強いだるさが続く、日中ほとんど活動できない、食事や水分が十分に取れない、急に様子が変わった、気分の落ち込みや不安が強いといった場合は、次回受診を待たずに医療機関へ連絡することも検討してください。
また、「消えたい」「いなくなりたい」「死にたい」などの発言がある、自分を傷つける行動がある、具体的な方法を考えている様子がある場合は、緊急性が高い可能性があります。本人を一人にせず、処方医や精神科・心療内科、救急医療機関、地域の相談窓口にすぐ連絡してください。危険が差し迫っている場合は、ためらわずに119番などの緊急対応を利用してください。
娘さんが以前のように戻ってほしいと思うのは、とても自然なことです。以前の頑張りを知っているからこそ、今の姿を見て不安になり、「何かできることはないか」と考えてしまうのだと思います。
ただ、今は以前の状態に急いで戻すことよりも、娘さんが今の体調に合った過ごし方を見つけ、安心できる時間を少しずつ増やしていくことを優先していただければと思います。
書道やウォーキング、家族との外出は、ゲーム以外の時間が少しずつ戻ってきている可能性を示す出来事かもしれません。活動が増えたり減ったりしながらでも、本人の「少しやってみようかな」という気持ちを尊重し、必要なときに支える姿勢が大切です。
保護者の方が一人で抱え込まず、睡眠や服薬については医師に、学校生活や居場所についてはスクールカウンセラーや教育支援センターなどに相談しながら、娘さんを支えていけるとよいと思います。今すぐ大きく変わらなくても、娘さんの小さな変化を一緒に見つけ、必要に応じて医療や周囲の支援につないでいくことが、回復への一歩につながるかもしれません。